太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

仕事

2017-11-30 18:57:28 | 日記
夫の仕事が決まった。

なんか、突然。

専門分野である職種もあたっていたようだが、そちらはだめで、

プラントナーサリーで働くことになった。

10エーカーの土地を、ゴルフカートで移動しながらトロピカルフラワーや樹の世話をする仕事だ。

専門分野のオフィスワークより、アイスクリームファクトリーより、合ってるような気がする。

一日14時間働かされる職場よりも。

大自然相手だし。

うちの庭にいるような妖精がいっぱいいるかもしれないし(どうせ私には見えませんよ)。

もちろん経験などない。

「なんで採用されたんだろう???」

それを言うなら、未経験なのになぜ申し込んだのか・・・・

まあ、いいや。

きっと縁があったのだろう。

これで無職で年越しは免れたわけだ。


友人が言った。

「○○(夫)、すごいねえ。こんなにいろんなところに次から次へと採用されてさー」

いや、それはちょっと違うんじゃ・・

そもそも辞めなければ探さなくていいんだし。

4ヶ月無職だったときもあったしね。

「それに、どんどん新しいことに挑戦するのもすごいよねー」

え、そうなの?

ちょっと違うような気もするが、この際、そういうことにしておこう。






私は笑っていたけど、やっぱりこたえていた。

仕事があるってほんとうにありがたい。

夫も笑っていたけど、その気持ちは私以上に違いない。











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「DEPARTURE」

2017-11-28 19:44:07 | 勝手な映画感想
日本のドキュメンタリー映画の「DEPARTURE」を、ホノルル美術館の劇場で見た。

本木正弘主演の「おくりびと」と英語のタイトルは同じだ。

旅立ち、という意味がある。


ネモトさんという禅寺のお坊さんが、自殺防止の活動をしている。

ネモトさんが5年生の時、やさしかった叔父さんが自殺をした。

そのあと両親が離婚し、母子家庭になり、ネモトさんはグレた。

タバコを吸い、夜徘徊し、そしてバイクで大きな事故を起こした。

死線をさまよい、3ヶ月以上たって退院したときには憑き物が落ちたように冷静になっていた。

入院生活で出会った看護師と結婚し、母親がみつけた「僧侶募集・経験不問」に応募し、僧侶になった。



「DEPARTURE」は、ネモトさんが寺で催しているワークショップだ。

・死ぬ時に残しておきたいものを3つ付箋紙に書く

・やりたいことを3つ書く

・大切だと思う人を3人書く

9枚の付箋紙を眺め、その中から3つ選んで捨てる。

6枚の付箋紙を眺め、その中からさらに3つを捨てる。

3枚の付箋紙の中から、ひとつ捨てる。

2枚の中から、ひとつを捨てる。

最後に残った1枚を、まるめて、捨てる。


「これが、死、です」


ネモトさんが静かにそう言う。


ネモトさんは講演に飛び回り、1日に50通以上のメールを処理し、朝から夜までかかってくる電話に応対し、

新幹線に乗ってでも必要だと思われる人に会いにゆく。

まだ30代だが、過労で心臓発作を起こしたことがあり、今でも心臓の血管がつまり、肺が肥大している。

それでも容赦なく、「死にたい」「電話がほしい」「もうだめだ」という声がネモトさんに押し寄せてくる。




映画の途中で、あまりに重くて私は席をたちたくなった。

ネモトさんに助けを求める人のほとんどは、ウツのような状態になっており、

私はそれが隣に座っている夫と重なって、いたたまれないような気持ちになった。

「この映画、もっと見たい?」

夫に聞くと、

「見たいよ。見たくなかったら外を歩いてくるか、美術館をみてていいよ?」

まあ、夫がそう言うなら、もう少し見てみるか。




映画のあと、買い物をして帰りの車の中で、映画について話した。

「誰か身近で自殺した人、いる?」

「うん、前の夫」

「えっ!知らなかった、事故だと思ってた」

「あれ、言わなかった?話したとばかり思ってた」

そんなこともあった。






「死にたいと思ったことある?」

夜、歯を磨きながら夫に聞いた。

「あるよ」

夫はコンタクトレンズを外しながらそう言って

「でもあなたに会ってからは1度もない」

と言った。

それはよかった。

「私は死にたいと思ったことはないなあ」

「あなたはハッピーパーソンだから」

いや、そうじゃない。

なにか終わってほしいことがあって死んだとしても

終わるのは終わってほしくないものであって、ほんとうに終わってほしいことは終わらないのだし、

それにきっと私は、そこまでの孤独や絶望を知らずに生きてきたということかもしれない。





命を削りながら人を救うネモトさんには頭がさがる。誰にでもできることではない。

けれど、もっと自分の人生を楽しむこともしてほしい。

2歳の息子さんが大人になるまで健康でいることは、人を100人救うことより大事ではないか?

と思うのである。









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人生劇場はハッピーエンド

2017-11-27 09:26:32 | 日記
職場に仕事で出入りする女性のAちゃんが、数ヶ月ぶりに姿を見せた。

肩より長く伸ばしていた髪が、さっぱりとショートになっていて、それがよく似合った。

「髪切ったの?すごく似合うよ」

Aちゃんは私のそばまで来て、

「これ、かつらなの」と言い、続けて

「癌になって、余命も言われて、髪の毛が抜けて、でも奇跡がおきて、癌は治ったの」

私は彼女が言ったことをじょうずに飲み込んで理解するのに、少し時間がかかった。

普通に振舞っているようにみえたとき、彼女は自分の病気を知っており、

私が何も知らずに食べたり笑ったりしているとき、彼女は手術を受けていた。

私はAちゃんが体験してきたことを思い、胸が詰まった。

「おかえり」

そう言ったら、涙が出そうになった。





Tさんは40代の男性。

アメリカ本土を点々としたあと、ハワイに来て、結婚した。

ほとんど奥さんの稼ぎで生活し、Tさんは時々働きながら夢を追っている。

「独身だったら、ホームレスになってもいいって思うんだよねぇ、ときどき」

Tさんがそう言ったことがあるが、それは半分冗談で、半分は本気だ。

やりかねない、というところが、Tさんにはある。

そのTさんが、本土に引っ越すことになった。

個人で車のディーラーのようなことをするのだという。

引越しは決まったが、向こうで住む家のあてもなく、

「しばらくは野宿だなあ」

と言って笑った。

生活の拠点が決まったら、あとから奥さんが行くことになっている。

日本に帰るという選択肢はない(彼は日本人)。

英語も流暢とはいえず、それでもアメリカに住んで夢を追いかけたい。





私達人間は、荒海に放り込まれた木の葉のような存在であるはずがない。

波にのまれ、ただ流されてゆくだけだったら、いったいそれに何の意味があるだろう。

生まれ変わり、そんなことを何千回も繰り返すのだとすれば尚更だ。

離婚したあとの恋愛がうまくいかなかったとき、ネガティブなスパイラルの中で疲れ果てた私は、

何かを望むのをやめ、このまま流れて行き着くところが私の幸せなんだ、という後ろ向きな降参をした。

そう思ったら、楽になった気がした。

望みが叶わない落胆や焦りから解放される。

その途端だった。

私はそれまで縁のあったカウンセラーとなぜか連絡が取れなくなり、別のセラピストと出会った。

ずっしりと重い前のカウンセラーに比べて、そのセラピストはどこまでも軽く、ミーハーで楽しかった。

そしてそこから、私の人生は音をたてて再び動き出した。







だから、私は信じる。

人生は、劇だ。

自分で決めたシナリオを、自分で演じて、それを自分がみている。

役目を終えたら、登場人物がみんなカーテンコールで笑顔で手をつなぐ。



人生は、劇場だ。

私は私の人生という劇を演じながら、他の劇も見ることができる。

私も含め、どの劇も、楽しいこともそうでないことも、絶望も奇跡も、

いろいろ盛り込んで、けっこう飽きない劇になっている。

だから、深刻さを捨てて、楽しもう。

深刻になることさえも、楽しもう。

自分で書いたシナリオだからハッピーエンドに決まっている。











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金木犀

2017-11-26 18:11:25 | 日記
先月、日本に行ったときに(いろいろあって、まるで半年前のことのように思うが)

神社で開催されていたクラフトフェアに行った。

春と秋の年に2回催されるフェアは、私が日本にいた頃にはなかった。

地元を中心にした焼き物や工芸品などのアーティスト、アクセサリーや食べ物を売る店が

思い思いの工夫を凝らして神社の木々の下に店を広げていた。



つい脚が止まったのが、てづくりのキャンドルの店。









ガラス瓶の中に、エッセンシャルオイルを練りこんだ蠟が入っている。

決まりきった香りばかりじゃなく、カレーとかコーヒーなど、ちょっと変わった香りもある。

その中で見つけたのが、金木犀。





金木犀は私が大好きな香りだ。

秋に日本に行く楽しみの一つは金木犀を楽しめることで、歩いているとどこからともなく甘い香りが漂ってきて

香りを辿って金木犀の木を探しに行く。

実家を建て直す前は、猫の額ほどの庭に金木犀の木があった。

毎年いい香りを放ち、散った花が木の下がオレンジのカーペットを敷いたようになるのを見るのも好きだった。

しかし老木で、植え替えしたらもたないといわれて、建て替えの際に手放したのだという。



キャンドルの中に花が閉じ込められている。

蓋を取ると、ふわーっと濃厚な金木犀の香りがあふれる。

キャンドルの芯に木が使ってあり、

火を灯すと、パチパチという音を立てながら燃えるのだそうだ。

というのも、もったいなくてまだ火をつけていない。

時々ふたを開けて、香りを楽しんで、またそっと蓋をするのだ。




ハワイには金木犀がないと思っていた。

けれど、先月、朝のウォーキングのときに、ふと風にのって金木犀の香りがしたような木がした。

似た香りの花なんだろうと思ったが、その道を戻ってくるとき、また香った。

香りを辿ってゆくと、ある家の生垣の一部に金木犀の木はあった。

近づいてみると、それは白い銀木犀だった。

あわてて家に戻り、夫を呼んできて、二人で花に鼻を近づけて香りを吸い込んだ(怪しい二人だ)。

今は朝早すぎるけど、その家の人に、どこで手に入れたか聞こうということになったのだが、

でもそのあとで我が家でいろいろとあって、金木犀どころではなくなってしまったのだった。




今、思いついた。

明日、このキャンドルを燃してみよう。

私はいつだって、もったいないとかいって、きなこを腐らせたりするんだ。

楽しいことを先送りしないで、自分にしてあげよう。





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友がみなわれよりえらく見ゆる日は

2017-11-23 19:34:16 | 日記
今日は11月の第4木曜で、サンクスギビングデーだ。

名前のとおり収穫に感謝する日。

日本でいうと正月みたいなもので、遠く離れている家族が集まって食事をする日であり、

正月はあっさりと過ごすアメリカ人だが、この日は特別だ。

夫の両親がシアトルに行くので、私達は一足早くサンクスギビングのディナーを囲んだ。(その記事はコチラ

私は仕事が休みで、夫と二人で一日中、家の外に出ずに過ごした。

日本人の私が、サンクスギビングは普通の日と変わらないのはいいにしても、

アメリカ人の夫まで、まったくこだわっていないというのはおもしろい。


外は、晴れ間が見えたかと思うと雨が降り、また晴れては曇るというような天気で

家で過ごすにはぴったり。

今日も、暖炉に火を入れた。





火を見ていると、落ち着く。

ちょっと、瞑想。



「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ花を買ひ来て妻といたしむ」



なんだこれ。

石川啄木の歌が川上から流れてきた。

カラ元気でも、笑っているほうがいい。

状況の良い面だけにフォーカスすればいい。

最悪ってわけじゃない。

だけど、人はごまかせても自分だけはごまかせない。

人をうらやむ気持ち、自分が小さくみえる気持ち、それは消しても消してもそこにある。

いや、消すから、そこにある。

その気持ちがあることに気づきながら、気づかないふりをするのはイライラする。

イライラ度でいうと、子供がおもちゃの笛を「ヒュー、ヒュー」とだらだらと吹き続けているのを聞いているぐらいの。



しあわせってなんだっけー。



先月、日本に行って帰ってきたら、頬の目立つところにシミができた。

このシミがなかった2ヶ月前の私は、今よりも幸せだったろうか。

夫がちゃんとした仕事をしている頃の私は、今よりも幸せだったろうか。

前に比べたら、ちゃんとした仕事じゃないけど、夫が仕事をしている頃の私は、今よりも幸せだったろうか。

そうじゃない。

状況を私がどう感じるかで、いつだって簡単に幸せにも、不幸せにもなれる。

どんなにあの時は最高だった、と思うような時でも、不幸せはたくさんあった。

幸せは、私が決める。

幸せも、不幸せも、私が選ぶことができる。

状況だけでいったら、夫が今無職でも、特段困らずに笑っていられる私はすごい幸せなんじゃないか。


だから今、私はやっぱり幸せであることを選ぶ。

でも、それと、心の隅でくすぶる気持ちはまた別だ。


「友がみなわれよりえらく見ゆる日は・・・」


私は心の河の真ん中に立って、流れてくるその歌を体全体で受け止める。

ネガティブがあっても、いい。

ネガティブにならないことがポジティブではなくて、ネガティブがあっていいと認めることが、ほんとのポジティブ。

たぶんね。



シアトルにいる夫の両親と兄が、電話をしてきた。

離れた場所に住む叔母たちも、それぞれに電話をくれた。

私は日本にいる母に電話をかけた。

たまに不幸な気分になるだけで、私が不幸だったことはない。











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