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アフガン・イラク・北朝鮮と日本

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西成・釜ヶ崎こそ反貧困の世界遺産に!

2019年12月11日 10時37分17秒 | モリカケも忖度もない公平な社会を
 
ホテル建設より先にやらなければならない事がもっと他にあるだろう。」という事を、大阪・西成のあいりん地区(旧称:釜ヶ崎)の例も引いて先日ブログに書きました。しかし「現実に、あいりん地区に外国人観光客が押し寄せて来る中で、旧住民の日雇い労働者やホームレスの人達と共存を図るにはどうしたら良いか?」という事についても、少し考えてみたいと思います。
 
アフガニスタンのタリバンが何故バミヤンの石仏を破壊したのか?シリアのIS(イスラム国)が何故パルミラのローマ遺跡を破壊したのか?
イスラム原理主義テロリストの自分達からすれば、それらの遺跡は異教徒による侵略の象徴でしかないからでしょう。あるいは、放牧や農業、観光客相手の物売りで生計を立てるしかない自分達を、好奇の目で見る観光客の差別的眼差しに我慢ならなかったからでしょう。

以上は、あくまで私の想像に過ぎません。でも、今なら何となく理解出来きます。私達ですら、非正規労働者の少ない給与では、食って行くだけで精一杯なのです。非正規労働者にとっては、今やフルーツすら贅沢品となってしまいました。その中で、夏場は物流センターでスイカの仕分けに追われています。自分達はスイカも満足に買えないのに、何故毎日、重たいスイカの仕分けに追われなければならないのか?腹が立って仕方がない。「一層の事、スーパーのスイカ売り場をテロで爆破してやろうか!」。私達ですら、そういう気持ちになる時があるのです。

エジプトやインドネシアのバリ島などの観光地で、たびたびテロが起こるのも、先進国との経済格差や、白人観光客の差別的眼差しに対する現地民の怒りの現れではないかという気がします。勿論、そんな幼稚な論理をそのまま肯定する事は出来ません。それどころか、アフガニスタンの平和復興、貧困撲滅の為に、白衣を脱いで自費で用水路を作り、不毛の砂漠を沃野に変えた中村哲医師すら、異教徒の侵略者と錯覚して殺害してしまうテロリストの狭量さには、憤りしか感じません。

その中で、あいりん地区は独特の立ち位置を占めています。なるほど、あいりん地区にやって来る外国人観光客は、あいりん地区に魅せられてやって来る訳ではありません。単に宿泊費や物価が安いからやって来るのに過ぎません。しかし、その宿泊費や物価の安さも、あいりん地区が日雇い人夫の寄せ場として差別されて来た結果なのです。逆に、ドヤ代や弁当代を吹っかける悪徳業者との闘いの中で、勝ち取って来た成果でもあるとも言えます。一見の観光客も、そのメリットを享受している意味では、あいりん地区の問題と無縁ではあり得ません。そこに、単なる観光客と現地民の垣根を超えた、交流や相互理解が成り立つ可能性を見出す事が出来るのではないでしょうか。

ベトコンがゲリラ戦で立てこもった秘密の地下トンネルや、米兵殺害用の落とし穴すら、今やベトナム観光の定番コースに組み入れられています。チェ・ゲバラが政府軍に処刑された南米ボリビアの山村も、今や革命の聖地として、世界中から観光客が押し寄せる様になりました。あいりん地区も、この様に過去の被差別の歴史を逆手に取って、反貧困運動発祥の地、新たな観光地として再生出来るのではないでしょうか。

あいりん地区では毎年、野宿者支援団体の手で、夏祭りや越冬闘争が取り組まれて来ました。夏祭り会場の三角公園では、ライブコンサートやスポーツ行事だけでなく、一年間で行き倒れになった野宿者の盆の慰霊祭や遺影展も執り行われて来ました。年末年始の越冬闘争でも、炊き出しや餅つき大会だけでなく、野宿者襲撃に備え、「一人の餓死者・凍死者も出すな」と、見回りパトロールや集団野営の活動が繰り広げられて来ました。近くのライブハウスでは、反原発の講演会や西成ジャズのコンサートも行われてきました。
 
それらの取り組みも、今後は野宿者・支援者だけの運動で終わらせるのではなく、観光客も巻き込んだ社会啓発の場として、積極的にアピールしていくべきではないでしょうか。時々、ユーチューバーが、西成の野宿者・日雇い労働者や、地域のドヤ・居酒屋・弁当屋を興味本位で動画に載せています。私達は、それらの興味本位な動画とは一線を画した上で、あくまで啓発活動の一環として、支援体験ツアーを西成の観光コースに組み込むのです。そういうアプローチの仕方もありではないでしょうか?
 
あいりん地区には、それ以外にも、映画「さとにきたらええやん」の舞台になった児童養護施設「こどもの里」などの施設もあります。地区の西側には、地区や在日コリアンの集住地域も広がっています。その一角に大阪府立西成高校があります。いわゆる低学力校で、せっかく高校に入学しても中途退学者が後を絶ちませんでした。学校は試行錯誤の末に、ある教育方針を打ち出します。それは、学校のマイナスイメージでしかなかった教育格差や貧困の問題を、従来のように恥と捉えるのではなく、むしろ積極的に教材に取り上げる事で、「貧困や差別に負けない学校作り」を目指したのです。かくして、西成高校の反貧困学習は生まれました。

 

西成高校の反貧困学習の中に、「不公平な椅子取りゲーム」の授業があります。生徒をA・Bの2つのグループに分け、Aチームがより多く椅子に座れるような不公平な椅子取りゲームを敢えて行います(詳しくは当該ブログ記事を参照)。その後、不公平なルールの種明かしを生徒にすると、案の定「ずるい、不公平だ」と声が上がりました。そこで「不公平を解消するにはどうすれば良いか?」質問すると、「もっと公平なルールを設定する」という、ありきたりの答えしか返って来ませんでした。しかし、いくらルールを公平にしても、常に一定数の人が椅子に座れない状況は改善されません。本当に全員が公平に椅子に座れるようにするには、全員の椅子をあらかじめ用意しておく以外にないという事を、生徒に悟らせるのが、この授業の真の狙いだったのです。

そうして、貧困は自己責任ではなく社会問題であり、それを解決するのは自分達である事を、生徒は、社会科の授業やホームルーム、学校行事を通して学んでいきます。バイト先で生徒が不当解雇に遭った事例から、労働基準法や労働組合法、憲法の基本的人権について学びます。それと同時に、履歴書の書き方や就職面接の受け方、介護などの仕事の重要性についても学び、単なる知識の丸暗記ではなく、生きていく上で必要な真の学力を身に着けて行きます。それが西成高校の教育方針です。

それらの先進事例に学ぶ訪問ツアーを企画しても面白いと思います。堺市の百舌鳥・古市古墳群が世界遺産に認定されたと、最近話題になりましたが、私に言わせると、本当に仁徳天皇の墓なのかも定かでない、時の支配階級が民衆を酷使して無理やり作らせた古墳よりも、むしろ、あいりん地区や西成高校の反貧困運動の実践の方が、よっぽど世界遺産に認定されるべきだと思います。

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