この1月と2月に1冊ずつ歌集を読みました。
俵万智さんの『サラダ記念日』を読んで以来、短歌が身近になりました。
彼女の歌集はその後も折にふれて読んでいます。
日常会話で使われることばで、5・7・5・7・7にきっちりとはこだわらない文字数で、恋や子育て、日々の暮らしをうたっています。
父親を明かすことなく(読者にはね)、シングルマザーになって、その時々の子育てにふさわしいと思った場所に移り住みます。そんな俵さんの生き方も小気味いいです。
私が今年になって読んだ2冊も口語短歌です。
1冊目は『たん・たんか・たん』美村里江(青土社)。
テレビ初出演で主役扱いだったミムラ(当時の芸名)さんの月9ドラマを私は観ていました。
司法修習生の役で、少したれ目で肌の色が白く、頬と鼻の頭ほんのり紅い初々しい女優さんでした。
読書家で書評もこなしています。多才な女性で、この歌集に使われているイラストも彼女の手によるものです。
結婚、離婚、再婚を経ても、そのくりくりとした目の輝きには好奇心がいっぱい詰まっているようです。
歌集には236首掲載されているようですが、3年間で作った700首が巻末に載っています。
それはまだ読んでいません。
優等生の歌といったところでしょうか。
でも、これは破綻が無くて面白くないということではなく、その知識量と豊富な経験を駄作なく歌にできるなんてすごい!というほめ言葉^^です。
ちなみに美村さん、今年の大河ドラマ「青天を衝け」に徳川慶喜の養祖母・徳信院役で出演しています。
2月に読んだ歌集は『滑走路』萩原慎一郎(KADOKAWA)です。
昨年、同名の映画が公開され、その原作になったこの歌集を読んでみたいと思いました。
いろいろと書いてあるのだ 看護師のあなたの腕はメモ帳なのだ
巻頭のこの1首から、強く引き寄せられました。
萩原さんは都内の名門中高一貫校から一流大学に入学、苦労して卒業しながら、他の同窓生のようなエリート職業につきませんでした。つけなかったというほうが近いかもしれません。
長く続いたいじめや、それに伴うと思われる病気療養のこともあって、非正規の仕事を続けます。
非正規という名のついた章もあります。
あとがきによると、萩原さんが作歌を始めたのは17歳の秋。
近所の書店で俵万智さんのサイン会があって、彼女の短歌を読み、これなら自分でも書けると勘違いしたのがスタートだそうです。
それから15年、32歳の社会人になった萩原さんは短歌だけについていえばそうではないけれど、その他は不本意な人生だったと振り返ります。
歌集のタイトルにもなった滑走路という章には、
恋をすることになるのだ この夏に出逢いたかったひとに出逢って
きみといる夏の時間は愛しくて仕事だということを忘れる
よかった。恋もしたね。
同じく滑走路の章で、
毎日の雑務の果てに思うのは「もっと勉強すればよかった」
萩原慎一郎さんは原稿をまとめ、表紙を決め、あとがきまで書いて編集部に渡しながら、出来上がった歌集を自身の手にとることはありませんでした。
自分で命を絶ったからです。悔しいな。