【進撃の巨人の世界】未だ紛争が絶えないパレスチナに行ってみた。
西成の超有名YouTubeチャンネル「ジョーブログ」のパレスチナ訪問記。
撮影者のジョー君は、西成あいりん地区で居酒屋「レディゴー」経営の傍ら、西成の日常や日本各地の旅行記を動画にアップするYouTuberだが、今回は何と紛争の続くイスラエルのパレスチナ自治区を訪問。
数年前の動画だが、いつもと同じ軽快なノリで、複雑なパレスチナ問題をここまで分かりやすく語れる事に驚き。やはり超有名YouTuberだけある。
日本のマスコミは、とかくイスラエル目線から、パレスチナのハマスだけをテロリストと断罪。イスラエルが今までパレスチナに対して行って来た住民監視、土地強奪、財産取り上げについては黙殺。その上で、悲惨な戦場の様子だけを取り上げ、「お涙頂戴」報道で視聴率稼ぎ。そんな皮相な「お涙頂戴」報道を、安全な茶の間からいくら見ても、抑圧される側の苦しみや怒りは分からない。
その偽善的な報道姿勢は、暴力団や悪徳業者による日雇い労働者に対するピンハネや暴力支配には目を瞑り、釜ヶ崎の活動家やホームレスだけを、興味本位に「テロリスト」や「犯罪の温床」と一方的に描く西成暴動のマスコミ報道と同じだ。
他方でパレスチナも、自治区とは名ばかりで、高い壁やフェンスに囲まれた狭い土地に押し込められ、農地や家屋も取り上げられ、移動するにも許可がいる。イスラエル兵に始終監視され、銃口を向けられ、その時の気分次第で、検問も封鎖される。食料や日用品も満足に搬入出来ないので、自治区の中は年中飢餓状態。
ジョー君はそれを「イスラエルによる植民地化」「まるで『進撃の巨人』の世界」と評したが、まさにその通り。かつてアパルトヘイト(人種隔離政策)が行われた南アフリカでも、黒人は不毛の荒野に押し込められ、その狭い居住区で名ばかりの「自治」や「独立」を与えられた。トランスカイやボフタツワナなどの「独立国」がそれだ。その実態は「天井のない監獄」。まさに釜ヶ崎と同じだ。
確かに、ハマスによるイスラエル市民に対する拉致は許されない。しかし、それはイスラエルによるパレスチナ市民に対する拉致、財産強奪、戦争挑発も同等に報道して初めて言える事。
パレスチナ自治区の中に何故イスラエルの入植地があるのか?同じテロなのに、イスラエルの死傷者が数十人なのに対して、パレスチナの死傷者は何故数千人にも上るのか?
「我々を高い塀で囲い込み、檻の中に閉じ込めようとするイスラエルは、我々を動物扱いしている。我々もイスラエルのユダヤ人と同じ人間だ。我々を動物扱いするな!」とのパレスチナ人の叫びを、あなたはどう受け止めるのか?
イスラエルの街や入植地は今もビジネス客や観光客で賑わっているのに、道一つ隔てたパレスチナ人居住区は荒廃したスラムのまま狭い地域に押し込められ、買い物で外出する際もイスラエル兵に検問で嫌がらせされる。その事を抜きにして、ガザやパレスチナを語る事は出来ない。
(追記)
パレスチナ問題は上記4枚の地図を抜きにしては語れない。
一番左はイスラエル独立前の英国委任統治領パレスチナの領域。領土の94%はアラブ人(パレスチナ人)の土地だった。それがナチスの迫害などによってユダヤ移民が急増し、アラブ人との衝突が激化。手を焼いた英国は遂に委任統治を手放す事に。
その右が国連によるユダヤ・アラブ分割統治案の図。国連は1947年に、英国撤退後の混乱を鎮める為に両民族の2国家分割統治を提案。
しかし、どちら側からも拒否され、左から3番目の地図の形で、今のイスラエルとパレスチナ(ヨルダン川西岸とガザ地区)に分割される事に。ヨルダン川西岸はヨルダン領、ガザ地区はエジプト領となるも、どちらも1967年の第三次中東戦争でイスラエルの占領下に。後にイスラエルはシナイ半島のみエジプトに返還。
1993年のオスロ合意による和平で、ようやくパレスチナの自治が認められる事になったが、自治政府の権限はパレスチナ領域の2~3割程度(元委任統治領の8%)にしか及ばず。それ以外の地はイスラエルの警察や軍が管理し、パレスチナ人の土地や建物を一方的に接収。分離壁を築き、人と物の出入りを遮断。イスラエルはそれ以外にも、パレスチナ領域の中に入植地を建設し、パレスチナの領土を侵食し続けている。それを表現したのが一番右の地図だ。
日本のマスコミはハマスのテロだけを非難するが、どちらが本当のテロリストか、この地図を見れば一目瞭然。