◎票を買うこと、政策を買うこと
九月一二日の日本経済新聞「大機小機」欄は、「健全な資本主義と献金の矛盾」と題して、経団連の企業献金再開を批判していた(執筆は「カトー」氏)。
これについて、当コラムは、翌一三日、「9月12日の『大機小機』欄に拍手」と題して、「大機小機」欄の論旨に賛同すると同時に、「こうした重要な問題は、即座に、しかも堂々と『社説』で主張すべきである」などの注文をつけておいた。
その後も日本経済新聞は、伊藤忠商事の丹羽宇一郎〈ニワ・ウイチロウ〉氏が経団連の政治献金再開に反対していることなどを報じ(九月二四日?)、経団連の政治献金の再開を批判している。
昨日の同紙「経営の視点」欄は、「企業献金、論争の半世紀/経団連再開、賛同少なく」と題し、経団連の政治献金再開問題を扱っている。署名は、安西巧編集委員。
企業献金をめぐる半世紀にわたる論争をまとめ、経済界においても、政治献金再開に批判的な意見が少なくないことを報じている。客観的な記事の形を装っているが、明らかに、経団連の政治献金再開を批判する論調になっている。
政治献金に否定的な財界人も少なくなかった。有名なのは74年に経団連会長に就任した土光敏夫〈ドコウ・トシオ〉氏だ。戦後最悪の金権選挙といわれた同年の参院選で自民党は経団連経由で260億円の献金を調達。激しい批判を浴びた土光氏は「企業からカネを集めているのは花村仁八郎〈ハナムラ・ニハチロウ〉(政治献金担当の経団連専務理事、後の副会長)個人で自分は知らない」と釈明し「次の正副会長会議」で経団連経由の献金をやめると提案する」と発言。言葉通り数日後の会議で本当に「廃止」を決議した。
企業献金は利益を得ようと思ってやれば贈賄だし、利益はないがカネを出したといえば背任になる」。経済同友会終身幹事を務めた元日本火災海上保険(現・損害保険ジャパン日本興亜)社長の品川正治〈シナガワ・マサジ〉氏は政治献金に伴う経営リスクをこう表現していた。
編集委員がここまで書くのであれば、日本経済新聞は、その「社説」で、ハッキリと、経団連の政治献金再開方針を批判すべきである。
昨日、支持者にウチワを配った法務大臣が辞職した。国民あるいは議員は、数百円(?)のウチワであろうとも、「票を買う」ことは許されないということを学んだ。何百億円(?)の政治献金で「政策を買う」ことは、大がかりな「贈賄」である。万一、政策を買うことができなかった場合は、あるいは、政策を買う意思がない場合は、重大な「背任」ということになる。どちらにしても許されることではない。日本経済新聞は、そのことを、「社説」で明確に主張すべきではないのか。
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