◎少年よ大空へ(陸軍少年飛行兵志願案内)
最近、雑誌『航空少年』の緊急増刊「少年飛行兵号」を入手した。第二〇巻第一〇号、一九四三年(昭和一八)九月一五日発行である。
中に、陸軍航空本部による「少年よ大空へ 陸軍少年飛行兵志願案内」という記事があった。三段組で、全二〇ページ。
リードには、「御国は、君たちの蹶起を待つてゐる/君たちの大空へ進む道はこれだ!」とある。
本文には、「爆音とどろく太平洋」「航空決戦は若鷲を呼ぶ」「金丸少尉の奮戦」「少年飛行兵となるにはどうしたらよいか」「志願の仕方」「受験準備」「受験から合格まで」などの見出しが並んでいる。
本日は、このうち、「少年飛行兵となるにはどうしたらよいか」の節を紹介してみよう。
少年飛行兵となるには
どうしたらよいか
少年飛行兵がどんなに大切であるか、祖国日本が一人でも多くりつぱな少年飛行兵を求めてゐるかを知つたら、愛国の血にたる少年は、だれでも志願せずにはゐられないであらう。
次に陸軍少年飛行兵となるにはどうしたらよいかをお話ししよう。
陸軍少年飛行兵となるには、まづ東京陸軍少年飛行兵学校か、大津陸軍少年飛行兵学校に入学するのである。たくさんの志願者の中から、心身ともにすぐれた少年たちを選ぶのであるから、採用試験がある。しかし、試験ぐらゐを恐れるやうでは、将来、敵空軍を撃滅する荒鷲の卵となる資格はない。
少年飛行兵を志願して、二度も失敗。それでもやむにやまれぬ気持から、失敗のもとであつた弱い体を鍛へあげ、三度目に見事合格。りつぱな荒鷲となつて大東亜戦争に出陣し、あつぱれ殊動を立てた少年もゐるのである。「志願者が多いから、自分などはとてもだめだ」などと考へるのは日本少年の恥である。
そこで、決心がついたら、まづ、自分が試験を受ける資格があるかどうかを、しらべてみるのである。
(イ) 年 齢
陸軍少年飛行兵学校生徒は、四月と十月の二回採用するが、昭和十九年(来年)四月採用のものは、昭和二年四月二日から、昭和四年四月一日までに生れたものである。この年齢に適してゐたら、だれでも試験が受けられる。年齢のたりないものは、時がくるまで待たなければならない。年齢のすぎたものは少年航空兵にはなれないが、現役志願をしてそれから陸軍航空隊に入隊することもできる。現役志願については各地の連隊司令部、各役場の兵事課で相談するがよい。
(ロ) 学歴その他
学歴に何のきまりもない。つまり国民学校初等科を出ただけでも、どんな職場に働いてゐたものでもよい。日本男子であれば、だれでも志願ができる。半島人でも本島人でも一向さしつかへない。現にこれらの人々が、学校を卒業してりつぱにお役に立ち、この戦争で大きな手柄を立ててゐるものがたくさんゐる。
(ハ) 身 体
航空隊は体が丈夫なことが第一である。だから身体検査はしつかり行はれる。といつても、人なみの体格であれば大丈夫なのである。病気も将来飛行兵としてさしつかへないもの、また将来なほる見こみのあるものはさしつかへない。しかし、たとへ病気はなくても、あまりに体格のよくない者は不合格となる。
体はよいに越したことはないのであるから、平生十分注意して、なるべく心身共に両立させて鍛錬してほしい。
要するに体格は、特別によくなくてもよいので、普通の標準程度の者であればさしつかへないのである。
眼は飛行兵にとつてはもつとも大切で、検査も厳重であるが、近視、遠視、乱視などでも軽いものは、それぞれ適当な方向に進めるやうになつてゐるから、あまり心配することはない。【以下、次回】
今日の名言 2021・7・21
◎半島人でも本島人でも一向さしつかへない
陸軍航空本部「少年よ大空へ 陸軍少年飛行兵志願案内」に出てくる言葉。半島人でも本島人でも、陸軍少年飛行兵に志願できるの意。上記コラム参照。ここで半島とは朝鮮半島、本島とは台湾を指している。