◎無声映画『影法師』と『狂つた一頁』
ここ数日、大正時代の映画のことについて触れている。久しぶりに、アテネ文庫『映画作品辞典』(一九五四)を引っぱり出してみると、たとえば次のような作品が紹介されている。いずれも無声映画である(この辞典では、*印は無声映画を示す)。
影法師*(日.マキノ.1925) 影法師と称する美男の義賊が,悪人どもを相手に痛快な活躍をする時代劇.売出し当時の阪東妻三郎〈バンドウ・ツマサブロウ〉に加えて,月形龍之介,高木新平,マキノ輝子の配役で,マキノ専売のシリーズものになつた.後,市川歌右衛門もこれを作ったが,第一回の「影法師」は寿々木多呂久平〈ススキダ・ロクへイ〉脚本,二川文太郎〈フタガワ・ブンタロウ〉監督.
狂つた一頁*(日.新感覚派映画連盟.1926 精神病院の小使だつた老主人公の過去と現在を交錯させた心理描写を,当時文壇的に流行した,いわゆる新感覚派手法で描いたもので,ドイツ映画のキャメラの主観的表現に影響を受けている.川端康成が原作を提供し,衣笠貞之助〈キヌガサ・テイノスケ〉が監督,井上正夫主演,高瀬実共演.
残念ながら、いずれも鑑賞の機会を得ていない。こうした古典的作品が、簡単に見ることができない状況は、この辞典が編まれた当時から今日まで変わっていない。
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