太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

「この世の春」

2020-06-01 11:08:17 | 本とか
宮部みゆき氏は、好きな作家の一人だ。
「この世の春 (上・中・下巻)」は作家生活30周年記念作だという。
令和元年に文庫化された本を、ハワイで買えるはずもなく
むろん12月に日本で買ってきたのだ。

宮部氏の作品は、ほぼ読んでいると思う。
現代ものより、時代もののほうが好きな作品が多い。
現代ものの中では「火車」と「ソロモンの偽証」が好きで、
時代ものでは迷わず「この世の春」を挙げるだろう。

北見藩(架空)の主君、重興の、突然の押込(主君の座を追われること)。
子どもの頃より、多重人格のように人格が入れ替わる重興の秘密を
真心をもって探り、重興を癒そうと奔走する人達。
秘密が明るみになってゆくにつれ、それは思いもかけず根深く、巨大な闇であることが明らかになる。

目に見えない、不思議なもの。
呪いとか魔術。
人の、想い。真摯な気持ち。勇気とか覚悟。

宮部氏の作品の多くにみられる、そういったものたちが、
この作品の中で、絶妙なバランスと、美しさをもって輝いている。
「荒神」は、スプラッター映画を観ているような残忍な場面が多くて、
ストーリー以前に苦手だと思ってしまうのだけれど、その点も大丈夫。
読後が、すがすがしい。
登場人物が、それぞれに生き生きしていて、どの人物もしっかりと光を放っている。

手元において、再度読み返したい作品だ。
ちなみに、文庫本のカバーの装画が、とてもすてき。
私が好きな日本画家の東山魁夷を思わせる。


「この世の春」  新潮文庫










最新の画像もっと見る

コメントを投稿