のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

きつねのはなし/森見登美彦

2009年10月19日 22時40分22秒 | 読書歴
92.きつねのはなし/森見登美彦
■ストーリ
 京の骨董店を舞台に現代の「百物語」の幕が開く。
 細長く薄気味悪い座敷に棲む狐面の男。闇と夜の狭間のような
 仄暗い空間で囁かれた奇妙な取引。私が差し出したものは、
 そして失ったものは、あれは何だったのか。
 さらに次々起こる怪異の結末は。妖しくも美しい幻燈に彩られた奇譚集。

■感想 ☆☆*
 「夜は短し 恋せよ乙女」ですっかり森見さんの虜となってしまい
 集中的に他の作品にも手を伸ばしている。彼の作品に共通して
 いるのは、リズミカルな文章、ユーモアあふれる言い回し、
 そして登場人物に対する作者の愛情だと思う。それらが森見さんの
 作品をどこかコミカルで、どこかとぼけた味わいあふれるものに
 しているのだと思う。
 しかし、この作品は、森見さんの作品に対する私の上記のような
 見解を見事に覆す作品だった。どこまでも森見さんらしくない作品。
 読みながら、谷崎潤一郎の「陰影礼賛」を思い出した。
 そして、純日本風の家屋の隅々に必ず存在する陰影を、
 畳の部屋に漂うほの暗い雰囲気を、雨の日に瓦屋根から落ちる雨だれ
 が響かせるぽつんぽつんという寂しい響きを思い出した。

 社会はどんどん便利になり、24時間、お店が開くようになり
 ほしいものが何時でも手に入るようになった現代。どこにいても、
 手軽に連絡を取り合えるようになった現代。
 それでも、私たちの中には、今も脈々と「暗闇」が満ちていた時代の
 「目に見えないもの」が信じられていた時代の、「神様」や
 「天狗」や「河童」などが人間のすぐ隣にいた時代の考え方が
 流れ、私たちに影響をしているのだと思う。
 この「不思議」な話には、日本人だからこそ分かる感覚が
 たくさん盛り込まれているような気がする。そして、そういった
 「不思議」を家屋が作り出す「陰影」を感じ取れる日本人の感性を
 私は、ひそかに誇りに思ってしまうのである。
 の存在を
 をどの作品もどこかまったく
 

そのときはかれによろしく/市川拓司

2009年10月19日 22時32分37秒 | 読書歴
91.そのときはかれによろしく/市川拓司
■ストーリ
 小さなアクアプランツ店「トラッシュ」を経営している主人公、
 遠山智史のもとに、ある夜、森川鈴音と名乗る美しい女性が現れ、
 アルバイトとして住み込みで雇ってくれるように頼む。智史は
 怪しく思ったものの、彼女に奇妙な懐かしさを感じ、受け入れる。
 一方、智史は、結婚紹介所で知り合った美咲さんと何度かデートを
 重ね、デートのたびに、自分の13歳のときの思い出話をしていた。
 13歳の彼に初めてできた友達、五十嵐佑司と滝川花梨との
 出会いから別れまでについて。
 やがて彼は、鈴音がかつての友人、滝川花梨だということに
 気づき・・・。

■感想 ☆☆*
 市川さんらしい温かいファンタジー。
 当初、心がすさんでいる私にとっては、ちょっぴり設定が結末が
 甘すぎるように感じられた。けれど、この物語の核は、当初、私が
 思っていたような、決してただ甘いだけの「男女のラブストーリー」
 ではないのだと思う。「友情」や「親子愛」なども含めた「愛情」
 の物語。そう思うと、「甘さ」が「気持ちのよい温かさ」に変わって
 感じられた。
 主人公である智史が友人たちに向ける愛情や、智史自身が両親から
 向けられる愛情は、私たちが普段、照れくささゆえに、なかなか
 口に出して伝えられない気持ち。だからこそ、そういった気持ちを
 素直に行動や口に出して行動できる主人公たちの様子が胸に響く
 のだと思う。最初は彼らをななめに見ていたが、いつのまにか
 そんな彼らにしっかりと感情移入してしまった私は、「そのときは
 かれによろしく」という言葉の温かさに、そしてそこに込められて
 いる気持ちの大きさ、暖かさ、果てしなさに、胸が詰まった。
 寒い冬、暖かい部屋の中で、暖かいストーブの傍で、暖かい飲み物を
 飲みながら読みたくなるお話。そして、読み終えた後、静かに
 大好きな人に思いを馳せたくなる。そんな気持ちにさせられる
 かわいらしい話だった。

33年前の我が家

2009年10月19日 07時48分09秒 | 日常生活
秋の恒例行事となっているJR小倉工場祭り。
おいしい野菜や忘れ物の傘が安く売られていたり
たこ焼きや綿あめなど縁日の王道メニューから、
つきたてのお餅といった縁日では変わり種のメニューまで揃えられていたり
大道芸やブラスバンド、エイサーなどのステージ鑑賞が楽しめたり、
見所、楽しみどころが満載の家族で楽しめるお祭りです。

会場となる小倉工場が我が家のすぐ近くにあるため、
ほぼ毎年、遊びに行っていますが、今年は鉄道ブームのおかげなのか、
グッズ販売や写真コーナーの充実ぶりが目立ちました。
しかも、人の集まり具合も尋常ではなく、今までにない盛況っぷり。

でも、人が集まってくるのも分かる!
だって、集められた資料のどれもこれもがとっても面白いもの!

今はもう使われることのなくなった機材。
かつての駅名を刻んだプレート。
そして、小倉市街を電車が走っていた頃の風景を治めた写真。

それらのひとつひとつに、郷愁を呼び起こされて、
思わず興奮しながら「あの頃」について、語り合ってしまいました。

この写真は、33年前の「我が家」です。
数十年後、この電車の右あたりに「我が家」が建ちます。
写真を見ながら、小倉の町は電車と縁が深かったこと
ワタクシの思い出にも電車が刻まれていることなどがどんどん蘇ってきて
そして、何とも言えない気持ちになりました。

変化はわるいことではないけれど
どうしても寂しさを伴ってしまうものなのかも。