礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

『日本会議の研究』の販売禁止に思う

2017-01-08 04:01:43 | コラムと名言

◎『日本会議の研究』の販売禁止に思う

 昨七日の毎日新聞電子版によれば、東京地裁は今月六日、菅野完〈スガノ・タモツ〉氏の著書『日本会議の研究』(扶桑社新書、二〇一六年五月一日初版第一刷)に対し、名誉権の侵害を認めて販売を禁止する決定をおこなったという。
 これは、重大な意味を持つニュースだと考える。
 まず、毎日新聞電子版の記事を引用してみよう。

ベストセラー「日本会議の研究」販売禁止の仮処分決定
毎日新聞2017年1月7日 07時10分(最終更新 1月7日 08時43分)
 ベストセラー「日本会議の研究」で名誉を毀損(きそん)されたとして、日本会議の源流とされる宗教法人の元幹部の70代の男性が出版元の扶桑社(東京都港区)に販売差し止めを求めた仮処分で、東京地裁は6日、名誉権の侵害を認めて販売を禁止する決定を出した。
 関述之裁判長は「販売を継続することで男性は回復困難な損害を被る。問題の部分を削除しない限り販売してはならない」とした。
 同書はノンフィクション作家の菅野完(すがの・たもつ)氏が執筆し、改憲運動に力を入れる日本会議の沿革や活動内容を検証した。昨年5月発行で15万3000部を売り上げた。
 決定によると、同書は宗教法人が1970年代に青年会機関誌の部数を拡大する運動を展開し、青年会の学生が消費者金融から借金して機関誌を買うことを余儀なくされたと記載。取り立てが激しい時代だったことから「結果、自殺者も出たという。しかし、男性は馬耳東風だった」と記述した。
 決定はこの部分について「男性の社会的評価を低下させ、自殺者が出たことを裏付ける客観的資料はない。男性にも取材しておらず、真実でない蓋然(がいぜん)性がある」と判断した。男性側は他にも5カ所について名誉毀損を主張したが、いずれも退けた。【以下、略】

 記事を読んだだけでは、わからないことが多い。「日本会議」とは何か、その源流とされる宗教法人とは何か、訴えた男性は、どういう人物なのか、その男性は、その宗教法人の「元幹部」とあるが、今も、その宗教法人に属しているのか、など。
 この男性の名前は、『日本会議の研究』の第六章「淵源」に出てくる。名前が出てくるというより、同書の第六章全六十四ページは、この人物について論じた章である。もちろん実名で論じられている。ちなみに、敬称はついていない。
 男性が販売差し止めを求めた理由、あるいは、東京地裁が販売差し止めの仮処分を決定した理由の詳細については、まだ把握していない。記事によれば、東京地裁は、「結果、自殺者も出たという。しかし、男性は馬耳東風だった」という記述に関し、事実である客観的な資料がないと判定し、原告男性の名誉権の侵害を認めたもようである。男性は、これ以外の五箇所についても、名誉毀損を主張したが、これらの主張は退けられたという。
 さて、当該の記述は、同書の二八九ページに出てくる。原文では、以下の通り。

 土台無理がある100万部達成のために、青年会に所属する学生や社会人1年生は消費者金融に手を出してまで『△△△△』を買うことを余儀なくされた。当時、消費者金融の取り立ては社会問題化していたほど苛烈だった。結果、自殺者も出たという。しかし、そんなことには〇〇は馬耳東風であった。

 △△△△には、当該教団の機関誌名、〇〇には、原告男性の姓が入る。原文では、ともに実名である。
 東京地裁の仮処分決定には、当時、当該教団が、機関誌「100万部達成」運動があったのか否か、この運動があったとして、この運動に男性が関与していたのか否か、この運動にともなって自殺者が出ているか否か等について、地裁の判断が示されているはずである。
 もし、自殺者が出ていない場合には、「そんなことは〇〇には馬耳東風だった」の部分は、不要な記述、あるは、男性の名誉を傷つける記述と言えるかもしれない。しかし、そのことが、ただちに、「販売禁止」に結びつく理由となったのかどうかは、記事からは、よく読みとれない。
 いずれにせよ、これらのことについて、マスコミ各社の続報を待ちたい。

*このブログの人気記事 2017・1・8(7日、『日本会議の研究』が話題となる)

コメント (1)
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