◎今、事の是非善悪を論評する自由を持たない(富岡福寿郎)
富岡福寿郎著の『五・一五と血盟団』(弘文社、一九三三)を紹介している。
本日は、著者による「巻頭に」という文章を紹介してみたい。なお、本書における巻頭の構成は次のようになっている。
扉「五・一五と血盟団/水戸 弘文社 発行」
題字「匪石不可転」頭山 満
題詩 菊池謙二郎(仙湖謙)
序 風見 章【一昨日、紹介済み】
序 石川 浅【昨日、紹介済み】
グラビア(写真) 一六ページ
「巻頭に」 富岡福寿郎(如夢)【以下に紹介】
目次
巻頭写真目次
巻 頭 に
五・一五事件、血盟団事件、二つながら茨城より出でゝ茨城に事を謀られた、いはゞ我等の周囲によつてたくらまれたものである。事の是非善悪はこれを批判しこれを論評すべく、今我等は自由を持たない。しかしながらこの二大事件を、歴史的な大きな事実――しかも我等の郷党において醸成された、驚天動地の大業を究めてその実相を明かにし、身命を擲つて所信に殉ぜんとした彼等の心事を正しく考へ、正しく省みることは非常時下の国民の一つの義務だといつてもよいではあるまいか。本書を公にしたゆゑんである。
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一代の文豪徳富蘇峯翁は彼等が法廷の弁を評して
《彼等の処説は、我が政党人,我が財閥人、我が所謂る支配階級人にとりては随分苦言もあり、時としては所謂る毒語もあつたかも知れない。けれども虚心平気にて、之を聴けば、彼等の云ふ所の十中七八は、何人も言はんと欲して言ふを敢てせざる所のものであつた。甚だ恥かしき申分ながら彼等によりて、我等は溜飲三斗を下した。》
と、言うてゐる。そして「更に若し我国民にして真に彼等の心事を諒とせば、何は兎もあれ、先つ第一に彼等の所信を、社会に実行せしむることを先務とせねばならぬ」とをしへてゐる。
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しかも彼等が心事の諒とすべきものあることは海軍側の判決にあたり、裁判長これを最も雄弁に物語つてゐる。たゞ我等は今しばらく彼等が真の姿を忌憚なく描出し得ざるを遺憾とするものである。
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本書出版にあたり貴重なる資料を提供された代議士風見章氏、菊池謙二郎翁、田中光顕翁秘書高井徳次郎氏、東京日日新聞記者安島誉〈アジマ・シゲル〉氏、いはらき新聞社中野緑哉氏、愛郷塾橘徳次郎氏,大槻敬三氏等に謹んで感謝の意を表する。
昭和八年新嘗祭の日 富 岡 如 夢 識
このあと、本書の「本文」の紹介に移る順序だが、明日は、いったん、話題を変える。
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