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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

妻女山陣場平の貝母は満開です。山桜、霞桜、大山桜も満開。カタクリ、キブシ、ハナヤスリ、コクサギ、ヤマブキ(妻女山里山通信)

2024-04-20 | アウトドア・ネイチャーフォト
 陣場平の貝母(ばいも)が満開になりました。山桜、霞桜、大山桜もほぼ満開です。足元では鮮やかな朱色のクサボケ(草木瓜)も咲いています。氷河期の生き残りウスバシロチョウの食草のシロヤブケマンもあちこちで咲き始めています。カタクリは咲き終わり、あちこちでミヤマウグイスカグラが咲いています。今日も何人も訪れてくれました。里山の自然と歴史、里山保全の大切さと大変さについてお話しています。陣場平は川中島の戦いで上杉謙信が本陣とした場所。ブログ内検索で「川中島の戦い」で該当する記事が読めます。ちなみに我が家の祖先には真田幸村の影武者のひとり、林源次郎寛貴がいます。

 貝母の花。和名は編笠百合といいますが、こうして花の内部を見るとその意味が分かります。葉先が丸まっていますが、これでお互いの茎に絡みつきスクラムを組んで、この時期に発生する爆弾低気圧の強風から身を守ります。奈良時代に入った薬草(毒草)で、万葉集に一首詠まれているらしいことは一つ前の記事で書いています。薬草ですが、全草が毒草です。花の香を嗅ぐのも花粉を吸い込む可能性があるのでしないでください。

 貝母の群生地の周りに朱色のクサボケが咲き出しました。実は地梨といいます。

 クサボケ(草木瓜)の花。草ではなく、高さ50センチぐらいの低木ですが、鮮やかな朱色の花を咲かせるので意外と目立ちます。また、低木ににつかわしくない梅のような大きな実は薬用酒になり、貧血や疲労回復、不眠症に。煮だし汁は入浴剤になるそうです。

 カスミザクラ(霞桜)。と書きましたが、近くで確認するとヤマザクラでした。左向こうはやや桃色がかっているのでエドヒガンの仲間でしょうか。ツピー、ツピーというシジュウカラ。月日星ホイホイホイと鳴くサンコウチョウ、鶯(ウグイス)の初鳴きも聞こえました。

 灌木越しに見る貝母の群生地。灌木は山椒の木や黒文字、臭木など。山椒の若葉を摘む女性もいました。

 貝母は下から咲いていきます。てっぺんが咲いたら満開です。まだつぼみが残っていますが、それも明日には咲くでしょう。

 オオヤマザクラ(大山桜)。別名は、紅山桜。

 花枝に毛があるのでカスミザクラ。無毛で葉がやや赤みを帯びているとヤマザクラ。

 ハナヤスリ。葉の真ん中から出てくる胞子嚢がヤスリの形に似ているのでそう呼ばれます。そうは見えませんが、シダ植物です。

 貝母の群生地の真ん中にあるクマノミズキ。芽吹くために樹液を吸い上げて余剰分が出て発酵してオレンジ色になります。無毒で舐められます。カエデやクヌギなら甘いのですが、これはほぼ無味無臭です。

 カタクリの群生地を観に林道を登ります。あちこちでミヤマウグイスカグラ(深山鶯神楽)が咲いています。夏になる赤い実は甘くて美味しい。

 林道脇に咲く(木五倍子)。キブシの髄はスポンジ状で、昔は灯芯などにも使われたようです。髄を取り出すと中空になるので、酒樽の呑み口にも使われたとか。また、江戸時代には既婚の女性はお歯黒にする習慣がありましたが、キブシの実も利用されました。釘や鉄粉を食酢につけて酸化した液に、ヌルデの実、五倍子(ごばいし)やキブシの実の粉末をつけて、歯につけると黒く染まるそうです。

 カタクリ(片栗)ユリ科。別名カタゴ、カタカゴ(堅香子)、ハツユリ(初百合)。種にアリが食料とするエライオソームという物質がついているため、アリによって運ばれるアリ散布植物です。日本にはアリによって増えるアリ散布植物が200種以上あります。
「もののふの 八十(やそ)乙女らが 汲みまがふ 寺井の上の 堅香子(かたかご)の花」大伴家持(万葉集)
 当維持29歳の大伴家持が、赴任先の越中国府の伏木(現在の富山県高岡市伏木に5年間赴任)で、寺井の井戸(井泉の跡と歌碑がある)の周りにたくさん咲くカタクリを宮中の乙女になぞらえ、都を懐かしんで詠んだ歌だといいます。そう思うと写真のカタクリが、美しい乙女に見えてくるから不思議です。
 もののふとは、宮廷に仕える文武の官のことで、物部と書きます。八十(たくさんという意味)にかかる枕詞ですが、数が多い氏と発音の同じ宇治川の宇治から、宇治川を導く枕詞となったということの様です。昔もやたらと役人が多かったのでしょうか。もののふとは、後に武士そのものを指す言葉に変化します。

 コクサギ(小臭木)ミカン科。小さな臭い木という名前ですが、柑橘系の爽やかな香りです。雌雄異株。葉はコクサギ型葉序と呼ばれ、枝の片側に2ずつ交互に互生します。クサギ(臭木)はクマツヅラ科。実は黒褐色で5ミリほど。有毒です。ミカンがなるわけではありません。葉には殺菌作用のあるアルカロイドを含むので地方によっては家畜小屋に敷いたりするそうです。

 ヒオドシチョウ(緋縅蝶)。ルリタテハと共に春の到来を告げる蝶です。武士が纏う紅色の緋縅に似ているからの命名です。

 天城山(てしろやま)林道から見る千曲川と松代パーキングエリア。黄砂とヒノキの花粉で辛いです。黄砂で遠くの山が霞んで見えません。

 ヤマブキ(山吹)バラ科。「七重八重花は咲けども山吹の実の(蓑)ひとつだになきぞ哀しき」兼明親王(後拾遺和歌集) 実のと雨具の箕をかけています。太田道灌の逸話で知られる花。 古今亭志ん生『道灌』は一聴の価値あり。花を乾燥させて煎じたものは、慢性のせきに効くそうです。

 若葉の頃は樹種によって葉の色が異なります。春紅葉も見られます。この時期の里山は本当に美しい。5月になると緑が濃くなって、遠目では樹種の違いが分からなくなります。

 我が家のタラの芽も一気に開きました。タラの芽生椎茸ベーコンアンチョビーの馬鹿旨パスタ。山菜の季節到来です。明日も午前中は訪れる方の案内をする予定です。見かけたらお気軽に声をかけてください。貝母は、26日までは見頃だと思います。25度以上になるとしぼみ始めます。

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