パソコンの不調で書けなかった記事を遅まきながら更新しています。ここでは6月22日の参院選告示初日に、大阪の西成区役所前で行われた、共産党・渡部結(わたなべ・ゆい)候補の街頭演説の模様をお伝えします。街頭演説日よりだいぶ日数が経っていますので、大まかな記憶しか残っていませんが、それでも、所々思い出しながら書いていきたいと思います。(こんな事なら、演説内容をスマホに録音しておけば良かったと悔やんでも、もう後の祭り…。記憶違いがあれば遠慮なくご指摘下さい)
私がこの演説を聞きに行こうと思ったのは、たまたま当日が公休日で、スポット演説の場所も毎日の仕事の行き帰りによく通る場所だったからです。
演説は、午前10時きっかりに始まりました。区役所前の交差点のたもとで、地元の後援会の方に混じって、私も聞いていました。
まず最初に、辰巳孝太郎・参院議員の応援演説から始まりました。辰巳議員は、自身が取り組まれた非正規労働者の端数時給ピンハネ問題から入りました。コンビニなどで働くアルバイトの時給が15分単位で計算され、それに満たない端数時間の賃金が長年に渡って支払われていない問題を、国会で追及し、塩崎厚労相から労基法違反の答弁を引き出した事について報告されていました。わずか数分間の賃金未払いでも、年間では数万円の額に上ります。低賃金の非正規労働者にとっては、決して少ない額ではありません。私の職場でも、このような形での賃金未払いが横行しており(参考記事)、私も、この問題を取り上げた「しんぶん赤旗」記事のコピーを、所長に見せて問いただした事がありました。辰巳議員の演説のこのくだりについては、私も身を乗り出して聞いていました。
その後、沖縄で起こった米軍属による女性暴行殺人事件の話に移り、「本来、絆というのは対等平等な物であるはすなのに、日米地位協定はそのような形にはなっていない。日本側には領事裁判権もない。これではただの奴隷の服従でしかない」という意味の事を仰っていたのが、非常に印象に残っています。
その後、参院大阪選挙区候補の渡部候補が、宣伝カーから降りてこられ、10時半過ぎまで約15分間演説されました。主に、奨学金問題と最低賃金引上げを訴えておられたように思います。
日本と並んで非正規雇用の時給が低かった米国でも、労働者の運動によって、多くの州が最低賃金を円換算で時給千円以上の引き上げに踏み切った。それによって、労働者の購買力が上がり、景気も徐々に回復に向かうようになった…。
翻って日本ではどうか。国内でもっとも時給の高い東京でもたった907円、最低ランクの沖縄にいたってはたったの693円。これでは1ヶ月フルに働いても12万円ぐらいにしかならない。こんな賃金ではとても食ってはいけない。まともに生活するには、最低でも時給1500円は必要だ。日本でも、最低賃金をせめて千円以上に、将来的には1500円以上にする事が求められている。大企業はアベノミクスでしこたま内部留保を溜め込んでいる。そのうちのわずか数パーセントを労働者に還元するだけで、時給千円への引き上げは可能だ。中小企業は大企業と同列には論じられないというが、これも国が税制面で中小企業を支援するようにすれば十分可能だ。アベノミクスで見かけ上の株価バブルをいくら演出しても、潤うのは大企業だけで、中小企業や労働者は搾取されるだけだ…。
奨学金も、日本では給付型でなく貸付が主流となっている。これではサラ金と同じだ。苦労して大学を卒業しても、非正規の職にしか就けないのに、卒業した途端に何百万もの借金を返済していかなければならない。今や、学生の約半数が奨学金返済のローンを抱えるようになってしまった。最低でも月3万円の奨学金給付が必要だ…。このようにして、一部の金持ちだけが潤うアベノミクスではなく、実際に国民生活を応援する形で、景気回復を図ろう…。
大体こんな内容だったと思います。(思い出しながら書いていますので、相当脚色しているとは思いますが…)
地元の西成は、渡部候補がその前の衆院選小選挙区(大阪3区)にも出馬して、自民党が支援する公明党現職候補の84943票(得票率57.2%)に対して、63529票(同42.8%)まで詰め寄った土地柄です。そのせいか、渡部候補の演説中も、タクシー運転手がわざわざ交差点で止まって声援のクラクションを鳴らしてくれたり、通りがかりのおばちゃんが何度も握手を求めてきたりしていました。
私も今回の選挙で渡部候補に投票しようと思っています。ただ、現実には当選は難しいようです。序盤戦の世論調査によれば、良くても最下位当選で滑り込み、このまま推移すれば落選の可能性が濃厚だそうです。
参院選大阪選挙区(改選数4)には、次の9名が立候補しています。そのうちで有力候補と目されているのは、渡部(共産)、浅田(おおさか維新)、尾立(民主)、松川(自民)、石川(公明)、高木(おおさか維新)の6名です。その6名のうちで、与党の自民・公明と、おおさか維新政調会長の浅田均(あさだ・ひとし)の3名については、ほぼ当選確実だと言われています。そして、最後の4議席目を、共産・民主・おおさか維新二人目の候補の3名が争っています。その中で、同じ党から二人も出て、一時は共倒れのうわさも流れていた、おおさか維新の二人目の候補者、高木佳保里(たかぎ・かおり)が、頭一つ抜き出て当選しそうな勢いになっています。
大阪の選挙情勢の特徴の一つに、おおさか維新が異常に強い事があげられます。関東や近畿でも京都ではそんなに強くない同党が、大阪では元代表の橋下徹が政界を引退してからも、往時の勢いをそのまま維持しています。それも、タチが悪い事に、憲法改正や経済政策では完全に自民党の補完勢力と化した同党が、大阪ではなぜか、反自民の有権者からも支持を集め、まるで自民党の対抗勢力であるかのように誤解され続けているのです。
それでも、堺市長選挙や都構想住民投票では同党は敗北を喫しましたが、この時は自民党も含め、全勢力が反おおさか維新でまとまっていました。今回は、逆に自民党もおおさか維新の側についてしまっています。
実際、選挙掲示板のポスターを見ても、渡部(共産)と尾立(民主)の主張は似通っています。「なくそう!格差」(渡部)に対し、「1%の大金持ちより99%の幸せを」(尾立)という具合に。その上、本来なら渡部や尾立を支持して然るべき貧困層の若者の一部までが、おおさか維新の高木になびこうとしているのですから、尋常ではありません。その一方で、おおさか維新政調会長で現職の浅田均は、新興成金のホリエモンみたいな奴らの票に加え、自民党からも票を回してもらって、楽々当選というのですから、情けないやら腹が立つやら。前回参院選では大阪でも共産党の辰巳候補が当選を果たす事が出来ましたが、これもみんなの党や諸派の候補者乱立に助けられての、薄氷の差の勝利でした。
今回参院選(2016年7月10日投票)大阪選挙区の候補者名一覧(出典:読売新聞)
左から届け出順の番号(上記写真の掲示板並び順と同じ)、候補者名(漢字・ひらがな)、年齢、所属党派(推薦・支持)、新旧別、当選回数、肩書・経歴。
党派名の中で「お維新」は「おおさか維新」、「生」は「生活の党」、「こころ」は「日本のこころを大切にする党」の略称。
①渡部 結 わたなべ ゆい 35 共産(生) 新 党府委員
②浅田 均 あさだ ひとし 65 お維新 新 党政調会長
③古川 秀雄 ふるかわ ひでお 38 こころ 新 参院議員秘書
④尾立 源幸 おだち もとゆき 52 民進(生) 現 2 党府代表
⑤佐野 明美 さの あけみ 45 諸派 新 支持なし党員
⑥松川 るい まつかわ るい 45 自民 新 (元)外務省室長
⑦数森 圭吾 かずもり けいご 36 諸派 新 幸福実現党員
⑧石川 博崇 いしかわ ひろたか 42 公明 現 1 (元)防衛政務官
⑨高木 佳保里 たかぎ かおり 43 お維新 新 (元)堺市議
前回参院選(2013年)大阪選挙区の開票結果(出典:朝日新聞)
左から当落別、候補者名、得票数、得票率、略歴、所属党派、新旧別の順。
当 東 徹 1,056,815 28.83% 〈元〉府議 維新 新
当 柳本 卓治 817,943 22.31% 〈元〉衆院議員 自民 新
当 杉 久武 697,219 19.02% 公認会計士 公明 新
当 辰巳 孝太郎 468,904 12.79% 党府委員 共産 新
梅村 聡 337,378 9.20% 医師 民主 現
安座間 肇 157,969 4.31% ホテル会社員 みんな 新
吉羽 美華 56,573 1.54% 〈元〉寝屋川市議 大地 新
藤島 利久 20,928 0.57% 政治団体代表 無所 新
中村 勝 20,155 0.55% 諸派 新
長嶺 忠 17,671 0.48% 〈元〉三洋電機社員 無所 新
森 悦宏 14,178 0.39% 幸福の科学職員 諸派 新
全国的には、共産党の伸張が伝えられていますが、もうそれだけでは、昔みたいに「真の野党が伸びた」と喜んでいる訳にはいきません。共産党の伸張以上に、民進党の勢力減退が著しく、そのお陰で、せっかくの野党共闘も、このままでは「一定の成果」に留まるかも知れないと言われています。これは、野党共闘がダメだと言うのではなく、野党共闘の成果をもってしても民進党の衰退を押しとどめる事は難しいという事でしょう。野党共闘が成立していなければ、もっと悲惨な結果になっています。
共産党は、一人区で候補者を降ろした事で、逆に野党共闘の本気度が有権者から評価されて、党勢伸張につなげる事が出来ました。しかし、民進党は、民主・維新の合流で新党結成にこぎつけても、落ち目同士のもたれ合いである事が有権者に見透かされ、党勢は低迷したままになっています。それが、野党共闘が「一定の成果」に留まり、大阪では反自民層の一部までおおさか維新に流れてしまう結果になってしまったのです。
これはひとえに、民進党の不甲斐なさによるものですが、もう以前のように、これで「真の野党の共産党が評価された」と喜んではいられなくなった所に、今回の事態の深刻さが現れています。自公政権が、参議院でも3分の2の議席を獲得して、憲法改正を発議しようとしている中で、もはや共産党だけの勝利に酔いしれる事は許されなくなっています。
大阪でおおさか維新が異様に強いのは、ひとえに、権力迎合の政治家でありながら偽りの「反権力」ポーズで票を掠め取る事に長けた、ヒットラーのような橋下徹によるポピュリズムの洗脳に大阪府民が毒されてしまった結果です。しかし、今さらそれを言っても始まりません。大阪で護憲派が2議席を獲るには、自民党や公明党だけでなく、おおさか維新とも闘わなければならないのです。自公の片割れさえ叩けば何とかなる他の地方の複数区とは違うのです。
今や大阪の民進党は壊滅状態です。何せ大阪府議と大阪市議を合わせても、たった一人しか議員がいないのですから。大阪の共産党は、まだ民進党よりも力はあります。都構想住民投票で橋下の野望をすんでの所で食い止める事が出来たのも、共産党の頑張りがあったからこそです。しかし、その共産党も、票を民進党に回せる程の余裕があるとは思えません。
共産党も、香川よりもこの大阪でこそ、候補を一人に絞らなければならなかったように思います。いかに複数区とは言え、この前の府知事選では、自民党出身の候補者でも維新の無名候補に大敗している土地柄なのですから。理想を言えば、渡部結を野党統一候補として擁立していれば、最低1議席は確実に確保できます。それでも改憲派と護憲派の議席比率は3対1となりますが、少なくとも「全滅」は免れる事が出来ます。
もし渡部結や他の共産党系候補でダメなら、無党派の人物を統一候補に推すしかないでしょう。その統一候補は、おおさか維新に代わる新しい未来像を明確に提示できる人物でなければなりません。尾立のような「何ちゃって反貧困」「にわか反貧困」候補では、おおさか維新に競り勝つことは出来ません。最低でも衆院選北海道5区補選の池田真紀クラスの人物でなければなりません。
大阪府民を橋下の幻想から解き放つ為には、そこまで腹をくくらなければならないのです。少なくとも大阪では、いくら複数区といえども、「野党候補が競い合って安倍自民に勝つ」と言うのは、現実には難しいです。安倍を倒そうと思えば、その前に「橋下」を倒さなければならないのですから。
(参考記事)
参院選の野党統一候補 「市民連合」推薦15人に
参院選での野党共闘を呼び掛ける市民団体「市民連合」は四日、東京都内で記者会見し、参院選で支援を約束する推薦協定書を結んだ野党統一候補が現段階で十五人に上ったと発表した。市民連合の呼び掛け人の一人、佐藤学(まなぶ)・学習院大教授は「市民運動による大いなる挑戦が始まっている」と述べ、民進、共産、社民、生活の野党四党に統一的な政策要望書を提出する方針を示した。
参院選では、全国三十二の改選一人区のすべてで野党統一候補が実現。市民連合は、「安全保障関連法の廃止」や「立憲主義の回復」、さらに「個人の尊厳を擁護する政治の実現」を公約する立候補予定者と推薦協定書を交わし、支援している。
佐藤教授は、野党共闘の実現は「市民運動の連帯の成果」と強調。参院選を市民がつくる新しい政治の出発点だとし「過半数を取り、安倍政権を退陣に追い込みたい」と意気込んだ。
全国で最も早く、野党統一候補との推薦協定書が実現した熊本県で活動する「熊本から民主主義を!県民の会」事務局長の福永洋一さんは「党派関係なく、多くの団体が組織化された。震災もあり、セオリーのない選挙だが、結果を出したい」と話した。
この日は、市民対象の意見交流会も開催。四月の衆院北海道5区補選で野党統一候補として出馬し、落選した池田真紀氏が「政党の共闘はできたが、十九万人もの棄権者が出た。政治への無関心を生んでしまったことが課題」などと話した。(東京新聞、6月5日朝刊)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201606/CK2016060502000114.html
参院選 序盤情勢 1人区「統一候補」効果 複数区は共産勢い(一部抜粋)
・産経新聞社の参院選序盤情勢調査では、勝敗を左右する32の1人区で自民が優勢だが、民進、共産など野党4党の「統一候補」も新潟や長野で先行、一定の効果が見られる。複数区は共産に勢いがあり、与党の自民、公明は警戒を強めている。
・「10落とす」
民進、共産、社民、生活の野党4党は今回、32の1人区全てで候補者を一本化。前回の平成25年参院選の結果を基にした試算では、今回の野党候補の一本化により7つの1人区で与野党が逆転する計算になる。このうち山形や新潟、長野などでは実際に野党統一候補が優位に戦いを進めている。
野党統一候補は、これまで原則として全選挙区に自前候補を擁立してきた共産が取り下げたことで実現した。同党の志位和夫委員長は「野党統一候補は私たちの候補者だというつもりで応援する」と宣言。25年参院選は31だった1人区で自民党が29勝と圧勝したが、これと比べれば野党側の上積みは確実な情勢だ。
自民は優勢とみられた青森や秋田でも差を縮められてきており、「10程度は落とす可能性もある」(幹部)と警戒感を強める。
・公明に焦り
複数区は共産に勢いがあり、改選数の最も多い東京選挙区(改選数6)のほか、千葉や神奈川でも議席をうかがう。
自民は改選数3以上の北海道、千葉、東京の3選挙区で、民進は北海道、千葉、東京、神奈川、愛知の5選挙区で公認候補2人を擁立。自民内には、予想以上に共産が好調なことなどから「票の配分がうまくいかなければ、どちらかの当選が危うい」(幹部)との懸念がある。一方、民進幹部からは党勢が低迷する中での強気の擁立に「共倒れになる選挙区が出る可能性がある」との声も漏れる。
また、焦りを募らせているのが公明だ。埼玉選挙区(同3)では自民、民進の候補が優勢で、公明候補は自民の支援を受けているものの、共産にリードを許している。公明の選対幹部は「全国に広がる共産の勢いは想定以上だ」と注視する。(産経新聞 6月24日7時55分配信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160624-00000053-san-pol
<2016参院選>改憲「3分の2」カギ握る大阪選挙区の情勢を独自調査(一部抜粋)
・浅田均氏(おおさか維新の会)、松川るい氏(自民党)が先行し、石川博崇氏(公明党)も堅調だ。そして5月末に擁立が決まったばかりの高木佳保里氏(おおさか維新の会・2人目)が知名度不足を挽回し急速に追い上げている。それを渡部結氏(共産党)、尾立源幸氏(民進党)が追っている状況だ。
・政権を支持する層からは、松川(自民)、浅田(維新)、石川(公明)各氏がほぼ横並びで支持を得ており、高木氏(維新)がそれに次ぐ水準で支持を得ている。一方、政権不支持層からは、渡部氏(共産)が最も支持を集めており、尾立氏(民進)がそれに次ぐ支持を得ている。だが加えて、実はこの政権不支持層からは維新の候補2人も、合計で尾立氏に匹敵する支持を得ているのだ。
・「民・共」の枠組みが政権不支持層の受け皿になりきれていない点はある程度全国的な傾向として見られるが、大阪ではその「政権不支持層の受け皿」としての役割を一定程度を維新が引き受けている状態なのだ。(米重克洋・JX通信社代表取締役 2016年6月28日 0時21分配信)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yoneshigekatsuhiro/20160628-00059359/