アフガン・イラク・北朝鮮と日本

黙って野垂れ死ぬな やられたらやり返せ 万国のプレカリアート団結せよ!

「偽装請負がまん延している日本社会に未来はない」

2006年09月05日 02時13分25秒 | 一人も自殺者の出ない世の中を

・光洋シーリング 請負労働者59人 直接雇用を勝ち取った(しんぶん赤旗)
 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-09-02/2006090201_01_0.html
・光洋ST派遣労働者・直接雇用ついに実現!(JMIU)
 http://www.jmiu.com/katudou/P20060801.htm
・「偽装請負」労働が製造業で横行 実質派遣、簡単にクビ(朝日新聞)
 http://www.asahi.com/special/060801/TKY200607300428.html
・派遣100番
 http://www.asahi-net.or.jp/~RB1S-WKT/indexhkn.htm
・フリーターが語る渡り奉公人事情
 http://blog.goo.ne.jp/egrettasacra

 徳島県に光洋シーリングテクノというトヨタ系列の自動車部品メーカーがあります。そこで働く請負労働者が、約二年前に労組を結成して、低賃金で劣悪な労働条件の是正と直接雇用の実現を会社に求めて闘ってきたのですが、この度そのうちの59人を直接雇用する事を会社に認めさせる事が出来ました(上記しんぶん赤旗・JMIUの記事参照)。
 
 昨今、正社員をリストラしてこれをアウトソーシングの労働者に置き換える動きがますます広がっています。これらのアウトソーシング労働者は、請負と派遣に大きく分かれます。
 請負(業務請負)というのは、メーカーの部門・ラインを丸ごと請負った請負会社の社員がメーカーの業務を遂行する仕組みです。この場合、メーカーは請負会社社員に直接仕事の指示をする事はありません。他方、それに対して派遣というのは、メーカーが派遣社員を使って同様に業務を遂行する仕組みで、この場合は派遣社員に対する仕事の指示はメーカーが行います。

 この様に請負と派遣とでは業務上の責任の所在が明確に異なるにも関わらず、派遣法の規制(例えば、1年以上経ったら直接雇用に切り替えなければならない、等の)を逃れる為に、形だけ請負として働かされる、そういう偽造請負と呼ばれる違法行為が、大企業も含めた全国の製造現場に広がっているのです(上記朝日新聞記事参照)。前述の光洋シーリングの職場もそのうちの一つで、請負会社の社員が実際は派遣の形で働かされているのです。

 そして、企業側の雇用・管理責任の所在が徹底的・意図的に曖昧にされる中で、各種の不当労働行為・不当解雇・労災隠しや、旧サイトでも取り上げたヨドバシカメラ社員による派遣社員暴行傷害・便器舐めさせペナルティなどの、人権侵害事件が各地で頻発している。これが小泉構造改革の下での労働規制緩和の実態です。

 光洋シーリングで働く労働者が、所属会社や雇用形態の垣根を越えて、アウトソーシング労働者としては画期的な労組結成にまで踏み出して闘う事で、初めて今回の勝利を勝ち取る事が出来ました。しかし、今回直接雇用を勝ち取ったのは請負労働者全員ではありません。以前から徳島労働基準局による是正指導の対象になっていたり、比較的勤続年数が長かった人に限られています。また企業側は「それらの人たちを業務請負から一旦契約社員にした後に改めて直接雇用に切り替える」旨の事を明言していますが、いざ切り替える段になって急に契約解除にしてしまうとも限りません。せっかく労働争議で和解を勝ち取っても後に企業側が和解条件を反故にしてしまうといった事例も少なくないですから。手放しで喜ぶには未だ少し早い様な気がします。

 実は私も、今の偽装でない一応本当の業務請負の職場に辿り着くまでには、何度もこういう偽装請負会社の面接も受けて実際に働いたりもしてきました。

 ある請負(実態は派遣)会社の登録説明会では、自分たちの違法行為は棚に上げて、やれ「遅刻はするな、無断欠勤をするな、会社の備品・貸与物は丁寧に扱え」と、求職応募者をまるで子供扱い。挙句の果てには「遅刻したら給与減額などのペナルティもある」などとほざき出したので、そんな会社の説明会などバカらしくてそれ以上聞く気にはなれず、その場で辞退。

 またある会社では、その説明会の求人には採用されずに別の現場もあるという事でそちらの方で採用されたのですが、その堺市内の青果市場での輸入バナナの選別作業では、請負(実態は派遣)先の××××(会社名)の社員がエラソーに、自分たちのフォークリフトの運転の乱暴さは棚に上げて、やれ「リフトに近づくな、リフトが来たら自分から避けろ」みたいな訓示を朝礼で堂々とする始末。次の作業に移るまで現場で待機していたら、自分たちの指示放棄は棚に上げての「サボるな!」発言。そして、ある日集合場所に来たら誰も居ず送迎の車も来ず、こちらから請負(実態は派遣)会社に電話して帰って来た返事が「今日は現場の都合で臨時休業」、こういう「臨時休業」が翌日もその翌日も続いた末に、「ウチも××××に振り回されて迷惑してる、何ならもう出勤せずに他を当ってくれても結構」と居直って来たので、貰うべきもの(それまでの賃金)は貰った上で、その会社には完全に見切りを付けました。

 それでも未だ私などは可愛い方で、上記リンクの「フリーターが語る渡り奉公人事情」というブログを読むと、更に身につまされるレポートが一杯出てきて、怒りが沸々と湧いてきます。寂れた郊外の外れにあるその派遣会社の寮は二人一組の相部屋で、食事は揚げ物ばかり。寮周辺の住民もそこに寮がある事を誰も知らず、地域や社会との関係を断ち切られた孤立状態の中で、そこで働く労働者は朝早く送迎バスで出勤し深夜に寮に帰り着き、ただひたすら寝て働くだけの毎日。週1日の法定休日もひたすら寝た後はせいぜい自分の身の回りの用事を済ますだけ・・・。その上の「派遣100番」のサイトで必要最小限の法律知識を身に付けて理論武装する事とも併せて、必読のブログです。

 過去の消費税値上げ分は全て法人税などの金持ち減税に姿を変えています。国の財政赤字は医療改悪などの形で庶民にツケ回しされ、地方では病院経営が成り立たず産婦人科医も居なくなり子供が産めないという事態も起こっています。国際競争力強化の口実で労働者の生活費が極限まで切り捨てられ、大企業が史上空前の企業利益を更新する一方で産業空洞化と国民生活破壊が同時進行する。

 こんな新自由主義の政治を推進してきた奴らが、マスコミの前では一端の愛国者気取りで偉そうに国益論をぶつ。日米軍産複合体の金儲けの為の欠陥だらけのミサイル防衛構想にカネをつぎ込み、米軍の都合でしかない沖縄海兵隊のグアム移転費用を日本国民の税金で負担する。北朝鮮のテロを格好の口実にしながら、実際には日本とも北朝鮮とも無関係な世界の戦場に米軍侵略軍の下請けとして国民を駆り出す。国家の政策によって経済格差を拡大させておきながら、「社会保障や生活保護などに頼るな、自律・自助・自己責任、自分の生活は自分で守れ、悔しかったら再チャレンジで人を蹴落として勝ち組に這い上がれ」との給う。

 医療改悪にしても、そう。政府は「国民医療費の伸び抑制」や「社会的入院の解消」をその口実に持ち出してきていますが、その一方で、国民を過労死するほどこき使い、保健所を統廃合して予防医療の機能を奪い、大量の医療難民を生み出しておいて、何が「医療費の抑制」か。リストラと産業空洞化で地域社会を崩壊させ、長時間労働で子供も産めない社会を作り、相互扶助機能を地域社会から奪っておきながら、何が「社会的入院の解消」か。

 前述の光洋シーリングの労働者が「偽装請負がまん延している日本社会に未来はない」と言っていたという事ですが、正しく至言です。こんな国の在り様はどう見ても異常です。

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4 コメント

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おめでとうございます (沢村圭一郎)
2006-09-05 09:13:07
お祝いが遅れて申し訳ございませんでした。がんばってください。

社会主義者さんとは、金正日独裁政権崩壊と拉致被害者全員奪還という2点以外は考えがまったく違いますが、一致点に基づいて、共通の敵金正日と闘ってまいりましょう。

 “別個に並んで共に撃つ!”

 時折、遊びにまいります。掲示板でもご紹介しておきました。

 
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Unknown (社会主義者)
2006-09-05 12:26:24
 沢村圭一郎さん、それと前号の記事にコメントを寄せていただいたSaftyさんも(本当は当該記事の欄でレスしなければならないのでしょうが^^)、どうも。当ブログにもコメントを寄せていただき、有難うございます。今までのエントリーは反戦・反リストラ関係のものが中心でしたが、これからは北朝鮮問題についても頑張って投稿していきますので、宜しくお願いします。



 Saftyさん、いろいろ技術的なアドバイスもしていただき、有難うございました。私の方も、最初は面食らっていたトラックバックも何とかモノにする事が出来るようになりました。早速sinkenさん所のブログと、上記の「奉公人事情」さん所に、トラックバックを張らせていただきました。



 沢村さんのHPでも私のブログへのリンクを復活させていただき、有難うございます。私のリンク集での記載と同様に、紹介文の記述に苦労の跡が伺えます(尚、これは決して嫌味で書いているのではありません、念の為)。以前の相互リンク切断から今回の再復活への経緯についても、メールでは一定の意見交換もさせてもらいましたが、ブログ読者の方にもけじめをつける必要があるかと思いますので、その事についても別途書かせてもらいますね。



 最後に、自分のエントリー記事に対する自己レスも書いておきます(本当はこれがコメントの真っ先に来るべきなのでしょうが)。厚労省の方でも早速、局長通達の形で、「偽装請負」の監視・規制に本格的に乗り出してきた様です。これはこれで一歩前進には違いないのですが、単に「請負か派遣かを明確にすればそれで良し」として、労働者の低賃金・無権利状態をどう改善するかという根本問題には何ら手をつけない、寧ろ違法状態を表向き隠蔽する方向で一件落着を図るのではないかという危惧も同時に感じています。実際、光洋シーリングの件でも徳島労働基準局はそういう方向に流れていましたから。
返信する
はじめまして (ワタリ)
2006-09-08 22:52:01
はじめまして。「渡り奉公人事情」の管理人、ワタリといいます。トラックバックありがとうございました。



今自分がやっているのは労働・失業問題のブログなのえ、アフガン・イラク・北について詳しく書く余力はありません。

しかし、そうした一連のアメリカの戦争に、日本が前面協力させられるための一連の政策が進行中であることは認識しています。

軍備増強路線と、労働基準法の骨抜き、ならびに医療や教育や憲法における改悪路線には、反対していきたいとわたしは思います。

たとえば北によるミサイル実験も、アメリカやフランスなど他の国もやっていることです。それをさも、北だけが特別異常なことをやっているかのような報道はバランスが悪い。

いったんアメリカの論理のなかではずれものにされたり、「落ちこぼれ」たりすると、自己責任の悪者扱い。それはイラク人質からフリーター・ニート問題にいたるまで共通しています。

なんとか今のうちに、そうした非人道的な世界を作り出す風潮をおしとどめなければならない。そのためにも、こうしてブログで情報発信するのは大切なことです。

こちらのブログと自分のところは信条やジャンル・スタイルが違いますが、意識の共通する部分では応援しています。



返信する
ワタリさん、こちらこそ初めまして。 (社会主義者)
2006-09-09 00:39:11
 折角そちらにお邪魔したのに、トラックバックだけしただけでお暇してしまい、申し訳ありませんでした。



 私ところのブログも、根本にあるのは反戦・反リストラですよ。



 そもそも私が前のHPを立ち上げたのは、2001年の911テロとそれに続くアフガン戦争がキッカケで、「テロにも報復戦争にも反対」というのがその主張でした。



 その後、翌02年の最初の小泉・金正日会談による拉致問題の顕在化を契機に、私も当時の拉致板に投稿するようになり、自分のHPでもその問題について取り上げるようになりました。上記の沢村さんや別エントリーでコメントを寄せていただいたSaftyさんは、その流れで知り合いになった人たちです。それぞれ、私とは考え方は異なる人たちですが。



 また、私は実は、911テロの頃の直前まで、某地域生協に勤めていました。所謂「民主経営」ですが、内実は結構非民主的で、一部経営幹部による専横や事業私物化が問題になったりした職場です。私は北朝鮮問題を見る場合でも、前職の職場の事例とも重ね合わせて、彼の国の個人崇拝や人権問題の背景についても考えてみたのです。アフガン・イラクの事を考える場合も北朝鮮の事を考える場合も、日本国内の問題を考える時と同様に、根本に在るのはあくまで「反戦・反リストラ、搾取・抑圧反対」です。



 02年の拉致問題顕在化から半年ぐらいの間は、左でも右でも、それぞれの在野の草の根の部分では、「兎に角、この問題については、何とか解決の糸口を見出さなくては」という意識は、程度の差こそあれ、各々に共通してあったように思います。当時の拉致板などは左翼の投稿者も結構居て、右翼主宰者の雑談板で左翼同士が意見交換しあったりという事すらありました。今からすれば考えられない事ですが。



 ただ、イラク戦争の頃ぐらいから、拉致板が「救う会」路線色を強く打ち出すようになってからは、拉致板とそうでないサイト・ブログとの間での「棲み分け」が進み、私などは後者の方に属するようになりました。実は私の「社会主義者」というハンドルネームも、拉致支援者を詐称するネットウヨに対するアテツケの気持ちで付けたのです。



 今は、北朝鮮問題については、「救う会」や「拉致板」とは一線を画し、太田昌国さんや石丸次郎さんや金国雄さんやコカンホさんなどと同じ思想的立場で向き合いながら、たとえ「救う会」系であっても、ネットウヨクの荒らし・煽りや、拉致板の基準を拉致板外のサイト・ブログにまで持ち込んで強要する(拉致板帝国主義=ラ帝)ような立場とは一線を画す方との対話は拒まない、というスタンスでいます。

 

 そういう事で、私のブログは「アフガン・イラク・北朝鮮」と銘打っていますが、日本国内の事も当然取り上げています。その後にわざわざ「日本」も入れてブログの名称にしているのも、その為です。ワタリさんのブログにも近々またお邪魔させてもらいますので、その時は宜しくお願いします。 
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