友人同士で、
「私が若作りしていたら言ってね」
「私こそ、イタかったら言ってよね」
と言い合った時代があった。
あの時はまだ、私達は中途半端にでもじゅうぶんに若かった。
その時代は、洋服を買う時、何を着ればいいのかわからなくて迷う。
おばさんにはなりたくない、かといって若作りするのは切ない。
『○○才を過ぎたら、前髪を額におろすのは恥ずかしい』
そんな不特定な誰かの書いた言葉にも、簡単に動揺する。
髪型にも、靴にも、若さという点で決定的な違いがあるような気がして、
そうなってくると、服だけじゃなく、髪型も靴もバッグも、どうしていいかわからない。
友人とショッピングに行って、
「ここって私らの娘ぐらいの子が来る店じゃない?」と不安になり、
娘のものを買うふりをしたこともあった。
老いと若さがせめぎあう、ちょうど寒流と暖流のいりまじったあたりで右往左往する私達は
この先ずっとこんなふうに迷いながら生きるのかと、先が思いやられた。
しかし、それは取り越し苦労だった。
暖流を抜けて、すっかり寒流の中に入ると、つまりすっかり若くなくなると、あの迷いは何だったのかと思う。
気がつけば、年齢を考えて服を買うことも、髪型を決めることもまったくなくなった。
娘ぐらいの年齢の人に混じって買い物するのもへいちゃらだ。
あんなに恐れた「若作り」も、今となればそれがどうした、と思う。
でも、たとえ待ち合わせ場所に来た友人が若作りしていても、それを指摘はしない。
イタイ友人に、「ちょっとイタイよ」と言えるわけがない。
イタイのはお互い様で、だから私のことも見逃してほしいと思う。
「いつからこんなにラクになったかねぇ」
ハワイに住む、同い年の友人に言うと彼女は
「それはここが日本じゃないからでしょ。日本じゃ、少なくともそんな花を頭につけて歩けないでしょうよ」
と、私が頭につけた手のひら大のハイビスカスを指して言った。
50を過ぎて、頭に大きな花をつけていたら、後ろ指を差されるのだそうだ。
そういえば、ハワイに来た友人達がブティックで、私にしてみれば何の抵抗もなく着られるサンドレスを
「すごくいいけど、日本では着られない」
と言って買えずにいるのを何度も見た。
日本という場所は、そんなふうに窮屈だっただろうか。
私が日本で、これから自分がさしかかる「老い」という坂を前に迷いに迷っていたのも、
そういう日本特有の空気のせいだったんだろうか。
とにかく、迷いの峠は越えた。
着たいものを着て、持ちたいものを持って楽しく生きよう。
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「私が若作りしていたら言ってね」
「私こそ、イタかったら言ってよね」
と言い合った時代があった。
あの時はまだ、私達は中途半端にでもじゅうぶんに若かった。
その時代は、洋服を買う時、何を着ればいいのかわからなくて迷う。
おばさんにはなりたくない、かといって若作りするのは切ない。
『○○才を過ぎたら、前髪を額におろすのは恥ずかしい』
そんな不特定な誰かの書いた言葉にも、簡単に動揺する。
髪型にも、靴にも、若さという点で決定的な違いがあるような気がして、
そうなってくると、服だけじゃなく、髪型も靴もバッグも、どうしていいかわからない。
友人とショッピングに行って、
「ここって私らの娘ぐらいの子が来る店じゃない?」と不安になり、
娘のものを買うふりをしたこともあった。
老いと若さがせめぎあう、ちょうど寒流と暖流のいりまじったあたりで右往左往する私達は
この先ずっとこんなふうに迷いながら生きるのかと、先が思いやられた。
しかし、それは取り越し苦労だった。
暖流を抜けて、すっかり寒流の中に入ると、つまりすっかり若くなくなると、あの迷いは何だったのかと思う。
気がつけば、年齢を考えて服を買うことも、髪型を決めることもまったくなくなった。
娘ぐらいの年齢の人に混じって買い物するのもへいちゃらだ。
あんなに恐れた「若作り」も、今となればそれがどうした、と思う。
でも、たとえ待ち合わせ場所に来た友人が若作りしていても、それを指摘はしない。
イタイ友人に、「ちょっとイタイよ」と言えるわけがない。
イタイのはお互い様で、だから私のことも見逃してほしいと思う。
「いつからこんなにラクになったかねぇ」
ハワイに住む、同い年の友人に言うと彼女は
「それはここが日本じゃないからでしょ。日本じゃ、少なくともそんな花を頭につけて歩けないでしょうよ」
と、私が頭につけた手のひら大のハイビスカスを指して言った。
50を過ぎて、頭に大きな花をつけていたら、後ろ指を差されるのだそうだ。
そういえば、ハワイに来た友人達がブティックで、私にしてみれば何の抵抗もなく着られるサンドレスを
「すごくいいけど、日本では着られない」
と言って買えずにいるのを何度も見た。
日本という場所は、そんなふうに窮屈だっただろうか。
私が日本で、これから自分がさしかかる「老い」という坂を前に迷いに迷っていたのも、
そういう日本特有の空気のせいだったんだろうか。
とにかく、迷いの峠は越えた。
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