ほぼ下馬評通り、自民惨敗・公明敗北・民主躍進・共社退潮に終わった今回の参院選。聞く所によると、一部の共産党員・支持者は、今回の選挙結果について、二大政党制の脅威の前に、何やら意気消沈しているとか。多分、数年前の私なら同じ様に気落ちしていた事でしょう。しかし今回は、そういう敗北感は殆どありません。共産党の退潮については残念に思いながらも、今回の選挙結果については、「小泉・安倍レジームからの脱却」の可能性も垣間見える、そういう新たな変化への予兆もはらんでいるのでは、という気がして仕方がないのです。敢えて言えば「負けても嬉しい」という心境です。これは決して負け惜しみで言っているのではありません。
(1) もはや公明党の力を借りても自民党は過半数を維持できない所まで追い詰められている。
それは選挙結果を見れば一目瞭然です。自民党は改選議席64に対して獲得したのは僅か37と、史上二番目に少ない数で、もう半減に近い負け方です。連立与党の公明党も、常勝神話が崩れて3議席減の9と、こちらも史上初の一桁台に転落。いずれ劣らず見事な負けっぷりです。
確かに、自民党の長期低落傾向は今に始った事ではありませんし、それどころか、つい近年には「小泉詐欺」で虚構の多数議席を占めたりもしていました。今までも、自民党は危機に陥るたびに、総裁や党のカラーを変えたり、他の党と連立を組むなどして、巧妙に政権を維持してきました。しかし、もはや今や自民党は、そういう小手先の彌縫策では対応出来ない所まで来ているのではないでしょうか。小選挙区制優位の仕組みを導入したり公明党や広告・宣伝企業の電通の力を以ってしてもカバーしきれないくらい、自民党の体力・求心力が落ちてきているのではないでしょうか。
http://www2.asahi.com/senkyo2007/
http://www2.asahi.com/senkyo2007/chart/070730a.html
(2) 今回の民主党当選者は必ずしも「ネオコン・ネオリベ」盲従とは限らない。
今回の民主党当選者の顔ぶれを見ていて、ある面白い事に気がつきました。それは、今まで思っていたほど「ネオコン・ネオリベ」色は強くない、という事です。確かに民主党は、旧社会党から旧民社党・元自民党・旧自由党までの寄せ集め政党で、党内には護憲派もおればゴリゴリの改憲右派もおり、その中で主流はあくまでも後者の改憲右派だというのが、これまでも私の認識でした。
しかし今回の当選者については、リベラル21などが出した改憲の是非を問うアンケートに対して、9条改憲に反対すると回答した人が半数近くに達しているのです。それも、相原久美子・神本美恵子・今野東(ともに比例)や岡崎トミ子(宮城)・大河原雅子(東京)などの様な、従来から左派・リベラル色の比較的強かった候補だけでなく、松下政経塾出身者や羽田・小沢グループの中にも、当該アンケートや候補者自身の公式サイト・ブログの中で9条改憲反対を明言している人が何人もいるのです。
それらの回答の中には、「9条改憲は反対だが憲法改正には賛成」とか、同様に「集団自衛権行使には賛成」という様に、相互に矛盾する様なものも少なくありません。正直言って、それらの「9条改憲反対」言説が、果たしてどれだけ本気なのか、単なる人気取りの回答ではないか、疑念を抱かせるような回答状況ですら在る、と言う事も出来るかもしれません。
また、「参院だから」というのも在るかも知れません。確かに参院は、「良識の府」と言われるだけあって、今までも衆院と比べたら比較的リベラル色の強い候補が当選する事が少なくありませんでした。しかしその事は逆に言えば、少なくとも参院では衆院以上に、民衆が候補者を監視して、「ネオコン・ネオリベ・改憲」寄りにならないように不断に圧力をかけ続ける事で、反改憲派の裾野を広げる事も出来るのではないでしょうか。
民主党が所詮は「第二自民」の寄せ集め政党であり、自民党も今後は民主党へも連立工作を働きかけてくる事が充分予想される中にあって、左から民主党に圧力をかけ続けてそれを阻止していく事の重要性について、改めて考えさせられました。
http://lib21.blog96.fc2.com/blog-entry-91.html
http://kaze.fm/wordpress/?p=132
(3) 二大政党誘引型の選挙制度が、逆に与党の首を絞める結果になりつつある。
それにしても、今回は与党が凄まじいまでの負けっぷりを示しました。特に1人区の、それも期日前投票者が激増した選挙区で(山形・秋田・沖縄など)、与党が軒並み全滅しています。
衆院で小選挙区比例代表並立制が導入されて10年以上が経過して、参院選や地方選挙にもその影響が及んでいます。その結果、共産・社民といった従来からの左派・革新政党が凋落し、変って民主党が与党批判の受け皿となりつつあります。これは、与党優位、最悪でも与党と第二自民の民主党による政権たらい回しを狙って導入された選挙制度ですが、ここまで与党が凋落すると(はるか昔の50年代から60年代前半にかけての時期には6割近い得票率を得ていたのが、今や3割台を維持するのが精一杯)、逆に「与党のボロ負け」に更に輪をかける結果になっています。元々は少数政党排除を目的に導入された選挙制度によって、逆に与党が更に自分で自分の首を絞める結果に陥っている様は、もう漫画というしかありません。
(4) 共産・社民両党による従来型の選挙戦術は限界に直面している。
今回、与党批判票の大半が民主党に流れ、共産・社民両党の議席は更に後退しました。共産党は「前回、前々回よりは得票数が増えた」と総括している様ですが、今回は期日前投票も含めると投票率自体が大幅にアップしているのであって、そんな中で僅かな得票増を云々した所で、大した意味はありません。問題はそれよりも、2000年以降の衆参国政選挙で、共産・社民両党の得票が、それぞれ400万票台、300万票弱で固定化・低迷している事です。この票数では、「小泉詐欺」の時の様に与党が大勝した時も、今回の様に与党に逆風が吹いて民主党が躍進した時も、同じ様に数議席しか取れません。
では共産・社民両党の目指す政治が、全然国民にアピールしなかったから、この体たらくなのでしょうか。いいえ、決してそんな事は無い筈です。少なくとも、格差・貧困に目を瞑り、スキャンダルと失言・失態に明け暮れている今の与党や、票目当てで格差批判をやるだけで実際には与党と共に労働者派遣法や介護保険法の改悪などに手を貸してきた民主党などよりは、はるかにマトモな事を主張しています。たとえ個々の政策や党の体質には色々問題があったとしても。
勿論、中には与党や民主党・公明党に愛想が尽きて、共産党や社民党に支持を鞍替えする人は少なくありません。しかし、それ以上に、従来からの共産・社民支持層の1~2割近くが、民主党に流れているのです。これは必ずしも「民主党への幻想」だけで片付けられる問題ではない様に思えます。
1986年のフィリピン大統領選挙で、フィリピンの左派は「アキノもマルコスも、どっちもどっち」論に拘泥する余り、結果的に民主化過程では脇役に甘んじてしまいました。今回も同じ事が言えるのではないでしょうか。
小泉自民党の大勝をもたらしたのは確かに扇動政治の為せる技でしたが、少なくとも今回の民主党躍進の裏にあるのは、為政者による扇動などではなく、地方の農漁民・自営業者や、都会のワーキングプア・プレカリアート、高齢者・母子家庭などの、「こんな政治はもう沢山だ」という悲鳴にも似た叫びなのです。民主党が第二自民党である事は、これらの人たちも皮膚感覚では薄々感づいているのです。それでも一縷の望みを託して、民主党に投票した人が大勢いるのです。小池百合子や高市早苗や丸川珠代が「勝ち馬に乗る」のとは訳が違うのです。そこの所を、共産党や社民党は本当に理解しているのでしょうか。
http://www2.asahi.com/senkyo2007/chart/070730a.html
(1) もはや公明党の力を借りても自民党は過半数を維持できない所まで追い詰められている。
それは選挙結果を見れば一目瞭然です。自民党は改選議席64に対して獲得したのは僅か37と、史上二番目に少ない数で、もう半減に近い負け方です。連立与党の公明党も、常勝神話が崩れて3議席減の9と、こちらも史上初の一桁台に転落。いずれ劣らず見事な負けっぷりです。
確かに、自民党の長期低落傾向は今に始った事ではありませんし、それどころか、つい近年には「小泉詐欺」で虚構の多数議席を占めたりもしていました。今までも、自民党は危機に陥るたびに、総裁や党のカラーを変えたり、他の党と連立を組むなどして、巧妙に政権を維持してきました。しかし、もはや今や自民党は、そういう小手先の彌縫策では対応出来ない所まで来ているのではないでしょうか。小選挙区制優位の仕組みを導入したり公明党や広告・宣伝企業の電通の力を以ってしてもカバーしきれないくらい、自民党の体力・求心力が落ちてきているのではないでしょうか。
http://www2.asahi.com/senkyo2007/
http://www2.asahi.com/senkyo2007/chart/070730a.html
(2) 今回の民主党当選者は必ずしも「ネオコン・ネオリベ」盲従とは限らない。
今回の民主党当選者の顔ぶれを見ていて、ある面白い事に気がつきました。それは、今まで思っていたほど「ネオコン・ネオリベ」色は強くない、という事です。確かに民主党は、旧社会党から旧民社党・元自民党・旧自由党までの寄せ集め政党で、党内には護憲派もおればゴリゴリの改憲右派もおり、その中で主流はあくまでも後者の改憲右派だというのが、これまでも私の認識でした。
しかし今回の当選者については、リベラル21などが出した改憲の是非を問うアンケートに対して、9条改憲に反対すると回答した人が半数近くに達しているのです。それも、相原久美子・神本美恵子・今野東(ともに比例)や岡崎トミ子(宮城)・大河原雅子(東京)などの様な、従来から左派・リベラル色の比較的強かった候補だけでなく、松下政経塾出身者や羽田・小沢グループの中にも、当該アンケートや候補者自身の公式サイト・ブログの中で9条改憲反対を明言している人が何人もいるのです。
それらの回答の中には、「9条改憲は反対だが憲法改正には賛成」とか、同様に「集団自衛権行使には賛成」という様に、相互に矛盾する様なものも少なくありません。正直言って、それらの「9条改憲反対」言説が、果たしてどれだけ本気なのか、単なる人気取りの回答ではないか、疑念を抱かせるような回答状況ですら在る、と言う事も出来るかもしれません。
また、「参院だから」というのも在るかも知れません。確かに参院は、「良識の府」と言われるだけあって、今までも衆院と比べたら比較的リベラル色の強い候補が当選する事が少なくありませんでした。しかしその事は逆に言えば、少なくとも参院では衆院以上に、民衆が候補者を監視して、「ネオコン・ネオリベ・改憲」寄りにならないように不断に圧力をかけ続ける事で、反改憲派の裾野を広げる事も出来るのではないでしょうか。
民主党が所詮は「第二自民」の寄せ集め政党であり、自民党も今後は民主党へも連立工作を働きかけてくる事が充分予想される中にあって、左から民主党に圧力をかけ続けてそれを阻止していく事の重要性について、改めて考えさせられました。
http://lib21.blog96.fc2.com/blog-entry-91.html
http://kaze.fm/wordpress/?p=132
(3) 二大政党誘引型の選挙制度が、逆に与党の首を絞める結果になりつつある。
それにしても、今回は与党が凄まじいまでの負けっぷりを示しました。特に1人区の、それも期日前投票者が激増した選挙区で(山形・秋田・沖縄など)、与党が軒並み全滅しています。
衆院で小選挙区比例代表並立制が導入されて10年以上が経過して、参院選や地方選挙にもその影響が及んでいます。その結果、共産・社民といった従来からの左派・革新政党が凋落し、変って民主党が与党批判の受け皿となりつつあります。これは、与党優位、最悪でも与党と第二自民の民主党による政権たらい回しを狙って導入された選挙制度ですが、ここまで与党が凋落すると(はるか昔の50年代から60年代前半にかけての時期には6割近い得票率を得ていたのが、今や3割台を維持するのが精一杯)、逆に「与党のボロ負け」に更に輪をかける結果になっています。元々は少数政党排除を目的に導入された選挙制度によって、逆に与党が更に自分で自分の首を絞める結果に陥っている様は、もう漫画というしかありません。
(4) 共産・社民両党による従来型の選挙戦術は限界に直面している。
今回、与党批判票の大半が民主党に流れ、共産・社民両党の議席は更に後退しました。共産党は「前回、前々回よりは得票数が増えた」と総括している様ですが、今回は期日前投票も含めると投票率自体が大幅にアップしているのであって、そんな中で僅かな得票増を云々した所で、大した意味はありません。問題はそれよりも、2000年以降の衆参国政選挙で、共産・社民両党の得票が、それぞれ400万票台、300万票弱で固定化・低迷している事です。この票数では、「小泉詐欺」の時の様に与党が大勝した時も、今回の様に与党に逆風が吹いて民主党が躍進した時も、同じ様に数議席しか取れません。
では共産・社民両党の目指す政治が、全然国民にアピールしなかったから、この体たらくなのでしょうか。いいえ、決してそんな事は無い筈です。少なくとも、格差・貧困に目を瞑り、スキャンダルと失言・失態に明け暮れている今の与党や、票目当てで格差批判をやるだけで実際には与党と共に労働者派遣法や介護保険法の改悪などに手を貸してきた民主党などよりは、はるかにマトモな事を主張しています。たとえ個々の政策や党の体質には色々問題があったとしても。
勿論、中には与党や民主党・公明党に愛想が尽きて、共産党や社民党に支持を鞍替えする人は少なくありません。しかし、それ以上に、従来からの共産・社民支持層の1~2割近くが、民主党に流れているのです。これは必ずしも「民主党への幻想」だけで片付けられる問題ではない様に思えます。
1986年のフィリピン大統領選挙で、フィリピンの左派は「アキノもマルコスも、どっちもどっち」論に拘泥する余り、結果的に民主化過程では脇役に甘んじてしまいました。今回も同じ事が言えるのではないでしょうか。
小泉自民党の大勝をもたらしたのは確かに扇動政治の為せる技でしたが、少なくとも今回の民主党躍進の裏にあるのは、為政者による扇動などではなく、地方の農漁民・自営業者や、都会のワーキングプア・プレカリアート、高齢者・母子家庭などの、「こんな政治はもう沢山だ」という悲鳴にも似た叫びなのです。民主党が第二自民党である事は、これらの人たちも皮膚感覚では薄々感づいているのです。それでも一縷の望みを託して、民主党に投票した人が大勢いるのです。小池百合子や高市早苗や丸川珠代が「勝ち馬に乗る」のとは訳が違うのです。そこの所を、共産党や社民党は本当に理解しているのでしょうか。
http://www2.asahi.com/senkyo2007/chart/070730a.html