ちょっと前の話になるが、その日は夫の両親側の家で
4人で夕食を食べることになった。
雑談の中で、どんな話からか忘れたが、夫の父が
「そうだよ、誰だって人生は予定どおりに行かないものさ」
と言った。私と夫は素直に賛成の意を表したが、
夫の母は軽く手を父の肘に当てて
「私は違うわ」
と、キッパリと言った。顔は笑ってはいたが、目は笑っていなかった。
その義母の言葉も、素直にそうなんだろうなあと思った。
15歳で同級生の義父に出会い、大学を出てから結婚。
歯科医の研修医としてハワイに1年住んだのがキッカケで、ハワイが好きになり
海のない内陸から、移住した。
子供は二人と決めていて、下の子供が8歳になるのを待って、看護師として働き始め、
5年後に大学に入り直し、博士号を取得し、大学で教鞭を取る。
着実に出世し、最後は名誉教授にまでのぼり、昨年リタイアした。
挫折も苦しみも悩みもない人生などない。
それらがなかったら探し出すのが人間だともいえる。
だから、むろん義母にも「いろいろ」なことはあったと思うけれど、
私の「いろいろ」とはまた違うように思う。
私だって、私なりにその時々で予定はあった。
だが、超~めんどくさい恋愛をフラフラと10年もした挙句、
やっと結婚したらとんでもないことで、それもまた10年以上かけて終わりにし、
次の予定もはかなく壊れ、なぜかアメリカ人と結婚することになり、
思いがけず妊娠したと思いきや、3年続けて流産し、日本を離れた。
私の予定はいつだって変更ばかりで、特に40を過ぎてからは、場面展開の速さに
自分がついていくのが精一杯な感じだった。
それは夫も同じではないかと思う。
夫は人一倍挫折をしながら生きてきた。家族の中では異分子で、
常に予定外に人生を大きく変えてきた。
若い頃、張り切って掲げた予定どおりに事が運んでいたら。と思うことがある。
それはそれで、楽しいこともそうでないことも盛り合わせで、
悪くはない人生かもしれないけれど、それだと、深い部分の私が
「なんかつまんなーい」
と、言う。
そうなのだ。予定外に振り回されてきたのは、全て私が原因なのだ。
しかしそれは本質の私であって、生身の私は翻弄されるだけ。
ハワイに住むのも予定に入っていたのだろうが、
これが例えば、二十代で留学してそのままいい人見つけて結婚して、
というんじゃつまんないから、お汁粉にはキュウリのキューちゃんが必要なように
人生にもキューちゃんが必要よね、とかいって、あれもこれも詰め込んでみた。ってところか。
確かにキューちゃんはいい仕事していると思う。
お汁粉の甘さを引き立たせているばかりか、甘さに飽きそうな時、
ピリリと美味しさを思い出させてくれる。
「私のお汁粉にはキューちゃんはいらないわ」
と、キッパリと言い切る義母の人生。
そういう人もいるのだなあとしみじみと思うのである。
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4人で夕食を食べることになった。
雑談の中で、どんな話からか忘れたが、夫の父が
「そうだよ、誰だって人生は予定どおりに行かないものさ」
と言った。私と夫は素直に賛成の意を表したが、
夫の母は軽く手を父の肘に当てて
「私は違うわ」
と、キッパリと言った。顔は笑ってはいたが、目は笑っていなかった。
その義母の言葉も、素直にそうなんだろうなあと思った。
15歳で同級生の義父に出会い、大学を出てから結婚。
歯科医の研修医としてハワイに1年住んだのがキッカケで、ハワイが好きになり
海のない内陸から、移住した。
子供は二人と決めていて、下の子供が8歳になるのを待って、看護師として働き始め、
5年後に大学に入り直し、博士号を取得し、大学で教鞭を取る。
着実に出世し、最後は名誉教授にまでのぼり、昨年リタイアした。
挫折も苦しみも悩みもない人生などない。
それらがなかったら探し出すのが人間だともいえる。
だから、むろん義母にも「いろいろ」なことはあったと思うけれど、
私の「いろいろ」とはまた違うように思う。
私だって、私なりにその時々で予定はあった。
だが、超~めんどくさい恋愛をフラフラと10年もした挙句、
やっと結婚したらとんでもないことで、それもまた10年以上かけて終わりにし、
次の予定もはかなく壊れ、なぜかアメリカ人と結婚することになり、
思いがけず妊娠したと思いきや、3年続けて流産し、日本を離れた。
私の予定はいつだって変更ばかりで、特に40を過ぎてからは、場面展開の速さに
自分がついていくのが精一杯な感じだった。
それは夫も同じではないかと思う。
夫は人一倍挫折をしながら生きてきた。家族の中では異分子で、
常に予定外に人生を大きく変えてきた。
若い頃、張り切って掲げた予定どおりに事が運んでいたら。と思うことがある。
それはそれで、楽しいこともそうでないことも盛り合わせで、
悪くはない人生かもしれないけれど、それだと、深い部分の私が
「なんかつまんなーい」
と、言う。
そうなのだ。予定外に振り回されてきたのは、全て私が原因なのだ。
しかしそれは本質の私であって、生身の私は翻弄されるだけ。
ハワイに住むのも予定に入っていたのだろうが、
これが例えば、二十代で留学してそのままいい人見つけて結婚して、
というんじゃつまんないから、お汁粉にはキュウリのキューちゃんが必要なように
人生にもキューちゃんが必要よね、とかいって、あれもこれも詰め込んでみた。ってところか。
確かにキューちゃんはいい仕事していると思う。
お汁粉の甘さを引き立たせているばかりか、甘さに飽きそうな時、
ピリリと美味しさを思い出させてくれる。
「私のお汁粉にはキューちゃんはいらないわ」
と、キッパリと言い切る義母の人生。
そういう人もいるのだなあとしみじみと思うのである。
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