西加奈子さんの『夜が明ける』、はじめに図書館で借りられたのは去年の5月、400ページを超える本ですから、約半分しか読了できず、返却しました。
2回目に回ってきたのが今年の2月、2週間前です。
最近読んだのだったらまだしも、半年以上前に読んだ部分はもう忘却のかなたでした。
後半を読まずに返そうと思ったのを、思いとどまってよかったです。
主人公は深沢暁・アキと俺です。
俺の名前は何だったかと前半から繰ってみましたが、最後まで名前はありません。
新潮社の特設サイトからキャッチフレーズをコピペしました。
15歳の時、高校で「俺」は身長191センチのアキと出会った。 普通の家庭で育った「俺」と、母親にネグレクトされていた吃音のアキは、 共有できることなんて何一つないのに、互いにかけがえのない存在になっていった。
大学卒業後、「俺」はテレビ制作会社に就職し、アキは劇団に所属する。しかし、焦がれて飛び込んだ世界は理不尽に満ちていて、少しずつ、俺たちの心と身体は壊れていった……。
思春期から33歳になるまでの二人の友情と成長を描きながら、 人間の哀しさや弱さ、そして生きていくことの奇跡を描く、感動作!
西さんがこの作品を書くきっかけになったのはものまねバーでの芸達者な人たちに出会ったこと、フィンランドの古いバーで見かけた身じろぎ一つしない身体の大きなおじさんのたたずまいが忘れられなかったこと、過重労働の末、命を落とした人がいたこと。貧困や格差がますます深刻な社会問題になっていることなどです。
コロナ禍は進行中で、政治とカネ問題は表ざたにはなっていない中での執筆でした。
西さんの大好きな作家、トニ・モリスンが
「小説というのは常に政治的でなければならない」
と言っていて、その意味が少しずつ分かってきたそうです。
個人の生き方がどれだけ社会的な環境・・・つまり政治に影響を受けているか。個人の苦しみは社会に直結していたんだなあと・・。
この本の結末では、まだ夜は明けていません。