のりぞうのほほんのんびりバンザイ

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海からの贈り物/リンドバーグ夫人

2009年10月27日 17時35分30秒 | 読書歴
96.海からの贈り物/リンドバーグ夫人

■内容
 大西洋横断飛行に最初に成功した飛行家リンドバーグ大佐夫人
 であり、自らも世界の女流飛行家の草分けの一人である著者が
 その経歴を一切捨て、一人の女として、主婦として、自分自身を
 相手に続けた人生に関する対話である。ほら貝、つめた貝、
 日の出貝などの海辺の小さな芸術品に託して、現代に生きる
 人間ならだれでもが直面しなければならぬいくつかの重要な
 問題が語られる。

■感想 ☆☆☆*
 最近、平易な文章にばかり触れていたため、読み難い日本語訳に
 すっかり手こずってしまったが、それでも読み進めながら
 しみじみと共感できる作品だった。
 むしろ、読み難い訳のおかげで、何度も読み返しながら読み
 進められ、通常以上に、文章の意味を、内容をかみしめながら
 読み進めることができたように思う。

 今から約40年前にアメリカ人向けに書かれたものではあるが、
 今もまったく状況は変わっていないことを実感した。
 むしろ、40年たったことによって、私たちの状況は当時よりも
 リンドバーグ夫人が警鐘を鳴らす状況に一層近づいているのでは
 ないか、という気がした。

 リンドバーグ夫人は、「最近の」男性も女性も、意識を外に
 向けてばかりで、自分を内部に向かわせることが少なくなった
 と指摘する。特に女性は、フェミニスト運動のおかげで、
 多くの権利を手にし、今まで以上に世の中での活躍の機会
 を持つようになった。けれど、そのために女性が失ったものは
 大きいのではないか、と彼女は訴える。
 人には自分を見つめる時間が必要であり、ひとりで考える
 時間が必要であり、孤独になることは大切である、という
 彼女の考えには心から共感できた。
 そして、確かにそのとおりかもしれない、と自分自身を省みた。
 インターネットにテレビ、携帯、様々なツールが増えたおかげで
 私たちの生活は便利になり、私たちは多くの情報を簡単に
 手に入れられるようになった。
 そして、その手に入れた情報のおかげで判断基準を増やす
 ことができている。だが、その中で、私たちがひとりで
 ゆっくりと物事に思いをはせる時間、物思いにふける時間は
 どんどん削られているように感じる。
 今、教育の世界では子供たちの想像力・創造力の欠如が
 指摘されていると言う。しかし、欠如しているのは、
 想像力でも創造力でもなく、それらを養う時間なのでは
 ないかと思った。

 だからといって、私は今の生活スタイルをすぐには変えられ
 ない。私は今の便利さを手放せられない。けれど、それでも、
 少しずつひとりに戻る時間を、自分ひとりで考える時間を
 確保したい。そう思った。