◎地方のどこに創生の余力があるか
日本経済新聞の「大機小機」欄が、「安倍政権の地方創生は衰退する地域社会にあめとむちで対応しようとしている」と指摘したのは、今月一〇日のことであった。
岐阜県にお住まいの柏木隆法氏から、個人通信「隆法窟日乗」を拝受したのは、その二日前の八日のことであった。一〇月一日から六日までの分である。
その「10月6日」の項に、次のようにあった(通しナンバー183)。
拙の町は伊勢湾台風で相当の被害があった町である。最近は御嶽山〈オンタケサン〉の噴火もあり、濃尾大震災では山崩れが起きた。そのころはお互い助け合う相互扶助の精神所謂が自然に発揮したが、人手不足のためにそうもいかなくかった。安倍晋三は「地方創生」というが、どこにその創生の余力があるのか。既に手遅れの状態に陥っている。こうなつたのも選挙の区割りが小選挙区比例代表制になったために地域割が徹底して浸透したためである。町内ごとに対立し、敵対する雰囲気が定着したことも要因一つと考えられる。また新婚家庭はそれぞれ独立した家を持ち、郊外に住むようになった。町の中心部は寂れ、シャッター通りどころか建物も壊して駐車場になってしまった。
地方には、すでに「創生の余力」はないという。まさに「地方」から発信されたものだけに、その指摘には実感がこもっている。
柏木氏は、地方における「人手不足」の実態を、たとえば次のように描写する(いずれも、通しナンバー183からの引用)。
○神社は建物を取り囲む玉垣か崩れて危険な状態になってきた。業者を入れて大々的な修理をしようにもこの不景気、募金しても寄付金は集まらない。稚児行列で稼ごうにも肝心の子供がいない。結局、古くからある家に割当して集めようとしたが、拙のような無信心者は協力なんかするわけはない。
○地方では青年団、婦人会、消防団なんかは若い人は集まらない。青年団、婦人会は二年前に解散した。残るは消防団だけだが、これも老人会になってしまった。
特別支援学校の生徒が行方不明になったときも、人手不足で「山狩り」ができなかったという。
○毎日駅から通学バスが出ているので途中下車をするところはない。徒歩では通えない辺鄙な場所にある。それがどうしたわけか一人山中に迷い込んで行方不明になってしまった。早遠、警察から3団体に山狩りの要請がきたが、二団体はなく、消防団もヨボヨボ老人ばかりで山狩りなんかとんでもない。結局、各町内会長に要請して人手を集めようとした。集まったのはたった6人、中に霊感の強い高校生がいて、ガショウ神(?)のお告げで行方不明の娘は見つかった。これで万事よしよしということにはならなかった。危機管理の問題が浮上してきた。
日本経済新聞の「大機小機」欄には、たしかに、「衰退する地域社会」という視点がある。しかし、今日すでに、地方に「創生の余力」はないという認識は、たぶん同欄にはない。もちろん、地域社会の衰退が、「危機管理」という問題にまで及んでいるという認識も。
「大機小機」欄における、「安倍政権の地方創生は衰退する地域社会にあめとむちで対応しようとしている」という指摘は、まさにその通りである。しかし、いま重要なのは、地域社会の衰退の実情を正しく認識することではないだろうか。その認識なしに、安倍政権の地方創生策を批判しても、説得力はない。
今日の名言 2014・10・14
◎「地方創生」というが、どこにその創生の余力があるのか
岐阜県在住の作家・柏木隆法さんの言葉。「隆法窟日乗」の2014年10月6日の項に出てくる。上記コラム参照。
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