原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

産んで(生まれて)困る命などない!

2013年05月16日 | 時事論評
 最近、NHKテレビが番組の合間に不定期に流しているスポットCMの中に、大いに違和感を抱かされる内容のものがある。

 それは今現在巷で大流行中の「風疹」の予防接種を国民に奨励するCMなのだが、以下にそのスポットCMを原左都子の記憶のみに頼り、理解している範囲内で紹介しよう。
 現実に存在すると思しき(それとも役者が演技しているのか? に関しては不明)若夫婦とその子ども二人が登場する。 母親である女性が妊娠中に風疹に感染した事により、産まれてきた第二子である赤ちゃんが耳が聞こえない等の先天的障害を余儀なくされているとのことだ。 テレビ影像によると何とも可愛い女の赤ちゃんであり、まだ幼いお兄ちゃんも含めて家族全員で赤ちゃんを可愛がっている風景が映され、一見すると至って幸せそうな一家だ。  ところが産んだ母親氏曰く「私が妊娠中に不注意だったばかりに子どもに障害を負わせてしまっている。風疹感染を避けるべくワクチン接種をしていればこんな事にはならなかった…」何たらかんたら…
 そこで、「国民の皆さん(特に20代から40代に感染者が多いらしいが)風疹ワクチンを接種しましょう!」 とのNHKの風疹ワクチン接種奨励スポットCMである。
 う~~~ん、ちょっと待ってよ、NHKさん。
 このCM影像を見せられて、大いなる違和感を抱かされる国民が存在する事実に配慮できているのかなあ?

 ここで私事に入ろう。

 「原左都子エッセイ集」バックナンバーで幾度となく公開してきているが、我が娘は出産時のトラブルにより仮死状態にて出生し、若干(あくまでも“若干”の範疇であるが)の不都合を抱えてこの世に誕生している。
 我が娘は染色体異常児でもなく、上記NHKスポットCMのごとく妊娠中に私が「風疹」に罹患したせいでもない。 そうではなく、“出産時のトラブルによる仮死状態がもたらした瑕疵”以上の医学的根拠は不明のまま現在に至っている。  
 原因は分からず終いであるにせよ、健常な状態で子どもを産んでいない私であるからこそ、上記スポットCMに出演している母親氏の発言内容である、妊娠中に風疹に罹患した事に対する後悔の念やそれにより障害児を産んでしまったという“やり切れない思い”の程は理解できる。

 
 それを記述した上で、私論に移ろう。
 このスポットCMに関して、私は幾つかの視点・観点より違和感及び不快感を抱かされるのだが、それを順を追って以下に列挙しよう。

 第一点は、(この一家が実在の家族であるとして)何故NHKの取材を受け保護者である両親がそれに易々と応じて当該障害児と共にテレビCM出演などをしたのかという点である。
 我が意地悪視点から歪曲した見方をすると、出演ご夫婦は第二子が障害を抱えて生まれ出た事に対して、自分達は一種の“医学的犠牲者”であると世間に吹聴したいのかとも受け取れるのだ。
 と言うのも、私自身が我が子誕生直後に“医学的犠牲者”思考に走り、出産担当病院や医師の過失責任を問う等の原因追究をしようと魔が差した時期があるからだ。 ただ私の場合、思考の転換は早かった。 そんな事に時間とカネを割いたところで我が子生まれ持っての事情はどうしても消し去れない。 親である私が全身全霊を注ぐべきは、今後この子を立派に育てていく事以外にあり得ないと早期に気付き、それを日夜実行し続けてきている。
 このNHKのCMを見て、「そうなんだ。それならば私も風疹ワクチンを接種しよう」と考えた国民もいるであろうか?!? 
 ところが、申し訳ないが私の感想は違った。 障害児を授かった親とは(見返りが望めない)一般世間相手に“お涙頂戴”している場合ではないし、そんな暇など一切ないはずだ。 今親としてやるべき事とは、子どもが赤ちゃんである早期段階から生まれ持った障害に関する詳細な知識を得てそれに出来る限りの対応を施す事でしかあり得ないのだ。

 原左都子がNHKスポットCMを見て抱いた違和感の第二点目を、次に呈示しよう。
 上記第一点とも重複するが、CMのご両親は何故NHKの取材に応じて、この世に生まれ出た第二子が「障害」を抱えている事実をマスメディアを通じて日本全国に大々的に公開してしまったのだろう?  その種の行動を取ると、政府や自治体をはじめ日本国民皆が真心を持って障害を抱えた我が子の将来を見守ってくれるとでも思ったのであろうか?
 厳しいが、今の時代の現実はそうではない。 “他人には無関心”が常識化している現代の社会の現状だ。
 私自身がこの点に早期に着眼した。 我が子小学校入学時に持って生まれた事情を学校に公開したのを最後に、小学2年時以降は“あえて事情を伏せる”手段に切り替えた。 
 何故私が、我が子が抱えている事情に関して学校等“小社会”への公開を伏せる手段に踏み切ったのかと言うと、現状の社会とは私の想像を遥かに超えて「障害児」に関する理解が進んでいないと判断した故である。 むしろ公開することによる世間からの“誤解”等の弊害こそを回避するべきと決断した。 その後は親である私の「お抱え家庭教師」力一本で、国や自治体による“障害児特別枠”になど一切頼らず我が子の実力をとことん鍛え上げ、現在大学まで進学し学業に励んでいる我が娘である。
 NHKのスポットCMに出演したご家族の「風疹障害児」の赤ちゃんが今後社会の理解を得られるとよいのだが、実際問題として、悲しいかな今の時代それ程市民の良心が満ち溢れてはいない寂しい現状を身を持ってお伝えしたい思いである。 結局は我が子を(障害児の場合は特に)愛してその命を守り抜く最終責任は親でしかない現実と言い切れよう。
 要するに我が子の障害に関して世間に公表する事は、今の時代背景の下では危険性ばかりが伴うとの事だ。 


 上記NHK風疹CMに対する原左都子視点・観点の違和感第三点は、バックナンバーにおいても再三指摘し続けている通り、公的放送局が国民に対して「ワクチン接種」を大々的に煽ること自体に関する是非である。
 NHKは自社の「かぶんブログ」なるネット情報に於いても、庶民相手に風疹ワクチン接種を煽っている。 以下にその冒頭部分のみを紹介しよう。
 妊娠中の女性が感染すると赤ちゃんに障害が出るおそれのある風疹は感染の拡大に歯止めがかからず、患者数はこの4か月で5000人を超え去年の同じ時期の34倍に上っていることが分かりました。  熱や発疹などの出る風疹は患者のせきやくしゃみを通じて広がり、妊娠中の女性が感染すると赤ちゃんの目や耳、それに心臓などに障害が出るおそれがあります。
 
 これを全面否定する訳ではないが、元医学関係者の原左都子としてはワクチン接種による副作用被害に関しても同時に(せめて片隅に)公開して欲しい思いだ。

 
 最後に表題に戻るが、この世に産んで(生まれて)困る命などないはずである。
 たとえそれが母体「風疹感染」故に障害を持って生まれた子どもであっても、尊い命であることに間違いない。
 医学確率的には「風疹感染児」とは極少の障害であろう生命体の誕生を、何故それ程に国家は(NHKとのマスメディアを通してまで)拒否したいのか?  これこそが国家の「命の選別」であり、我が身息災の“医療との癒着故のワクチン接種奨励”経済政策でしかあり得ないと私は考察する。