新型コロナウイルスと既存のコロナウイルスとの違い。
コロナウイルスは普通の風邪のウイルスとして知られていたものが4種類ある。それ以外に2種類重い病気を発症するものがある。
1つはSARSコロナウイルス(重症急性呼吸器症候群)。1つはMARS(中東呼吸器症候群)で中東を中心にたまに流行る重傷な呼吸器疾患を引き起こすもの。の6つがあった。
今回のものはSARSコロナウイルスⅡと呼ばれ、SARSに近い系統で遺伝子の情報が非常によく似ているものである。
これは風邪のウイルスとは遺伝子的には距離が離れているものであって、表面に出ているタンパク質がSARSによく似ていて、人間の喉や肺に親和性が高い。なので細胞に入りやすい。
ビルレンス/どれほど毒性が有るか?を見ると、風邪は基本的に上気道(喉など)だけで起こることが多いが、コロナウイルスは下気道(肺など)までも増殖をするもの。ウイルスそのものが持っている毒性がやや高いという特徴がある。
性質としてはSARSと風邪のウイルスとの中間的な特色で、広がりやすさが風邪やインフルエンザに非常に似ていて基本再生産数が高い。SARSのような結構な病毒性があり、風邪のように広がりやすい、と言うコンビネーションが見られる。
論文でも報告でも出ているのが高齢者と基礎疾患のある人が重症化しているが、子供はかなり感染はしているようだが重症化はしていない。しかしこの理由は全く分かっていない。ウイルス学的にも違いがあるかもわからないし、どういった状況で子供が軽い症状であるのかと言う事も分かっていない。
重症化人が多いのが高齢者。免疫の状態が関係したとも考えられる。
子供の方がかかりやすい病気もあれば、大人がかかりやすい病気もあり、大きな違いは免疫の状態。
水ぼうそうは子供がかかりやすく、湿疹も出るが、大人であれば熱が出る程度。リンゴ病であれば子供はほっぺたが赤くなるだけで済む場合が多いが、大人だと重症化し入院したりするケースもある。
身体とウイルスの反応性の違いに影響されているところがあるので、コロナウイルスに関しても免疫性の反応の仕方の違いが考えられる。
新型コロナウイルスの治療薬の検査は始まっています。これは”0”から作られるものではなく「スイッチ」と言って今まで開発されていた薬の用途を変えて効くかどうか試している。
SARSの時もそうだがウイルスと言うのは共通でもっている仕組みがあり、自分自身を増やす部品が似ていたりする。
HIVにすでに開発されていた薬が効果が有るか?と言う様な試験はSARSの時のもされていた。後方薬が結構あったということ、ただSARSは2003年に収まったということがあり人体実験はされていない。ただしMARSはいまだに症例が出ているような状況なので、少し人体実験はされていた。なのでそこでも効果が有った薬を積極的に取り入れて、新型コロナウイルスを増やす部品であるタンパク質の形が直ぐに決められた。3次元の構造解析を行った。それで薬が酵素にどのように当てはまるか?と言うのがかなり早い段階でコンピューターシュミレーションによって分かり、候補で出てきたものを試験管の中で実験をし、これが効きそうだという候補もすぐにリスト化された。
これは中国の仕事が早かった。なのでそういった物を使用し中国では臨床試験が開始されている。スイッチすると言う意味では薬の検討は早く進んでいる。
ウイルス自体の情報、設計図のゲノムを読み込む速度がテクノロジーの進化で1000倍以上の速さになっている。なおかつSARSと似ていたので、SARSの構造と言うものは決めていたが、それの類推やシュミレーションの技術も上がっているので、すぐに情報は出た。
多くの治療法は肺炎に似ていて支持療法が主流で、先ずは酸素投与、与圧を加えて肺を膨らませる、気管挿管をし人工呼吸、其れでも効果が無い場合は体外肺、人工心肺で機械に置き換えるエクモとなるが、それがどれほど活用できるかは国や医療機関によって差が有る。
日本の場合でもエクモを使える病院は沢山あるが、感染症と言う状況でエクモを使える医師、看護師、人材と機械、感染症対応のICUの部屋、そういったリソースを考えると武漢、蘇州のウーハンほどの大都市であってもすべての環境が整っているのは多くはなかったと考えられる。
日本の東京都内で直ぐにエクモを使用できた病院は2.3か所と言われています。コレは最重症者数の数にもよりますが。もちろん各医療機関でキャパシティーを上げる努力はしているが、いかんせん人材の絶対数の問題で直ぐには人材はそろわないというのが現実でもある。
インフルエンザでもエクモの適用が有ったことはあるが、本当の命の危機、最重症者のみに使用されるので、それまでは人工呼吸器によって再生しようという医療が行われている。
同時に多発することは想定できないが、万が一起こった場合は医療のキャパシティーを超えることが考えられる。ウーハンではそのような状況が起こったことが想定できる。
インフルエンザで亡くなる方は高齢者が多い。
高齢者は余力、体のキャパシティーが残っている力が少ないので、肺炎になれば若い人であれば、なんとか人工呼吸に入らない人も、高齢者であれば人工呼吸器に入ってしまう。人工呼吸器は一過性で有ってその時だけ呼吸を助けてはいるが、根本は自分の体が回復して自発的に呼吸が出来なくてはいけない、回復が無く肺の状態が上がらなくて、そのまま人工呼吸器依存になってしまい、2次感染を起こして亡くなってしまう、違う菌が入ってしまうことが有る。外から無理やり空気を送り込んでいるので、ばい菌も送り込んでしまう。結果インフルエンザ肺炎と細菌性の肺炎が複合してしまう。
また全身状態が悪くなり人工呼吸器を付けていると当然食事も口腔からは摂取出来ないので、点滴のみで過ごしている場合は、全身の免疫状態が悪くなるので、全身感染症を起こしたり多臓器不全を起こしたりと悪い方向へ進みやすい。
これは高齢の方々には良く起きている。
コロナウイルスはその数が若干ではあるが多いと考えられる。
今回のコロナウイルスはインフルエンザとは同等の感染力が有ると考えられ、なおかつ重症化率がわずかに高い、そこから考えられるのは同数が感染した場合に重症者数が多いということ。そうなると医療機関のキャパシティーに影響を与えかねないので問題が生じる。
コロナウイルスは再感染よりは再燃に注目されている。再感染は1度身体からウイルスが消えてしまった後に再度、人からウイルスをうつされるケースだが、一度ウイルス量が体の中で減る、かなり免疫によって抑え込まれて症状も消える、その時にPCRの検査をしてもウイルス量が少ないので、偽陰性になる。ところが後で体内に残っていたウイルスが再び増え始めるというケースも考えられなくはない。
これは風邪のケースでもある。胃腸炎でも二峰性と言い一度収まったのに再燃するというケースである。可能性はある。
コロナウイルスもインフルエンザウイルスもゲノム情報がRNAに書き込まれている。人間のDNAとは違いRNAと言うのはエラーが起こりやすく変異が起こりやすい。2重螺旋ではなく1重螺旋なのでエラー訂正がされない、2重だと片方の螺旋が訂正するのである。なので非常に変異が多い。
そこでRNAが問題になってくるのではあるが、変異が多い部分として一番大事なのはウイルスの表面に突起が出ている。その突起の部分がワクチンの標的になる。ワクチンは突起を攻撃して細胞に入らないようにする。その突起がどれほど変異がしやすいのかと言う事が非常に注目されている。
インフルエンザの場合は突起が2種類あって片一方がワクチンのターゲットだが、ホットスポットと言われて変異しやすい部分でもあると言われている。それがワクチンのターゲットとしやすいところなので、今のところ、突起にあるヘッドと言われる部分に対するワクチンがインフルエンザでは用いられている。そこはすごい勢いで変化するので、ワクチンは当たらないことが多い。なのでいまはあまり変異の無い突起の茎の部分ストークに対して効果が有るワクチンの開発が世界的に進められている。
それに対してコロナウイルスの突起と言うものは、変異はインフルエンザよりマシと言われている。なのでワクチンを1度開発するとSARSの場合は変異が少なかった事が分かっているので、インフルエンザよりは有効になる可能性が高い。
そうなるとワクチンは非常に効きやすいものが開発される可能性が高い。
(NIH/National Institutes Health/米国国立衛生研究所、アレルギー感染症研究所、博士研究員 峰宗太郎/ミネ ソウタロウ/病理医、薬剤師、研究者/ウイルス学、免疫学)