原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

再掲載 「『秋入学』が本当にグローバルなのか??」

2024年08月12日 | 教育・学校
 パリオリンピックもあっという間に閉会式を終えて。 
 世の中は、世界規模で既に「オリンピック」など忘れ去っているかのような印象がある…


 そんな折に本日の我がエッセイに於いては、またもや“再掲載”ものを披露させていただこう。
 
 それでは早速、以下に2012.01.25公開の冒頭表題のエッセイを以下に引用する。

 学校の「9月新年度制」への移行に関しては、何もこんな時に突然東大が言い出さずとて、ずっと以前より教育界に存在していた議論である。
 以前より展開されていたこの議論の趣旨とは、欧米諸国の学校と足並みを揃えようとの意図であったと原左都子は認識している。

 早ければ5年後にすべての学部を「秋入学」制へ移行したい東大の趣旨とは、海外からの東大への留学生、及び東大生の海外への留学に対応するのが第一義との報道である。
 ただし、東大だけが5年後に「秋入学」制へ移行したところで社会全体の整合性が成り立つ訳がない事はさすがに東大も認識している様子で、政界や産業界、他大学をも含めて社会全体を巻き込んだ議論に発展させるべく魂胆で現在東大は動いているようだ。 
 (そして落ちぶれつつある民主党政権幹部も、東大の「秋入学」への意向に賛同しているとの報道も耳にする…)

 ここで一旦、原左都子の私論を述べさせていただこう。

 東大さんよ、あんたはこの期に及んで相変わらず“日本国家のオピニオンリーダー気質”が抜けないようだなあ。 その根拠不明の“自信”は一体何に基づいているの??? と言いたくもなるというものだ。

 世を見渡すと世界規模で政治経済危機状態、そして昨年国内に勃発した大震災も発生後もうすぐ1年を迎えようとしている今尚その復興がままならない状況下にある。 
 野田政権は背後の官僚に指示されるがままに、その根拠の詳細を国民に提示することもなく“消費税を是非共上げねばならない!!”と虚しく息巻く始末だし… 
 そんな政権がこれ程混乱状況の最中に東大の「秋入学」に賛同したところで、今国民がそれになびくとでも思っているのだろうか……
 (消費税増税議論の行く末に関しては、今後の国会に於ける野党からの合理的反論に期待したいものであるぞ。)

 このように世界も国内も大混乱状態の時期に、何故東大は 「秋入学」 などという(原左都子に言わせてもらうと)“二の次”でよい議論を持ち出して世間を騒がせたかったのだろうか??

 東大の言い分を以下に紹介しよう。
 日本の大学生の海外への留学は近年減る傾向にあるが、東大が卒業生に取ったアンケートでは3人に1人が海外留学を希望していたと答えたにもかかわらず、実際に留学した学生は1割未満である。 それは就活や留年の心配が大きかった故であるため、「秋入学」によりこれを解消して留学を増やし国際感覚を育みたい、との事である。 
 (原左都子の私論としては以下は東大の“言い訳的補足”でしかないと判断するのだが)、海外からの留学生も減少の一途である。 これは中韓などの主要大学に遅れを取るものだ。 世界大学ランキングで東大の格付けは高くない。 東大が世界に選ばれる大学になりたいとの狙いもある。

 再び、原左都子の私論に戻ろう。

 そんなくだらない見栄、体裁の理由で日本の“一大学”に過ぎない東大が突然提唱した「9月新年度制」を、倒壊寸前の民主党政権が賛同しているからと言って、大幅な社会システムの移行をこの世界的政治経済危機の時期に強制され更に混乱させられる事態など避けたいものであるよねえ、国民の皆さん。

 東大さん、現在東京大学の世界ランキングが低いのは貴方達の“自己責任範疇の問題”に過ぎないでしょ? 
 現在国立大学も独立法人として機能していると私は認識しているのだが、その範囲内で国民に迷惑をかけることなく、今後もう少し自助努力してみてはどうなのよ??

 ここで少し私事を語ることにしよう。
 
 原左都子は1990年前後の頃、30代にして再び日本の首都圏に位置する公立大学及び大学院に通学した経験がある。
 1970年代に我が郷里の過疎地の大学では経験し得なかった事象を、バブル期である90年前後の上記の大学に於いて経験できたのだ。

 それは如何なる事象であるかと言うと、海外からの少なからずの留学生の存在である。 (ただし、当時のその留学生とはアジア方面からに限定されていたが…)  おそらく政府の国際交流の目的意図が強いのであろうと当時解釈していた私だが、とにかく日本人の学生数が少ない我が大学院に於いて、それよりも多いと思しきアジア諸国の留学生がキャンパスに多数存在していたものだ。 そのお陰で、日本語が流暢なアジア諸外国の留学生との交流も楽しめた私である。 
 ところが当時より一部の日本人学生達の水面下で囁かれていた事実がある。 「彼らは日本語は流暢だが学問レベルの程はどうなのだろう?  我々と同質程度に修士を取得できる専門学力があって留学してきているのだろうか? そうではなくて単に国際親善目的で政府及び大学が留学生として特待しているだけの存在なのではなかろうか?  そうだとすれば大学研究室現場でそれに付き合わされる教官も大変だろうし、我々の学問にも影響を及ぼすよね……」

 いえいえ、“天下”の東大の留学生とは今後世界で活躍するべく人材を集結させている事であろう!?? 
 そうではなくて原左都子の過去の経験通り、やはり政府が国際交流の目的で単に日本語力のみがある留学生を日本国内の国公立大学に配置する事により、学問界に於ける日本の威厳を形のみ保とうとしているだけの話なのではなかろうか??

 東大から諸外国へ留学したい意思ある学生の中には、もちろん本気で世界最高レベルの科学や学問を志し今後世界の最先端を目指している学生も存在することであろう。
 それには送り出す側も迎える側も是非学問力を持って答えるべきだ。  それが東大に限った話ではないのは当然の事でもある。

 ただ今回の東大からの提案である「秋入学」は、やはりその真価を世間に問う時期を誤ったものと原左都子は判断せざるを得ない。

 「秋入学」を実行する事とは、現在の東大が認識しているがごとく政界、経済界、教育界等の日本国中のシステムすべてを巻き込まねば成り立つすべもなく、現在の国内情勢はその状況に程遠いところにあろう。

 そして東大が学生を送り込みたい諸外国(米欧州アジアその他の地域)の大学とて、今現在は混乱状態なのではあるまいか?
 そんな所にちょっとばかし英語が出来る学生を送り込んだとて、何の能力の育成が可能と言うのだろう?

 ここはもう少し大学等の教育組織としては、世界が落ち着く事を見定めるべきではなかろうか?
 何も日本の教育界が今現在無理やり「9月新年度制」になど移行せずとも、自身に確固たる実力がある若者は自らのパワーで諸外国に羽ばたいている現状と私は捉えているのだが。
 諸外国からも、そんな実力派の若者が我が国で新天地を開いている場面にも出くわすしねえ。

 学校の新年度など、申し訳ないがいつ始まろうが原左都子にとってさほどの困惑もないのが事実と言うものよ。
 本エッセイの最後に紹介すると、諸外国の企業はいつ何時でも有能な職員を採用しているようで、日本のような「4月新卒者一斉採用」という“一種特異的慣習”など無いという話でもあるぞ。
 
 この本来の“実力主義”が日本で模倣できてこそ、東大も含めた日本の学校もやっと 「9月新年度制」 に真に移行できるということじゃないのかなあ。 

 (以上、「原左都子エッセイ集」2012.01公開のバックナンバーを再掲載したもの。)




 2024.08現在に話題を戻そう。

 大学に於ける「秋入学」問題に関して。
 国内では、今となっては何らの話題にも上っていない感覚がある。

 それは何故であろうか??

 この課題に関しては、ネット上にて多数の見解が存在する。
 その中から、つい先ほどネット上で発見したあくまでも「一見解」を以下に紹介しよう。

 大学の秋季入学には、インフルエンザの流行や積雪などを回避できるというメリットがある一方、高校卒業からのギャップや就職活動など既存の社会システムとの折衷が難しいというデメリットもある。 秋入学に必要な手続きの変更やコストの増加、移行期間中の不公平感や格差の生じる可能性、年間の学校行事や大会等の時期変更が必要になることなどが挙げられる 。

 (以上、ネット上よりあくまでも“一見解”を引用したもの。)


 そうだとして。

 我が国日本においては、一時の「秋入学騒動」が既に消え去っている事実であることには間違いないであろう。

 最後に原左都子の見解を少しだけ述べると。

 まさに我が国日本に於いては、既に「4月入学制度」が板についているし。
 個人的見解として、あの桜咲く時期に新入生たちが学校の門をくぐる風景は、何にも増して捨てがたい趣がある。

 それよりも何よりも。
 国民が世界競争力を維持可能な学力・能力を培うに当たり、何が肝心要かと言えば。
 子供たちの学習能力を大人が主体となって十分に理解・把握しつつ、それを上げることに教育者を始めとする大人どもが邁進するべきに決まっている。

 その努力を大人どもが何らせずして。 
 単に学校の入学時期を変更するとの思惑のみすぼらしさに、辟易とさせられるばかりだ…


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