のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

ハルさん/藤野恵美

2008年10月11日 10時11分24秒 | 読書歴
84.ハルさん/藤野恵美
■ストーリ
 「瑠璃子さん・・。今日はね、ふうちゃんの結婚式なんだよ。
  まさか、この僕が「花嫁の父」になるなんて・・・・。」
 ふうちゃんの結婚式の日、お父さんのハルさんは思い出す。娘の成長を
 柔らかく彩った五つの謎を。幼稚園児のふうちゃんが遭遇した卵焼き
 消失事件、小学生のふうちゃんが起こした夏休みの大騒動。
 心底困り果てたハルさんのためにいつも謎を解き明かしてくれるのは
 天国にいる奥さんの瑠璃子さんだった。頼りない人形作家の父と
 日々成長する娘の姿を優しく綴った連作短編集。

■感想 ☆☆☆☆
 「ミステリ・フロンティア」シリーズの1冊。
 カテゴリとしては「日常の謎」系の推理小説。なのだが、推理小説として
 ではなく、父親と子供の成長小説として楽しめた。
 浮世離れした父親が手探りで子供を育てていく様子と、そんな父親を
 反面教師としてどんどんしっかり者として成長していく娘。お互いが
 お互いを思いやりあい、寄り添いあって生きるふたりの姿は微笑ましく
 暖かい。そうは言ってもオトコ親と娘の関係は危うげで、思春期を
 迎えた娘は少しずつ父親を疎ましく思い始めたり、距離を置き始めたり
 し始める。そんな娘の姿を寂しげに見守る父親の姿が切なく描かれている。

 作者は児童小説出身だそうで、さすがふうちゃんの姿は生き生きと
 描かれている。「親」業は大変だと思うけれど、それでも楽しみ、
 喜びは計り知れないんだろうな、と素直に思える作品。
 表紙のイラストがとてもかわいらしいので、文庫化されても
 ぜひこのイラストを使ってほしいな。