1月7日に菅総理が発出した我が国で2度目の新型コロナ感染拡大の緊急事態宣言は、おそらく残念ながら1度目よりも格段に悪い形で不発に終わるだろう。
2度目の宣言では、東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県を対象に、①飲食店の20時閉店、②20時以降の外出自粛、③リモートワーク推進による出勤7割削減、④5千人を上限とするイベント入場制限ーこの4つの措置を翌8日から1ヶ月間続ける事が謳われた。
しかし、なぜ対象が1都3県だけなのか?なぜ営業自粛の対象が飲食業界だけなのか?なぜ期間が1ヶ月だけなのか?リモートワーク推進の掛け声だけで出勤7割削減も果たして実現出来るのか?なぜ5千人までならイベント開催もOKなのか?納得出来る説明は無かった。
確かに菅総理やコロナ分科会の尾身会長から「説明らしきもの」はあった。曰く「全国の感染者数の約半分が1都3県に集中している」「感染経路不明者の多くは飲食業界から出ている」「飲食する時はマスクを外すから、その時が最も感染しやすい」等々。
しかし、それらはいずれも単なる憶測に過ぎない。「感染者の約半分が1都3県に集中している」と言うが、そもそも感染者数そのものが、限られたPCR検査による不正確な数字だ。今まで一度も全国単位でPCR検査をした事がないのに、どうしてそんな事が言えるのか?
「感染経路不明者の多くは飲食業界から出ている」と言うに至っては、もはや噴飯物でしかない。感染経路不明で追跡調査も出来なくなっているのに、なぜそんな事が断定出来るのか?
今回の緊急事態宣言後の記者会見でも、「クラスター解析を基に導き出された結論」である事が強調された。しかし、私に言わせると、感染拡大初期ならともかく、これだけ市中感染が広まってしまった現段階で、未だにクラスター対策に拘っている事自体が異常だ。
クラスター対策と言うのは、例えば関空から感染者が何名、成田から何名出たから、海外渡航者を一つのクラスター(感染集団)と見做して、検査・隔離・治療するという手法だ。これでは実際に発症した感染者しか網の目には引っ掛からない。あくまでも初期段階の水際対策としてのみ有効な手法なのだ。
ところが、これだけ市中感染が広がり、発症者だけでなく無発症感染者、保菌者もいる中で、幾ら目に見える感染者だけを洗い出しても、モグラ叩きにしかならない。感染経路も追えない。
もはや水際作戦で対処出来る時期は過ぎ去った。もう今となっては、水際でチェックするだけでは不十分だ。むしろ全国民を対象に、積極的にPCR検査を実施して、まさに「寝た子を起こす」勢いで、感染者を隔離・治療しなければならない。そこまでやってこそ、初めて正確な感染状況が把握でき、対策も立てられるようになる。
いきなり全国民を対象にしたPCR検査が無理だと言うなら、せめて医療関係者や介護従事者、流通業や運輸業などのエッセンシャルワーカーだけでも、全国規模の検査を実施すべきであろう。
そんな事は、昨年春の最初の緊急事態宣言の段階から、既に多くの識者によって指摘されて来た。その前のクルーズ船隔離の段階で、国が鳴り物入りでクルーズ船を隔離したにも関わらず、肝心の検査も治療もろくにせず、感染者を野に放ってしまい、クラスター対策に失敗してしまった事を教訓に。
ところが、国はその識者の提言をも、まともに受け止める事が出来なかった。中途半端な一斉休校、休業要請で、それに対する所得補償もろくにしようとはしなかった。「私有財産に対する補償は出来ない」とか何とか言って。
それに対して、「これだけコロナが広まってしまったのも、それまでの数十年に渡る病院・保健所統廃合で、PCR検査もまともに出来なくなってしまったからではないか。その為に有効なクラスター対策も打てずに、傷口を更に広めてしまったからではないか。これは断じて自己責任なんかではない。政治家の責任による人災だ」として、国民や野党の要求で、10万円給付金や持続化給付金、雇用調整助成金を勝ち取って来たのだ。
その間、与党の自民・公明両党、大阪では与党で安倍・菅政権べったりの維新知事は一体何をしていたのか?自民・公明両党は、欠陥品だらけのアベノマスクをばら撒き、コロナ対策に得体の知れない利権を紛れ込ませ、GO TOキャンペーンで感染を更に悪化させただけではないか。
大阪でも、思い付きの雨ガッパ集めやイソジン騒動、不要不急の住民投票で行政や医療に混乱を持ち込み、思い付きのコロナ専門病院指定で病院職員の大量離職を引き起こし、直前まで「緊急事態宣言は不要だ」と言いながら、政府が宣言した途端に「必要だ」と風見鶏の掌返し。
そして今も、我々庶民にばかり「我慢の3連休」や「勝負の3週間」を強いながら、自分達は隠れてこそこそ会食しているではないか。「時短営業しなければ罰則だ」と自営業者を脅しつけながら、雀の涙ほどの補償でお茶を濁そうとしているではないか。「勝手に病院から抜け出したら逮捕する」とまで言いながら、実際は入院も受診もさせられずに、重症者を自宅待機で死に至らしめているではないか。コロナ離職で失業者や自殺者が急増しているのに、持続化給金や家賃支援給付金の支給打切りを画策しているではないか。
その窮状を放置して、幾ら飲食店だけを悪者にして、形ばかりの緊急事態宣言でお茶を濁そうとしても無駄だ。パチンコ屋が開いているのに休日に自宅に閉じこもっておれる人間が一体何人いるのか?働き方改革が進まず長時間労働や満員電車での通勤も無くならないのに、どうやってリモートワークを推進出来るのか?
ドイツのメルケル首相は「国は誰一人として見捨てない」と言い切った。台湾のコロナ担当大臣は中国・武漢からたった一人救出出来なかっただけでも涙を流した。ところが菅はどうか?緊急事態宣言後の記者会見でも原稿の棒読みに終始し、一部の御用記者と結託して、形ばかりの質疑応答でお茶を濁していただけではないか。
こんなシャンシャン大会の記者会見なら不要だ。これでは戦時中の大本営発表と同じだ。自民党政府は、二言目には「中国ガー、北朝鮮ガー」と言うが、自分達の方こそ中国や北朝鮮と瓜二つではないか。二言目には「悪夢の民主党政権」と言うが、自分達の方がよっぽど悪夢ではないか。森友・加計や「桜を見る会」、アベノマスク、GO TO利権を筆頭に。
こんな奴らの言う緊急事態宣言なぞ、誰もまともに聞く気にはなれない。だから感染者は一向に減らず、いつまで経ってもコロナは終息しない。こいつらを権力から放逐しない限り。