◎ヒロシマで『民法典との訣別』を購入した吉田さん
舟橋諄一の『民法典との訣別』は、惇信堂(大坪惇信堂)という福岡市の出版社から刊行されたが、印刷は東京都牛込区の大日本印刷だった。著者の舟橋諄一は、当時、九州帝大法文学部の教授であり、福岡市菰川西町に住んでいた。東京で発行された自著を確保するために、上京する教え子の手をわずらわせたことを、「私の八月十五日」(初出1976)に書きとめている。
一方で、この本の一部が、配給ルートに乗り、読者の手に渡ったことも、ほぼ間違いない。私が架蔵している『民法典との訣別』は、表紙のあとの白ページのところに「吉田」という認印が捺されており、裏の裏表紙の前の白ページのところには、青鉛筆で「1945.5.9/Hiroshima」という書き込みがある。吉田さんという旧所有者が、その日に広島で(たぶん広島市内の書店で)、この本を買い求めたのであろう。
吉田さんというのは、几帳面な方だったらしく、赤鉛筆と青鉛筆、そして定規を用いて、傍線を引きながら、この本を読み込んでいる。
さて、本日は、『民法典との訣別』の「目次」を紹介し、明日は、その「序」を紹介してみたいと思う。
目 次
第一 民法典との訣別(シュレーゲルベルゲル)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥一
第二 『民法典との訣別』論について‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥五三
一 序 説‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥五五
二 シュレーゲルベルゲル教授所論の要約‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥六三
(一)『民法典との訣別』論の内容‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥六三
(二)右の所論における論点の要約‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥八九
三 訣別論の客観的意義‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥九三
(一)序 説 ―― 民法の本来的性格‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥九三
(二)民法非難の各論点について‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥九七
(三)いはゆる革新立法の構想について‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥一〇七
四 結 び 民法典訣別の限界と民法の将来‥‥‥‥‥‥‥‥‥一一七
附録 レンホフ教授の私法変遷論
一 序 説‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥一二五
二 レンホフ教授所説の紹介‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥一二九
三 同教授の所説を資料とせる私法変遷論‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥一七七
(一)実質関係の変動に伴なふ私法の変遷‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥一七八
(二)私法の実質的変遷に対応する法技術の変化‥‥‥‥‥‥‥二四〇
四 結 び‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥二五三