のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

飛ぶ教室(2011年冬公演)

2011年12月03日 11時24分01秒 | 舞台(キャラメルボックス)
■キャラメルボックス2011年冬公演
■飛ぶ教室(成井豊の世界名作劇場vol.3)
■原作:エーリッヒ・ケストナー
■出演
 多田直人、筒井俊作、小林千恵、井上麻美子、鍛冶本大樹、佐東広之、石川寛美
 石原善暢、小多田直樹、小笠原利弥、笹川亜矢奈、大家仁志(青年座)
■ストーリ
ドイツのキルヒベルクにある、ヨハン・ジギスムント高等中学校。その高等科1年に、仲良し5人組がいた。成績優秀で意志の強いマルチン、ボクサー志望で食いしん坊のマチアス、貴族の子で気の弱いウリー、孤児で物語を書くのが好きなジョーニー、皮肉屋で頭の回転が速いゼバスチアン。5人はなんてことない、でもきらめくような毎日をギムナジウムの仲間たちと楽しむ。

■感想 ☆☆☆*
今年はなんとなく諦めていたキャラメルボックスさん。
昨年末、キャラメルさんのホームページに掲載された「来年の予定」には
どこにも九州公演の兆しが見えなかったし。
昨年の「25周年記念公演」が運よく北九州で見られたのは
すっごくすっごく嬉しかったし、今年もまた来てほしいよー!と
切実に願っていましたが(アンケートにも熱烈に書きましたが。)
でも、あの公演は確実にチケットを売りさばけること間違いなしの鉄板の舞台だったし
何より出演陣がものすごーーーーーーーーーーーく豪華だっただけに
それぞれのファンが間違いなく来てくれる、と予測できるメンバーだっただけに
北九州公演が成り立ったんだろうなー、と諦めていたわけです。

それが!
まさかの!
今年も北九州公演!

出演者を見る限り、若手メンバー中心のフレッシュな舞台になりそうな予感大で
昨年同様、チケット発売日当日に購入いたしました。
そうしたところ、まさかの1番前のまん真ん中!という夢のような席で。
・・・もしかしてチケットの売れ行きが芳しくないのかしら??
といらん心配しつつも、素敵すぎる席にわくわくしながら当日を迎えました。
・・・で、その当日がもう1カ月も前の出来事で。
いやはや時が過ぎるのはなんて早かろうかと呆然。

至近距離で観劇できたキャラメルさんの舞台。
大げさではなく、夢のようなひとときを味わいました。それぐらい大好き。
今回はケストナー原作の舞台とあって、
キャラメルさん特有の熱気ほとばしる真っ直ぐで熱い感じは抑えめ。
ケストナー特有のユーモアとペーソスが垣間見える穏やかで
ぬくもり溢れる時間が流れる素敵な空間が目の前に広がりました。
誰か一人に焦点を絞って時を追う舞台ではなく、
登場人物ひとりひとりに目を配り、彼ら全員が手にする幸せをそっと見守る。
そんな素敵な群像劇でした。

ケストナー作品大好きですが、なぜかこの有名な作品は未読で
そのため、どこからがキャラメルナイズされた部分なのか
どこまでが原作のエピソードなのかがよく分かりませんでしたが
前半はエピソードが散逸されていて、この作品の誰に焦点を当てて
どういうふうに話を追えばいいのかがやや分かり辛かったかな。
若干、全体の雰囲気が散漫な印象を受けました。
でも、徐々に舞台の雰囲気に慣れ、主要人物が見えて来て
彼らのキャラクターが掴めてくると、舞台の主軸を貫いているのが
「友情」と「家族愛」なのだとしっかりと伝わってきて
舞台終盤はひたすらにあたたかいものがこみ上げていました。

少年時代を共に過ごしたかつての少年たちの大人の友情あり。
今、少年時代真っ只中にいて、誇りを忘れることなく友情を貫く少年たちの友情あり。
年代を超えて築かれるオトナと少年の友情あり。
正しく温かく子どもたちを見守る大人たちの姿に
そんな大人たちを尊敬の眼差しでまっすぐ見上げる子どもたち。
そして、いつの時代も変わらない親が子を思う心と子が親を慕う心。
そういったものがあちらこちらに垣間見える
クリスマスシーズンらしいあったかいお話だったな。

でね。なんといっても、今回は多田さん!だと思うのです。
すっごくすっごくイメージ通りの役だった。すんごい好みの役だった!
ただでさえ、顔が好みなのに、役柄も好みなもので
2時間ひたすらに多田さんの姿を追い求めていました。
いつも冷静で自分を見失わず、仲間思いで家族思い。
辛いことや悲しいことをひとりで静かに受け止めて、
一生懸命に自分の中だけで消化しようとする。
そんなマルチンを熱すぎない、力の入り過ぎていない(褒めてます。全力で。)
演技ですごくナチュラルに演じていました。
「自然体」という言葉がよく似合う役者さんだな、と思っています。
「少年ラジオ」で初めて多田さんをきちんと認識して、
うわ!なぜこんなにも好みの殿方を見逃してたのかしらー?とびっくりして
それ以来、ずっとひっそりこっそり見守っていましたが、
ようやく真ん中に立つ彼を(運よく真ん前で!特等席で!)見られました。
イケメンさんだと思うのにあまり真ん中でばばーんと目立つ役で
舞台に立つことがあまりなくて、少し寂しく思っておりましたが、
今回は満を持しての主役級。久々にゆっくりと演技を見ましたが、やっぱり好き。
多田さんの声の出し方も好きです。声を張り上げていないのに、よく通る声。
声の出し方が自然だから、演技も自然体に見えるのかな。
今回はとても素直な少年をまっすぐ演じられていましたが、
少しひねた感じの2番手とかもよく合いそうだなー、と思いました。

でもって、ちえちゃん!
クラス一背が小さくて、びびりの男の子ウリー。
めっちゃ似合ってた!はまり役だった!
もー!もー!見事すぎる!と大騒ぎでした。(私が)
こういう子って、絶対今もクラスにひとりはいると思う。
そう素直に思えるぐらい「かわいいオトコノコ」を等身大で演じられていました。
30過ぎてるなんてまったく信じられないよ・・・。
むしろ、ずるい・・・と呟きたくなっちゃうよ。
今回、ゆっくりちえちゃんの演技を見て、私は彼女に関しても
声の出し方が好きなんだわー、と確信しました。
勿論、表情の作り方も好きだけど。
でも、やっぱり一番は声。
張り上げていないのによく通る声はすごく聴きやすくて
こちらも力を入れることなく、彼女の演技に集中できるのだと思います。
舞台に関しては、声そのもの、というよりも声の出し方が
私にとって、すごくすごく重要パーツなんだろうな。
岡田さつきさんしかり、石川寛美さんしかり。

でもって、今回のストーリーテラー、佐東さん。
私、彼の温かみある声と表情も大好きです。
うるさすぎるコメディを演じても、あまりうるさく感じさせないのは見事だと思う。
ただね、今回はちょっぴり科白間違いが多くて、少し気になりました。
些細な言い間違いなんだけど、些細なだけに「あ!間違えた!」とか
「あ!詰まった!」とかが気になる。にやついてしまう。(私が。)
ちょっと話への集中をそがれました。(私の集中力も大いに問題なんだけど。)
今回は、あったかい笑顔そのままのユーモアあふれるストーリーテラーさんでしたが
今後はそのあったかい笑顔でがつんと悪役も演じてほしいなー。
絶対似合うと思うんだけど。

で、キャラメルさんの愛すべき動ける太っちょ、筒井さん。
今回も愛されキャラ全開でございました。
なんだろ。この安定感。
筒井さんが出てくるだけで場が和むというか、
舞台を「キャラメル」の舞台に仕上げるというか。
うん。そういう意味では、キャラメルの愛すべきお母さんとも言うべき
石川寛美さんと存在感が似ているのかも。
寛美さんといえば、今回初めて彼女の演技を生で見ました。
ずっとDVDでしか見たことがなくて。
で、初めてなのに懐かしい気持ちになりました。
「あー。懐かしいキャラメルさんがここにー!」と嬉しい気持ちになりました。
今だって十分に子役ができちゃう愛らしい声と演技と風貌はそのままで
でも、お母さんとしての風格もきちんと備えていて。
ある場面では、ギムナジウムのやんちゃな男の子を。
ある場面では、遠く離れた地でマルチンを心配する優しいお母さんを。
見事に演じ分けられていました。
マルチンのお母さん役はもんのすごいはまってた!
ラスト、汽車賃を送れないために冬休みをギムナジウムで過ごすはずだったのに
思いがけず帰ることができた息子を出迎えて喜びの涙を流す場面は、
こちらまで暖かい涙が誘われるとても好きな場面だったな。
「ギムナジウム」とか「寄宿舎」とか、私にとってはまったく身近ではない話なのに、
彼らの再会の場面を見ているときに感じる感情はどこか懐かしさを感じさせるもの、
彼ら親子をどこか身近に感じているような近しい人を見守るような感情でした。
ふたりの普遍的な親子の姿が時代や国境を忘れさせてくれました。本当に素敵な場面。

そんなこんなでたっぷりと楽しんだキャラメルさん。
来年も今のところ九州公演の予定はありません。
でも!きっとまた来てくれるはず、と信じてます。
願わくば・・・。有川浩さんと作り上げる新作クリスマス公演を見たいなー。

とにもかくにも。
今年も北九州に来てくださって、本当にありがとうございました☆
呼んでくれた北九州芸術劇場さんにも大感謝でございます。
来年は、他の劇団の作品もぜひとも見たいな。