太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

天使に出会った実話 12

2023-05-26 08:41:58 | 天使に出会った実話
Carmel Reilly著『True Tales of Angel Encounters』より


ヘレン  コッツウォルズ イングランド

私は3回、天使を見たことがある。天使ってどんな容姿なのかと聞きたいだろうけど、うまく答えることができそうもない。

最初は、私が第一子を産んだとき。
私は緊急に帝王切開をすることになり、手術室にいた。下半身だけ麻酔が効いていて、何かをしている感覚はあるのに痛みがないのは変な感じだった。
手術室には結構な数の人がいた。何人かの医師、数人のナース、麻酔医、そして夫。気の毒に夫は吐きそうになるのを堪えていて、そこにいてもたいして役に立つとは思えないのだが、何かできることをしたいという気持ちはありがたいと思う。
そのほかに、もう一人女性がいた。
彼女は手術着ではなく普通の服を着ており、しかもうっすら透けていて、彼女の後ろの壁が見えた。その女性は、私の横にいるナースの後ろで私を見下ろし、柔らかく微笑んでいた。私以外には、彼女の姿は見えないようだった。私は混乱しつつも、彼女が私を守ってくれているのだとわかった。
生まれた子供は呼吸をしておらず、手術室は緊張に包まれて、医師たちは子供を少し離れた台の上に乗せ、必死で呼吸ができるように試みていた。夫はといえば、おろおろして気の毒なほどだ。
その間、天使(私はもうそれが天使だと確信していた)は私のそばで私を見下ろし、穏やかに微笑みかけていたから、子供は大丈夫なのだと安心した。
子供が泣き出し、一気に緊張が解けた。
私に子供を会わせたあと、子供はすぐに緊急保育室に連れていかれ、天使も子供と一緒に部屋を出て行った。

2回目は、3番目の娘が3歳のときだ。
専業主婦として8年目の私は、誰にも認められることなく、社会に私だけ取り残されたような疎外感で落ち込んでいた。夫は帰宅するや、娘のうちの一人を抱き上げて一緒に遊び、他の子供をまわりにはべらせて、私をハグすることも話しかけることもない。
私の不満はどんどん大きくなっていき、落ち込むばかりだった。

その日は、最初から何かがうまくかみあわないと感じる日だった。まず、子供がボールを投げて、私のお気に入りの花瓶を割り、食べたものを吐き、洗濯機が壊れて、キッチンも廊下もそこらじゅうが水浸しになった。
私がその後始末をし終えたとき、既に午後の4時をまわっていた。私はもう何もかもが嫌になり、耐えられないと思った。
アニーは自分の部屋で昼寝をしていて、私はコップにミルクを注いで、彼女が目覚めたときに飲めるようにベッドの脇に置いた。
夫の秘書に電話をし、できるだけ早く帰宅するように伝言を伝えた。
そして私は家を出た。
上の娘たちは、他の子供の母親が迎えに行く日だったので大丈夫だろう。

私は着替えを詰めた小さなバッグを提げて、通りを歩いていった。行く当てなどなかったが、あの家にはもういたくなかった。子供を置いて家を出るなど、とんでもないことだとわかっているけれど、どうしようもなかった。

そこに、ある男性が車を止めて、乗っていかないかと私を誘った。彼は私がどこに行くのかすら知らないはずだったが、そんなことはどうでもよかった。私は了承し、車に乗った。とにかく少しでも遠くに行きたかった。
彼は私に、何が起きたのかを尋ねた。彼はとても信頼できる雰囲気で、私はなぜか見知らぬその人にすべてを打ち明けていた。
彼は私に同情し、しかし、子供たちはどう感じるだろう、そして夫はどう対処すると思うか、と言った。
そして、私はもっと夫に、私が何を必要としているのかを話すべきだと言う。私はそれでうまくいくのかわからなかったけれど、いろんなことを話しているうちに、私は自分がひどく愚かなことをしていると思えてきた。

私は彼に家まで送ってほしいと言ったが、どうせぐるぐる同じ道をまわっているだけだったから、私の家は目と鼻の先だった。
彼は私と一緒に車を降りた。家の玄関は開いていて、中に女性がいた。
「彼女がアニーをみてくれていたからね」
彼はそれだけ言って、彼とその女性は共に去って行った。無事なアニーを見て心から安心し、家を出ようとしたことに深い罪悪感を感じた。

この時、天使たちは普通の人間になりすまして私を助けてくれた。これを乗り越える魔法などあるはずもなかったが、それでも夫と私はできるだけのことをして、なんとかうまくいくように努力した。
私は、何もかもを一人で溜め込んで破裂する前に、夫と分かち合うことを学び、それからは二人で難局を乗り越えていった。

最後に天使を見たときは、ちょっと変わっていた。
ある男が学校に乗り込み、銃撃事件を起こして多くの子供の命を奪ったことがあった。直接私には関係のない事件ではあったが、自分の子供らと同じぐらいの年齢の子供が犠牲になったことは、とても悲しく辛かった。
私は犠牲になった子供らと家族のために泣き、自分の家族が無事でいることに感謝をし、そういうことに巻き込まれないように祈った。
私は自分なりのやり方で信仰しているので、教会にはあまり行かないが、ある木曜日のミサに出かけた。
私は椅子に座り、じっくり話をに耳を傾けるでもなく、ただオルガンや歌を聴いていた。
ふと目を上げたとき、教会の中にたくさんの天使がいるのが見えた。顔ははっきりわからないが、彼らは光に包まれていた。私は天使たちが私たちを見守ってくれていると感じて、とても幸せな気分になった。
天使たちはしばらくそこにいて、そして見えなくなった。


天使に出会った、どの状況も違っているけれど、いつも私が危機に立っているときに彼らは現れた。だから、姿が見えなくても彼らは常に私たちを見ていて、必要なときに手を差し伸べてくれるのだと固く信じている。




天使に出会った実話 11

2023-05-23 07:23:45 | 天使に出会った実話
Carmel Reilly著『True Tales of Angel Encounters』より


チエコ  東京  日本

大学生の私は、ボーイフレンドに振られて落ち込んでいた。私はカフェバーに行き、本を読みながらビールを飲んでいた。誰かが店に入って来て、人を探しているような様子だ。そして私と目が合うと、彼女はここに座ってもいいか、と聞いた。まるで、私を探していたかのように。
私は、どうぞ、と言った。なんとなく、どこかで会ったことがあるような気がするが思い出せない。
彼女といると、とても心地がよかった。私たちはいろんなことについておしゃべりに夢中になり、気が付くとずいぶん遅い時間になってしまった。

私が、もうそろそろ帰ると言うと、彼女が、どのルートで帰るのかと聞く。
私が住んでいる地域は、小さな路地がたくさん入り組んでいるところで、その路地をいくつも曲がっていくのがアパートまでの近道だ。
私がそう答えると、彼女は心配そうな顔になり、地下鉄の駅まで一緒に行くから、地下鉄に乗って帰ったほうがいいと言う。
地下鉄の駅からアパートまでは、街灯も店もたくさんある明るい道だから安全だというのだ。
地下鉄の駅前で、私たちは電話番号を交換し、私は帰宅した。

翌日、昨夜、私が近道にしていた路地で若い女性が襲われてケガをしたというニュースをみた。
それはちょうど私が帰ろうとしていた時間帯で、もしも私がそこにいたら、私が被害者になっていたかもしれなかった。
私はすぐに、昨夜交換した彼女の電話番号にかけてみたが、「現在使われておりません」というアナウンスが聞こえるだけだった。
私は電話会社に、彼女の名前を問い合わせてみたが、彼らの記録にはなかった。
その後、彼女に会うことはない。
彼女は私を守るために送られた天使だったと確信している。




天使に出会った実話 10

2023-05-22 07:12:42 | 天使に出会った実話
Carmel Reilly著『True Tales of Angel Encounters』より


アリソン(47)  マンチェスター イングランド

数年前、私は睡眠薬と痛み止めの薬にほぼ中毒状態だった。その時期、私はとても辛い状況にあり、気持ちを安定させるために、どんどん薬に頼っていったが、それは状況を悪化させはしても、けして好転させはしなかった。
ある時、こうして自分を痛めつけることに飽き飽きして、薬を全部断つことにした。しかし、徐々に量を減らしていくべきところを、私は残りの薬を全部捨て、いきなりすべての薬を断ってしまった。
あとになって、これがどんなに愚かなことだったかを知る。
心臓の動悸が激しくなり、ホットフラッシュのように暑くなったりした。血圧は下がり、立ち上がるときには眩暈がした。

二日後、いくぶん気分がよくなったので、買い物に出かけたのだが、買い物の最中に調子が悪くなった。血の気が引き、汗が吹き出して、このまま倒れてしまいそうだった。私は低い壁に腰かけて、気絶しそうになるのを堪えていた。
そこに、宝石が入った箱や袋を抱えた男性が通りかかった。彼は今から商売の準備をするところのようにみえた。
彼は私を見て立ち止まり、袋の中から金色の天使の人形を取り出して、言った。

「あなたにはこれが必要だと思いますよ。気分が悪くなったら、これを握りなさい」

そして男性は去って行った。
私は言われたとおり、天使の人形を握りしめた。すると、動悸は少しおさまり、気分も安定してきた。
その後も、天使を握りしめるたびに、不思議とすっと気分が落ち着くのだった。

この症状がおさまるまで数週間かかった。それはとても辛い数週間だったけれど、天使の人形にどれだけ助けられたかしれない。具合が悪くなって握りしめると、いつも頭の中に大きな天使が現れて、調子が戻るまで私をしっかり抱きしめてくれるのだ。

のちに医者に行ったら、医者は、

「よくまあ乗り切れたもんだね!普通ならそうはいかないよ」

と大層呆れて言った。確かに私は素人考えでバカなことをしたけど、天使の助けがあったことに感謝している。




天使に出会った実話 10

2023-05-17 08:07:21 | 天使に出会った実話
Carmel Reilly著『True Tales of Angel Encounters』より


ティモシ(77) コロラド アメリカ

私はロッククライミングをしていたときに、ひどい滑落をした経験がある。今から40年も昔のことだ。

私はクライミングパートナーと、ちょっと難しい崖に挑戦した。
私たちは互いをロープで繋ぎ、ひとつひとつの動作を慎重に進めていった。ずいぶん登ったところに平たい出っ張りがあったので、そこで休憩をとることにした。
その場所は二人で休憩するには充分なスペースがあり、ロープなどの装備を解いて、軽い食べ物や飲み物を摂った。

休憩が終わり、再び装備を取り付ける前に、私が出っ張りの端を歩いていたら、私が踏んだ部分は外側すぎていて、ひと塊の岩ごと私は空中に投げ出されてしまった。これはまったく初歩的なミスで、100%自分の過失だ。
およそ100フィートぐらい落ちたんじゃなかろうか。とにかく長く感じた。
しかし、落ちている間、私は、よく死ぬ間際に見ると言われるような人生のフラッシュバックというものを経験しなかった。
その代わり、私は二人の天使をはっきりと見た。半透明の、光を放つ人型の存在が、落ちてゆく私の両側にいたのだ。

そして私は地面に落ち、彼らを見失った。
私はとてつもなくラッキーだったとしかいえない。なぜなら、なだらかな岩の斜面をかすったあと、半回転してから下の木の茂みに落ち、そのあと地面に落ちた。
足を複雑骨折し、かすり傷がいくつかとアザができたが、私は生きていた。
仲間たちがやって来た時、痛みはひどかったが意識はあって、ジョークを言えるほどだった。

私の足は、今でもちょっと歪んでくっついた形のままだが、たいした支障はない。
死にかけたから天使を見たのかどうかはわからない。
彼らは私のまわりをぐるぐると回っていた。きっと、落ちる速度を緩め、少しでも衝撃の少ない場所に落ちるようにしてくれたのではないかと思う。
とにかく、私が天使に助けられたことは間違いがないのである。






天使に出会った実話 9

2023-05-16 07:29:07 | 天使に出会った実話
Carmel Reilly著『True Tales of Angel Encounters』より


キャシー(58) テキサス アメリカ

私はナースで、大きな病院で働いている。病院では、よく天使にまつわる話を聞くが、病院という場所が、助けを必要としている人たちが集まっているからなのか、あるいは都市伝説のようなものなのか。15人のナースたちが集まって話をしていたとき、そのうちの7人が病院で天使を見たことがある、と言ったから、約半数のナースが見ていることになる。

私はといえば、ずいぶん昔のことになるが1度だけある。
難産で、子供は無事なのだが、母体の状態が回復しないでいる女性患者がいた。
旦那さんは家に戻り、彼女は酸素吸入器をつけて個室に一人でいた。
真夜中、私のシフトの最終チェックで彼女の病室に行ったら、病室に入るなり何かが変だということに気づいた。
彼女は寝た状態のまま、大量の出血をしていたのだ。それはもうすごい出血で、このままでは死んでしまうと思うぐらいだった。
私はすぐに叫んで助けを呼びつつ、ナースコールのボタンを押した。

すると、すぐに男性が病室に駆け込んできた。医者でもナースでもなく、若い男性で、普通の服を着ていた。
私は彼に、アナタは誰?と聞いたが、彼は、心配しないで、どうすればいいかわかってるから、と言った。
そして私に、今すぐ助けを呼んできてくれと言うと、患者のそばに駆け寄り、ゆっくりと手のひらを額に当てた。
ただ、それだけ。
なぜ私が彼を信用したのか、わからない。怪しい人かもしれなかったのだ。
けれど彼はとても落ち着いていて、信用に値するように思えた。患者の額に手を当てている彼を残して、私は医師を呼びに走った。

救急当直の医師を連れて病室に戻ったら、彼はそこにはいなかった。私が病室を空けたのは2分かそこらだった。
彼女はベッドの上に置き上がり、顔色は青かったが、しっかりしていた。
診察した医師は、出血は既に止まっていて危機は脱しているけれど、その状態でなぜ出血が止まったのかわからない、と言った。

彼女は順調に回復し、子供を抱いて元気に退院した。
あの男性は誰だったのだろうか。
あれから、あの男性を見たことは1度もない。