92.きつねのはなし/森見登美彦
■ストーリ
京の骨董店を舞台に現代の「百物語」の幕が開く。
細長く薄気味悪い座敷に棲む狐面の男。闇と夜の狭間のような
仄暗い空間で囁かれた奇妙な取引。私が差し出したものは、
そして失ったものは、あれは何だったのか。
さらに次々起こる怪異の結末は。妖しくも美しい幻燈に彩られた奇譚集。
■感想 ☆☆*
「夜は短し 恋せよ乙女」ですっかり森見さんの虜となってしまい
集中的に他の作品にも手を伸ばしている。彼の作品に共通して
いるのは、リズミカルな文章、ユーモアあふれる言い回し、
そして登場人物に対する作者の愛情だと思う。それらが森見さんの
作品をどこかコミカルで、どこかとぼけた味わいあふれるものに
しているのだと思う。
しかし、この作品は、森見さんの作品に対する私の上記のような
見解を見事に覆す作品だった。どこまでも森見さんらしくない作品。
読みながら、谷崎潤一郎の「陰影礼賛」を思い出した。
そして、純日本風の家屋の隅々に必ず存在する陰影を、
畳の部屋に漂うほの暗い雰囲気を、雨の日に瓦屋根から落ちる雨だれ
が響かせるぽつんぽつんという寂しい響きを思い出した。
社会はどんどん便利になり、24時間、お店が開くようになり
ほしいものが何時でも手に入るようになった現代。どこにいても、
手軽に連絡を取り合えるようになった現代。
それでも、私たちの中には、今も脈々と「暗闇」が満ちていた時代の
「目に見えないもの」が信じられていた時代の、「神様」や
「天狗」や「河童」などが人間のすぐ隣にいた時代の考え方が
流れ、私たちに影響をしているのだと思う。
この「不思議」な話には、日本人だからこそ分かる感覚が
たくさん盛り込まれているような気がする。そして、そういった
「不思議」を家屋が作り出す「陰影」を感じ取れる日本人の感性を
私は、ひそかに誇りに思ってしまうのである。
の存在を
をどの作品もどこかまったく
■ストーリ
京の骨董店を舞台に現代の「百物語」の幕が開く。
細長く薄気味悪い座敷に棲む狐面の男。闇と夜の狭間のような
仄暗い空間で囁かれた奇妙な取引。私が差し出したものは、
そして失ったものは、あれは何だったのか。
さらに次々起こる怪異の結末は。妖しくも美しい幻燈に彩られた奇譚集。
■感想 ☆☆*
「夜は短し 恋せよ乙女」ですっかり森見さんの虜となってしまい
集中的に他の作品にも手を伸ばしている。彼の作品に共通して
いるのは、リズミカルな文章、ユーモアあふれる言い回し、
そして登場人物に対する作者の愛情だと思う。それらが森見さんの
作品をどこかコミカルで、どこかとぼけた味わいあふれるものに
しているのだと思う。
しかし、この作品は、森見さんの作品に対する私の上記のような
見解を見事に覆す作品だった。どこまでも森見さんらしくない作品。
読みながら、谷崎潤一郎の「陰影礼賛」を思い出した。
そして、純日本風の家屋の隅々に必ず存在する陰影を、
畳の部屋に漂うほの暗い雰囲気を、雨の日に瓦屋根から落ちる雨だれ
が響かせるぽつんぽつんという寂しい響きを思い出した。
社会はどんどん便利になり、24時間、お店が開くようになり
ほしいものが何時でも手に入るようになった現代。どこにいても、
手軽に連絡を取り合えるようになった現代。
それでも、私たちの中には、今も脈々と「暗闇」が満ちていた時代の
「目に見えないもの」が信じられていた時代の、「神様」や
「天狗」や「河童」などが人間のすぐ隣にいた時代の考え方が
流れ、私たちに影響をしているのだと思う。
この「不思議」な話には、日本人だからこそ分かる感覚が
たくさん盛り込まれているような気がする。そして、そういった
「不思議」を家屋が作り出す「陰影」を感じ取れる日本人の感性を
私は、ひそかに誇りに思ってしまうのである。
の存在を
をどの作品もどこかまったく