58.哀愁的東京/重松清
■ストーリ
進藤宏。40歳。新作が描けなくなった絵本作家。
フリーライターの仕事で生計を立てる進藤は、様々な人に出会う。
破滅の時を目前にした起業家、閉園する遊園地のピエロ、人気の
ピークを過ぎたアイドル歌手、生の実感をなくしたエリート社員。
進藤はスケッチをつづける。時が流れることの哀しみを噛みしめ、
東京という街が織りなすドラマを見つめる。
「今日」の哀しさから始まる「明日」の光を描く連作長編。
■感想 ☆☆☆
トンネルから抜けられないでいる中年男性を描かせたら一番
なのではないかと勝手に思っているのが重松さんだ。荻原さんも
同じように「うまくいかない中年男性」を魅力的に描いて
くれるけれども、どこかコミカル。どん底というわけではない
人を明るく描いてくれる。重松さんの作品の主人公は、たいてい
トンネルの暗闇の中にいる。光が見えないわけではないし、
おそらく出口はあちら、というような漠然とした方向は
見えている。けれども、足が動かない。前に進めない。
そういった主人公が多い気がする。
本作品の主人公も同様のタイプだ。彼はそんな自分自身を自虐的に
見つめ続ける。どうすればいいのか分かっているのに、前進でき
ないまま、似たような境遇の人たちをも見つめ続ける。
その視線は、決して暖かくはない。けれども、冷たくもない。
ただ、現実をそのまま写し取る。その彼の視線こそが、私の
イメージする「東京」で、タイトルと見事に結びついた。
表紙のイラストも見事。ゴリラ(のような生き物)の哀愁漂う
まなざしが作品と調和している。
■ストーリ
進藤宏。40歳。新作が描けなくなった絵本作家。
フリーライターの仕事で生計を立てる進藤は、様々な人に出会う。
破滅の時を目前にした起業家、閉園する遊園地のピエロ、人気の
ピークを過ぎたアイドル歌手、生の実感をなくしたエリート社員。
進藤はスケッチをつづける。時が流れることの哀しみを噛みしめ、
東京という街が織りなすドラマを見つめる。
「今日」の哀しさから始まる「明日」の光を描く連作長編。
■感想 ☆☆☆
トンネルから抜けられないでいる中年男性を描かせたら一番
なのではないかと勝手に思っているのが重松さんだ。荻原さんも
同じように「うまくいかない中年男性」を魅力的に描いて
くれるけれども、どこかコミカル。どん底というわけではない
人を明るく描いてくれる。重松さんの作品の主人公は、たいてい
トンネルの暗闇の中にいる。光が見えないわけではないし、
おそらく出口はあちら、というような漠然とした方向は
見えている。けれども、足が動かない。前に進めない。
そういった主人公が多い気がする。
本作品の主人公も同様のタイプだ。彼はそんな自分自身を自虐的に
見つめ続ける。どうすればいいのか分かっているのに、前進でき
ないまま、似たような境遇の人たちをも見つめ続ける。
その視線は、決して暖かくはない。けれども、冷たくもない。
ただ、現実をそのまま写し取る。その彼の視線こそが、私の
イメージする「東京」で、タイトルと見事に結びついた。
表紙のイラストも見事。ゴリラ(のような生き物)の哀愁漂う
まなざしが作品と調和している。