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アフガン・イラク・北朝鮮と日本

黙って野垂れ死ぬな やられたらやり返せ 万国のプレカリアート団結せよ!

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 アフガン・イラク戦争も金正日もNO!!搾取・抑圧のない世界を目指して、万国のプレカリアート団結せよ!

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犬は吠えても歴史は進む

2007年08月26日 09時58分51秒 | ヘイトもパワハラもない世の中を
 前号記事で予告した通り、新刊ネットウヨ雑誌「スレッド」の内容を批判していく事にします。但し、職場を初め自分の身近にもこの手の言説の影響を受けた人はワンサカ居るので、きっちり逐条的・全面的に批判してやろうと当初こそ思っていましたが、読めば読むほど、こんなキワモノ雑誌相手にマジで反応するのが段々バカらしく思えてきたので、本質的な部分に的を絞って批判する事にします。
 漫画ありインタビューありと、実質150ページ前後のこの雑誌には色々な記事が載っていますが、あくまで中心は次の三つの特集記事です(下記各項目のキャッチはいずれも当該雑誌の記事見出しからの引用)。従って、私の批判もこの三つの記事内容に沿って行う事とします。

(1) コイツらの発言に気をつけろ!永久保存版・売国紳士名鑑/日本を売っちゃった人々(P26~45:特ア・在日・左翼批判)
(2) あんな仕事で年収1000万!?格差社会に君臨する真の勝ち組たち/「隠れセレブ」の華麗なる日常(P52~69:官公労・左翼批判)
(3) 大学全入時代到来で、行ってはいけない大学が増殖中!?/「最底辺大学」の憂鬱(P132~141:当該大学批判にかこつけての単なる下層蔑視)

●「特ア」叩きのみの「属米」現状スルーで、「一辺倒」の本質は何も変らず

 上記(1)の「日本を売っちゃった人々」特集記事を中心に、付随・コラム記事を加えると、この雑誌の誌面殆どが、韓国・北朝鮮・中国三国の所謂「特定アジア=特ア」とそれに連なる媚「韓・朝・中」派に対するバッシングで埋め尽くされています。そこでは、総連・民団などの在日団体を初め、マスコミ・政治家・財界人(いずれも産経・右翼系を除く)・教組・市民団体を槍玉に挙げて、ご丁寧にも利害相関図や「売国パワー」の個人別グラフまで添付しています。
 しかし奇妙な事に、「反日・売国奴」攻撃の餌食にされているのは「特ア」や「媚中」派だけで、それ以上に日本の政治・経済を支配してきた「媚米」派の売国行為については完全にスルーしています。米国のアグリビジネスに阿りBSEや食品安全性の規制を緩和し国内農業を衰退させ、大衆増税・福祉削減とは裏腹に在日米軍には「思いやり予算」やグアム移転費用の拠出までして、米兵が強盗・強姦事件を起こしても治外法権には一切手をつけず、郵政や簡保などの国民の資産を平気で外国資本やハゲタカファンドに売り渡し、嘘で始めたイラク戦争の化けの皮がすっかり剥がれた後も後生大事に親米ポチを続けるなど、「特アの日本支配」とは比べ物にならないほど強固な「米国の日本支配」については、完全に黙殺・免罪しています。

 これらの人たちは、何かと言えば「戦後の平和・人権運動は反米一辺倒で、帰国者問題や拉致問題を隠蔽・黙殺してきた」というロジックを展開していますが、何の事は無い、崇拝や攻撃の対象が変っただけで「一辺倒」という本質については何も変らない点では、自分たちも全く同じなのです。そもそも、実際に戦後の日本を支配してきたのが対米追随の軍国主義復活派である以上、まずはそんな小泉・安倍の自民党政治の是非が日本では常に議論になるのはごく当たり前の事であって、それを以って「一辺倒」と言うのは当りません。その上で「米国にも中国・北朝鮮にも対等・平等・是々非々で臨むべし」というのならまだ分りますが、この雑誌はそうではなく、ひたすら「特ア」叩き在るのみというのが、もう米国・日本政府・財界の御用雑誌であるのが見え見えで。

 多分これらの人たちは「米国は自由・民主主義の国だから属米でも構わないのだ、特アに対抗するには更なる属米しかない」という論理でいるのかも知れません。その為には基地被害も農政破壊も規制緩和・格差拡大も耐え忍べという事なのでしょう。しかし、それではもう日本は米国の植民地と同じです。
 そして、これらの人たちは、何かと言えば「属米か、さもなくば対米断交か」みたいな似非二者択一論を展開しますが、これも可笑しな話です。「属米」でも「断交」でもない、対等・平等・互恵・友好の「普通のお付き合い」を米国ともしていけば良いだけの話なのに。現に日本政府が中国ともビジネスライクに付き合っているように。日本以外では、たとえ国内に米軍基地を置いている同盟国であっても、それが当たり前の事なのです(かつてのフィリピン、今の欧州諸国やキルギス然り)。それを、「日本には軍隊があるからそれは不可能だ」と最初から決め付けて、「9条がある国だからこそ米国には出来ない事もある」という発想には全然思い至らない、この不思議。

 これらの人たちもたまには「反米」を口にする事もありますが、それは従軍慰安婦問題の場合の様に、自身の余りにも旧態依然たる靖国史観や過去から続く人権侵害に対して、米国からも愛想を尽かされ始めているのを口惜しがる時などに限られています。アフガン・イラクでの米軍による戦争被害・人権侵害やテロ誘発・扇動・自作自演行為について、抗議の声を挙げた例は殆どありません。これは日本国内の農政破壊や規制緩和・格差拡大、ホワイトカラー・エグゼンプション・消費税増税などの生活破壊についても然り。
 本当に日本の「売国」状況や日本・世界の人権侵害を憂えるのであれば、「属米」や「特ア」の軍拡・人権侵害にも共に等しく抗議し、日本国憲法の理念でそれに対抗すべきなのに、全然そんな素振りは見せない。結局これらの人たちは、「特ア」の脅威<だけ>を殊更言い立てる事によって、「属米」自民党政治の延命に一役買っているだけなのです。

●一部の現象を揶揄する事で、それを生み出した構造・本質は見事に隠蔽・免罪

 上記(2)(3)のロジックに共通するのが「木を見て森を見ず」です。それも単なる錯誤ではなく意図的に。つまり、「表面に現われた一部の事象のみを誇張・歪曲して取り上げ、その責任を個人・労組・野党になすりつける事で、その本当の原因・構造・本質や、それを作り出してきた与党政治の責任を、意図的に隠蔽・免罪している」のです。

 (2)の「隠れセレブ」批判記事で槍玉に挙げられているのが、地方公務員の現業職(技能労務職)の人々です。具体的には給食調理員・公営バス運転手・緑のおばさん(学童擁護員)・清掃局のゴミ収集員・学校用務員とかです。それらの人々に対して、サザエさんのノリで「隠れセレブ」を揶揄した漫画まで載せて、やれ「夏休みも冬休みもある」だの「労働時間は1日たったの2時間」だの言い立てた挙句に、「これで年収1千万はないでしょう」と来る。まあ、現場の事情を知らない人がちょっと聞けば、非常に俗受けする議論ではあります。

 この種の議論が眉唾なのは、常に「隠れ××」しか槍玉に挙げず、隠れでない「本来の××」には一切手をつけないという事です。普通「セレブ」といえば、ホリエモン・オリエモンや松岡・赤城の農水大臣をまず思い浮かべるものですが、この人たちはそうではありません。「本物セレブ」の私腹肥やしや利権漁りが世論の指弾を浴びている時には、やれ「まるで人民裁判だ」とか「勝ち組への嫉妬だ」とか言って火消しに回る人たちが、こと「隠れセレブ」の事となると途端に「人民裁判」の火付け役になるというw。

 しかしこれって、一昔前の「学校の先生は夏休み付き」とか「親方日の丸の国鉄職員は勤務中に入浴」とかいう、かつて産経新聞あたりが大量に流した反労働者キャンペーンと全く同じではないですか。実際の教育現場が多忙を極め教師の超過勤務や過労死が横行・続発している事や、汚れ仕事で入浴・着替えなければ仕事が終えられない(かつて鉄鋼・造船・炭鉱の現場で働いていた人がそうだった様に)事などは、意図的に無視して。
 そうして「公務員は全て悪」「全て官から民へ」の大合唱の下で、国鉄・郵政・学校・保育所などが次々に分割・民営化されたその行き着く先が、無認可保育所の乳児死亡事故や、JRの信楽高原鉄道事故・福知山線事故や、スキーツアー夜行バスの過労運転事故や、マンションの耐震偽装などではなかったのか!公務員給与引き下げに連動した民間給与・失業給付・年金給付などの引き下げではなかったのか!

 そして、その「隠れセレブ」についても言うと、確かにそういう腐敗・堕落も一部にはあるでしょう。京都市清掃局職員の一連の不祥事とか、奈良市役所職員の病欠取っての内職・私腹肥やしとか、岐阜県庁での知事と御用労組がつるんでの裏金作り、とかの様に。確かに、そういう一部「隠れセレブ」による腐敗・堕落・利権漁り・私腹肥やしは糾弾されて然るべきです。先の京都・奈良の例や、大阪の飛鳥会事件に見られるような、行政権力と職員労組や解放運動との癒着などは、その典型例です。
 但し、それならそれで、腐敗・堕落した方とそうさせた方の両方を糾さなければ、問題の解明や解決にはなりません。市長選挙の度に自治労や解放同盟を実働部隊として使ってきたその見返りとして、彼らに各種のアメをしゃぶらせてきた自民党やオール与党の行政権力が、今頃になって行政改革や財政再建を口実にして、彼らを切り捨てる為に「自分だけ良い子」ぶろうとしても、そうは問屋が卸しません。
 しかし、この「隠れセレブ」記事によると、悪いのはあくまで職員・労組・運動団体の側だけであって、一緒に甘い汁を吸ってきた行政・族議員・高級官僚には一切矛先を向けていないのです。

 要するに、これらの人たちは、「小悪叩きで溜飲を下げさせておいて本当の巨悪は隠蔽する」事で、政府・財界のお先棒を担いでいるだけなのです。今回の自民党政府による「社会保険庁職員叩き」の陰で、厚生官僚・族議員・ゼネコンによるグリンピア利権の談合・山分けや年金保険料流用疑惑が隠蔽されようとしたのと、全く同じ構図です(但し今回は小悪叩きだけでは済まなくなって、自民党は参院選で大敗する事になりましたが)。

 この構図は(3)の「最底辺大学」記事も同じ。やれ「偏差値44以下」で「アホなボンボンと中国人留学生だけが跋扈する最底辺大学」について、大学名まで列挙してそのアホぶりを揶揄していますが、そもそも、そんな金儲け本位の大学が雨後のタケノコの様に乱立してきたのは何故なのでしょうか。小泉構造改革に伴う規制緩和で、許認可要件を緩和して学校法人でもない株式会社でも大学を作れるようにした事や、留学名目で外国人を日本に呼び込んで労基法何処吹く風のタコ部屋で最低賃金の半分ぐらいの時給で毎日10時間以上も働かせている企業が一杯あって、文科省や厚労省もそれを見て見ぬ振りしているからではないですか。
 そういう政治・経済・社会の構造的な背景・原因については何も言及せず、ひたすら当事者だけを貶め揶揄した挙句に、最底辺大学生と東大生の座談会バトル記事まで載せて東大生だけを持ち上げて、バカみたい。私に言わせれば、モラトリアム満喫の底辺大学生も官庁への出世だけが目的の東大生も、共に大学や学問を足蹴にしているという意味では、どちらも五十歩百歩なのですが。

●所詮は「反・反体制の僕ちゃん」でしかない、周回遅れの2ちゃんネットウヨク雑誌だという事

 要するに、この「スレッド」という雑誌のスタンスは、「反・反体制の僕ちゃん」でしか無いのです(尚、このリンク先のブログはどちらかというと保守・右翼系です、つまりネットウヨクはそういう人からもとっくにその正体を見透かされていたという事)。反左翼を標榜しているが実は右翼でもない、単なる「反体制」や「社会的弱者」の運動や人たちを、ひたすら貶め揶揄するだけの存在。それらの人々や運動が未だ克服出来ていない内部の矛盾・葛藤・偽善に対して、そこに的を絞って攻撃はするものの、それらの矛盾をどうやって乗り越えていくかという真摯な議論なぞは、ハナからする気が無い。ただ、虐めっ子が、「虐められる奴にも虐められるだけの理由があるんだ」と言って、自分の虐めを正当化し、それで「下見て暮らせ傘の下」で惨めな自分自身を慰めているだけ。
 「戦後日本の伝統的権威を検証・批判する」と謳いながら、やっている事は平和・人権・民主主義といった理念の不十分さや未成熟を右側から表面的に論うだけで、もう一方の伝統的権威たる天皇や靖国神社や米国や政府・財界の汚い面については完全スルーし、それぞれの不十分さや未成熟をどう乗り越えていくかという建設的な議論も一切無い。

 この手の議論は、実は、今はもうあの「2ちゃんねる」においてすらも、次第に相手にされなくなり(より正確に言うと、飽きられ)つつあります。雑誌「スレッド」編集者もそれが分かっているからこそ、「隠れセレブ」や「プロ市民」を揶揄する記事がてんこ盛りの中にあって、ちょこっと片隅で申し訳程度に「諸君」「正論」を批判してみせたり映画「夕凪の街 桜の国」を持ち上げるレビューも載せたりして、「行き過ぎたバックラッシュ(反動)にも物申す」みたいなポーズも取っているのでしょうが、それはあくまで「目眩まし」にしか過ぎません(そういえば「マンガ嫌韓流」第一作にも、そういう箇所がアリバイ的に掲載されていた)。
 それで、人材派遣業界の賃金ピンハネ・労災隠し・ワーキングプア搾取のアコギさを批判する見開き2ページの記事を申し訳程度に載せておきながら、その同じ雑誌で、ワーキングプアの労組結成やフリーター・メーデーの動きに対し準特集記事まで組んで、やれ「左翼のプロパガンダ」だの「反日売国奴」だのと数ページに渡って貶めているのです。とどのつまりが「この世は闇だ、しかし立ち上がってもムダだ、プロ市民にいいように利用されるだけだ」と。

 じゃあ、どうすりゃあ良いの。もう後は、死ぬまでとことん搾取されるか、ニートになるか、リストカットやテロに走るかしか無いじゃない。まさか、「自殺やテロの勧め」がこの雑誌の本当の狙いなのか。それでは、この「スレッド」こそが、最大の「反日・売国奴」雑誌という事になってしまいますがw。
 どちらにしても、こんな雑誌は、所詮は「反・反体制の僕ちゃん」でしかなく、現実の生活苦の解決にとっては何の役にも立たないという事が、先の参院選での与党大敗に見るように、世間でも徐々に認知されてきた様は、差し詰め「犬は吠えても歴史は進む」という事でしょうか。それを踏まえた上で、「現代民主主義の不十分さや未成熟な点をどう乗り越え発展させていくか」というのが今後問われているのです。それは、こんな「スレッド」とかいう糞雑誌には何も書いていませんし、こんな雑誌をいくら読んだ所で何の参考にもなりません。

(参考記事)
・維新政党新風よ、永遠なれ 『スレッド Vol.1 』晋遊舎(書評日記  パペッティア通信)
 http://plaza.rakuten.co.jp/boushiyak/diary/200708070000/
・晋遊舎(ウィキペディア)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%99%8B%E9%81%8A%E8%88%8E
・前号記事「犬は吠えても歴史は進む(プロローグ)」
 本記事を書くに至ったキッカケなど。
 http://blog.goo.ne.jp/afghan_iraq_nk/e/e6c535bf9da82f9b63424445a9f4224e
 
コメント (1)
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