昨日、税務署に確定申告を済ませて来ました。確定申告なんて会社員やバイトには関係ないと思っていたら大間違い。サラリーマンでも、災害に遭ったり、住宅を建て替えたり、大病を患うなどして、急に多額の出費を強いられた場合は、申告すれば幾許(いくばく)かの金が税金から差し引かれて戻って来ます。私の場合も、保険の効かない腰痛治療で毎年多額の出費を強いられているので、確定申告を毎年欠かさずやっています。
どれほどの医療費になれば申告できるのかというと、1年間で(1)10万円か(2)所得収入の5%の、どちらか少ない方を超えた場合です。所得金額というのは、年収から社会保険料などの必要経費を差し引いたものです。年収200万円だと所得金額は大体120万円位になります。その5%の6万円以上の医療費については、申告すれば税金が免除されます。何故(1)(2)の2通りも基準を設けているかというと、一律10万円だけでは低収入の非正規労働者が不利に、逆に所得割合だけでは正社員が不利になるからです。
この確定申告の計算も、昔は手引書とにらめっこしながら手書きでしたものですが、今はパソコンで簡単に作成できるようになりました。12月の給与明細と一緒に会社から貰った源泉徴収票を見ながら、国税庁HPの申告書作成フォームに所定の金額を順次打ち込んで行くだけです。但し、医療費の計上だけは今も少々繁雑です。直ぐに医療費の計上ができるように、日頃から領収書を医院別にまとめて整理しておかなければなりません。これが意外と面倒なので確定申告しない人も結構います。
そうして集めた医院の領収書を、所定の封筒に入れ、源泉徴収票を添付した確定申告書と一緒に税務署に提出すれば、1ヶ月後には還付金が銀行に振り込まれます。確定申告の時期になれば特設の申告会場が設けられ、税理士も大勢いて手取り足取り教えてくれるので何の心配もいりません。但し、提出期限間近になると会場は混雑するし、還付金の受け取りも遅くなるので、申告する場合は早めにした方が良いでしょう。
それにしても医療費の高い事。去年1年間だけでも26万円もの出費となりました。なぜそんなにもお金がいるかと言うと、
(1)隔週日曜に1時間半、完全予約制の鍼灸(しんきゅう)治療に1回6千円。それが月2~3回受診で年間計15万6千円。(非保険)
(2)前記以外の日でも腰や腕が痛い・だるい場合は不定期に整骨医に。そこが1回数百円の月数回で年間約2~3万円。(保険適用)
(3)整骨医は保険が効くが気休め程度にしかならないので、たまには大阪市内のマッサージ店に。1時間2980円で月数回、年間では5~6万円。マッサージと言うと世間ではスパのイメージが強いですが、私にとってはもはや治療に近い。(非保険)
(4)その他に風邪引きやメニエール症候群の治療も受けたが、これらは全体の中では微々たるものです。(保険適用)
そういう事で、医療費の大半を腰痛・頚腕(けいわん)症の治療代で占めています。その殆(ほとん)どが保険適用外なので医療費がかさむのですが、では保険が効けばそれで良いかと言うと、そうでもないのです。確かに、医師の判断があれば今でも鍼灸治療にも保険が適用されます。でも、保険では診療報酬(保険から医師に支払われる額)が余りにも低い為、医者は薄利多売に走る様になるのです。鍼灸でも患者一人当たりにかける鍼(はり)の本数や治療時間を削り、ひたすら回転率だけを上げようとします。これも私が実際体験した事です。この矛盾を解消するには、鍼灸医への診療報酬を上げるしかないと思います。
ここまで読んで、「医者に頼らずフィットネスクラブで身体を鍛えたらどうか」と思う人も、中にはおられるかも知れません。私もそう思い、近くのフィットネスクラブに一時通った事もありました。しかし、友達同士で行くならまだしも、一人で通っても放ったらかしにされるだけで、行っても全然面白くなかったし、仕事とも両立できなくなり、結局長続きしませんでした。自宅でストレッチ体操にも挑戦しましたが、こちらも仕事が忙しくて長続きせず。
それでも、私の場合はまだ「たかが腰痛」で、内臓・心疾患や難病など命に別状ある病気を抱えていないだけマシかも知れません。それに、腰痛といっても慢性的なもので、今の所は仕事や生活に直接支障を来すほど酷くはありません。しかし、それでも「されど腰痛」、過去には痛みを我慢できずに欠勤した時もありました。欠勤日数が連続3日を超えると途端に会社の対応も酷くなりました。もう「出て来れないなら辞めたら?」と言わんばかりの対応でした。そういう経験もあるので、当日欠勤だけはしない様に、自分でも体調管理には気を使っています。
でも、誰も好き好んで腰痛になった訳ではありません。誰でも長年、冷蔵庫・冷凍庫で朝早くから5キロ、10キロの商品を絶え間なく運んでいたら、腰や腕を痛めるし身体も固くなります。それに加え、「ブラック」生協時代の超長時間労働(酷い場合は早朝から深夜まで)、超サービス残業(それでも残業代は付かず)、軍隊式労務管理から来る精神的ストレスの影響も大きかったと思います。医学的な専門知識や検査機器もない素人の個人には因果関係が証明できないだけで、腰痛が業務に起因しているのは明らかです。
なのに、何故、年間26万円も払わなければならないのか。昨今、「医療費の無駄遣い」や「バラマキ福祉の弊害」を指摘する声をよく聞きますが、そんなに国民は医療費を無駄遣いしているのでしょうか?
そこで少し調べましたが、実際は全然違いました。それは厚労省HPに掲載の上記図表からも明らかです。OECD(経済協力開発機構)加盟国(簡単に言えば先進国の事)のGDP(国内総生産)に占める医療費の割合や国民一人あたりの医療費の額を比較したものですが、日本は多い順から数えて前者で第16位、後者でも第19位です。いずれも第1位の米国の半分以下の数値で、ヨーロッパ諸国の大半よりも少ないのです。その代わりに受診回数は多いのですが、これも小まめに受診しているからこそ、病気をこじらせて医療費がかさむのを逆に防いで来たのではないでしょうか。
それと対照的なのが米国です。この国は断トツ首位で医療費の額が多いですが、それは、日本の健康保険の様な公的医療保険制度が存在せず、重病化するまで病院にも行けない人が多いから、逆に医療費がかさむのではないでしょうか。米国には民間の医療保険しかなく、バカ高い保険料を払っても、いざ必要な時にはなかなか保険がおりず、盲腸の手術代にも事欠き命を落としたり破産に追い込まれるケースが後を絶ちません。それを描いたのがマイケル・ムーア監督の映画「SiCKO(シッコ)」です。
その折角の日本の「国民皆保険制度」を、「医療費の無駄使い」や「バラマキ福祉」だとか難癖をつけて、国が医療費を出し渋るから、患者のたらい回しや、公立病院の赤字や、病院勤務医の長時間労働や人手不足といった問題も起こってくるのです。そして、国の財政赤字も、元をただせば、医療費ではなく公共事業や軍事費の無駄使いの所為(せい)です。米軍基地から地代も徴収せず、逆に「思いやり予算」と称して米軍に至れり尽くせりの「バラマキ」をしたり、消費税を年々上げながら、福祉には全然回さず法人税の値下げばかりしたり、並行するJR在来線を廃止してまで新幹線を作ったり(現に長野新幹線開通と引き換えに信越本線が軽井沢付近で寸断されてしまった)。例を上げればキリがありません。
つまり、政府の「やらずぼったくり」の所為で財政赤字になったのに、そのツケを国民にばかり押し付け、健康保険の負担を出し渋っているから、鍼灸や整体にはまともに保険が適用されずに、こんなに医療費がかさむようになり、そこから幾許(いくばく)かの金額を取り返す為に、しち面倒な確定申告もしなければならないのです。そこまでしても、返って来るのは僅か1万円余りです。何度も言いますが、誰も好き好んで腰痛になった訳ではありません。これは自己責任なんかでは断じてありません。医療費をもっと安くしろ!