脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

二段階方式-脳機能検査から生活を知る

2023年01月12日 | 二段階方式って?
新年最初の保健師さんとのやり取りをしながら、二段階方式の持つ「力」に感嘆してしまいました。
「年末にご助言いただいたA氏(独居)に、急展開がありました」ということばから始まったそのメールは、A氏死去のお知らせでした。12月16日に家庭訪問したヘルパーさんが、体調が悪そうだということに気づいたため、救急搬送そしてそのまま入院となりました。心不全と肺炎の診断で12月20日に亡くなられたという内容でした。
(1/7川奈ホテルの寒桜)

実は、A氏の脳機能検査結果を検討したのは12月12日。
脳機能検査の結果は前頭葉機能は大きく低下。とくにかなひろいテスト(ひらがな書きのおとぎ話の内容を読み取りながら、同時に母音に〇をつけていく検査。前頭葉の注意集中力や分配力にターゲットを当てたもの)は0点。
脳の後半領域、いわゆる認知機能検査(MMSE)は30点満点の18点。私たちはこの脳機能の状態にある人たちを「中ボケ」といいます。
(もう一息)

中ボケになると、家族は「全く話すことだけ聞いていれば正常というか、正常以上にたしかにと思わせられるようなことを言うんです。でもやることを見るとびっくりするようなことがつぎつぎに起こります。
食事の時だってびっくりするようなお行儀の悪さ…煮物とデザートとかとんでもないものを混ぜて食べてしまいます。これはマナーの問題じゃなくて味の問題なんでしょうね。もちろん料理を作ってもらっても塩辛すぎて食べられないものを作って、一人だけ平気で食べるとか。
着衣でも、着替えなかったり、重ね着したり、とんでもない格好で出かけようとしたり。
入浴の時は誰かの目が必要です。石鹸で洗わないときがあるかと思うと石鹸が残っている時もあります。洗濯済の下着を用意しても着替えてくれないし。トイレの汚し方もひどいものです」と訴えが止まりません。
(こんなにバッサリ切られていたのですが)

全部が、いわゆる「ボケちゃった」ところまではいっていない。
そして、話はそれなりのことが話せる。
この状態を「言い訳のうまい幼稚園児のよう」と家族は結論付けます。つまり幼稚園の子どもを一人で生活させられないのと同じくらい手がかかるということを訴えているのです。
(1/12富戸コミセン。咲きました)

A氏の脳機能検査の結果は、中ボケレベルだといいました。独居ですから、つまり幼稚園児が一人で暮らしている状態ということになります。
「今が何年か何月かもわからない状態ですよ。もう独居は無理です」という私の言葉に、保健師さんは「私もそう思いました」そして続けて「結果をお返しするときには、ご本人に説明してもおぼつかないので、包括の方にも来ていただいて説明します」
「さしあたって、そのやり方はいいと思います。ただ家族に結果を説明することは必須ですよ。もしも、御当人が亡くなった時に誰がお葬式を出すのか、考えてみてください。その方と連絡を取って一人暮らしは無理な状態ということを説明しなくてはいけませんよ。だって幼稚園の子が一人で暮らしているようなものですからね」と私。
一男二女の子どもがいたのですが、4年前に同居していた長男が急な病気で死亡。その後、2年前に妻が家を出ていきそこから一人暮らしが始まったという経過でした。長女は県外に暮らしていて、次女は市内にいるのですが不仲。「誰に説明するか検討してみます」との返事でした。

脳機能検査の結果を検討してみると、4年くらい前にそれまでの生活ができなくなるような大きな出来事が起こり、その結果「生きがいを感じることができない」生活に突入。脳の老化が加速されてしまったということが示唆されました。
「A氏の生活が、長男が亡くなられてはっきり変わってしまったかどうか確認してみて(ご本人には無理だけど)そこが納得いくようだったら、4年前だし、典型的なアルツハイマー型認知症ということになります」
ここが二段階方式の持っている力です。
(アッサムニオイザクラ)

このやり取りが前述のように12月12日。
保健師さんは一人暮らしが無理ということは理解してくれたと思いますが、多少トラブりながらでも一応生活はできていたということにちょっとした安心感はあったのでしょうし、ご家族との連絡もつかなかったのかもしれません。そして16日。ヘルパーさんが訪問した時にチアノーゼが出ていたそうです…

死亡後、ご家族その他からの情報を集めてみると、心臓病があったそうです。以前の保健センターとの予約も「体調が悪いから延期してほしい」ということが記録されていました。
考えても見てください。幼稚園の子どもが「今日は体調が悪くて熱があるみたい」というでしょうか?そばにいる親や先生が不調に気付いて対応しますよね。心臓病が悪化していて苦しかったのかもしれませんが、その時どうするか判断する前頭葉機能はもう働いていないのです。

私は脳機能検査の結果しか見ていませんから、その困難さが胸に迫ってきます。
保健師さんたちが、テストの結果を正確にキャッチして検査を受けられてた方の生活にもっと積極的に生かしてほしいと思いました。

by 高槻絹子




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