小布施町の認知症予防活動にかかわりを持ち始めて、20年を超えました。コロナ前までは、年に2回以上は訪れる文字通り第二の故郷となりました。
小布施駅
北信五岳の夕焼け
先日、一番最初に取り組んだ山王島地区の「脳のリフレッシュ教室」20周年記念誌の原稿を頼まれました。
「A4版1ページにまとめてください」教室がスタートした日のシーンから、本当にあれこれと思い出されることばかりで、数十ページあっても間に合いそうもない…でも、頼まれたら一応がんばるのが私流です。(原稿はこの記事の最後に転記してあります)
小布施駅
北信五岳の夕焼け
先日、一番最初に取り組んだ山王島地区の「脳のリフレッシュ教室」20周年記念誌の原稿を頼まれました。
「A4版1ページにまとめてください」教室がスタートした日のシーンから、本当にあれこれと思い出されることばかりで、数十ページあっても間に合いそうもない…でも、頼まれたら一応がんばるのが私流です。(原稿はこの記事の最後に転記してあります)
ちょっと振り返ってみました。当時、小布施町の保健師さんのトップであったT田さんが、ボケ(当時の言い方)予防に取り組まれたのです。まったく先駆的な取り組みでした。
20年誌のT田さんの原稿から抜粋させていただきます。
「…平成10年頃から認知症が急増し、介護の大変さをひしひしと感じていた時に『認知症は予防できる』との情報が入り、これだ!!と飛びつきました。
機会が有って、エイジングライフ研究所の所長様および高槻絹子先生方の
熱心なご指導と、山王島長寿会の役員様始め会員の皆様のご努力で、平成14
年に地域ぐるみの自主活動として山王島脳のリフレッシュ教室が始動しまし
た。略」
「…平成10年頃から認知症が急増し、介護の大変さをひしひしと感じていた時に『認知症は予防できる』との情報が入り、これだ!!と飛びつきました。
機会が有って、エイジングライフ研究所の所長様および高槻絹子先生方の
熱心なご指導と、山王島長寿会の役員様始め会員の皆様のご努力で、平成14
年に地域ぐるみの自主活動として山王島脳のリフレッシュ教室が始動しまし
た。略」
各地区をひとまとまりにして、ゆくゆくは全町に地区ごとの住民主体の認知症予防教室を展開していくという、大きな目標に向けた活動が山王島から始まったのです。
山王島に建立されたぴんころ地蔵様。400年前の馬頭観音様も一緒に。
山王島に建立されたぴんころ地蔵様。400年前の馬頭観音様も一緒に。
その第一番目の地区に選ばれたのが山王島地区。過ぎてしまえば、いい地区からスタートしたものだとよくわかります。
・地区としてのまとまりがいい。
・人間関係に優しさを感じられる。
・みんなから認められるリーダーがいる。
教室開始時は岩井茂松会長で、穏やかに話を聞いてくれて、教室の趣旨をよくわかってくださいました。
初めての試みですから、いろいろ気を使うことも出てきます。例えば教室の最後をしめる茶話会。みなさんのお楽しみタイムで当番さんが一人一人にお茶をついで回ります。
テーブルには、お漬物や煮物。秋には栗きんとん。
在宅介護支援センター(当時。今は地域包括支援センター)の用意したお菓子よりもおいしそうなものがたくさん並ぶのです。
私は岩井会長にちょっとお尋ねしました。
「負担に感じる方はいないでしょうか?」
「どうせ家にあるもんだろう。みんなが喜んでくれれば、本人もうれしいさ」
在宅介護支援センター(当時。今は地域包括支援センター)の用意したお菓子よりもおいしそうなものがたくさん並ぶのです。
私は岩井会長にちょっとお尋ねしました。
「負担に感じる方はいないでしょうか?」
「どうせ家にあるもんだろう。みんなが喜んでくれれば、本人もうれしいさ」
当番さんにもききました。
「この次に何を作ろうかと思って、TVや新聞にも目を通してます。だってみんなをびっくりさせたいもの!それにほめてもらったり、教えてあげたり、楽しいです」こう教えてくれたのはK島さんでしたね。
ぴんころ地蔵様の隣にお祀りされている六地蔵尊。帽子は季節で変わります。
「この次に何を作ろうかと思って、TVや新聞にも目を通してます。だってみんなをびっくりさせたいもの!それにほめてもらったり、教えてあげたり、楽しいです」こう教えてくれたのはK島さんでしたね。
ぴんころ地蔵様の隣にお祀りされている六地蔵尊。帽子は季節で変わります。
エイジングライフ研究所では、モデル地区でボケ予防教室を立ち上げる時には、地域の人間関係が密なところのほうがうまくいくということを強調しますが、その時、この山王島の雰囲気がいつも思い起こされます。
長く続いているところはみんな、温かい人間関係のあるところです。たくさん思い浮かんできました・・・
さて、一年目の教室最終回。
岩井さんは、参加者全員さらに在介のスタッフ、修了式に見えた助役さん、私たちに至るまで素敵な額入りの水墨画を記念品としてプレゼントしてくださいました。総数は60枚を超えていたのではないでしょうか。
岩井さんは、参加者全員さらに在介のスタッフ、修了式に見えた助役さん、私たちに至るまで素敵な額入りの水墨画を記念品としてプレゼントしてくださいました。総数は60枚を超えていたのではないでしょうか。
私はまた馬鹿な質問をしました。
「コピーされたんですか?」
「和紙はね、コピーできないんだ。全部手描き」と笑いながら教えてくださいましたね…岩井さんありがとうございました。
私に頂いた双鶴図
「コピーされたんですか?」
「和紙はね、コピーできないんだ。全部手描き」と笑いながら教えてくださいましたね…岩井さんありがとうございました。
私に頂いた双鶴図
自他ともに「頭の良い」土屋先生。教室最終回には「晴れ渡った空のように頭がすっきりしている」って言われましたね。
赤い眼鏡の福松さん。たくさん写真を撮ってくださいましたね。
ぴんころ地蔵様
だんだん、各地区で教室が立ち上がり、山王島地区に伺うこともできなくなっていきましたが、2007年からは脳のリフレッシュ教室交流会が始まりました。
2017年の交流会。山王島合唱団!
その時、山王島の皆さんは目が合うと必ずにこっと笑顔を返してくれます。近くに寄ってみえるのではなく、その距離からにこっと笑ってくれたり、ちょっとだけ手をあげてくれたり。そんな時にも山王島の皆さんの人懐っこさと控えめさが感じられて、私の方が近寄っていきたいくらいでした。
あ。また思い出したことがあります。
岩井会長さんは、お帰りになるとき出口で別れを惜しんでいる私に”See you again!”と必ず声をかけてくださいました。
2020年交流会。私がお会いした最後の岩井さんの笑顔です。この時おっしゃった”See you again”は果たされませんでした…でもたくさんの思い出が消えていくことはありませんから。
2020年交流会。私がお会いした最後の岩井さんの笑顔です。この時おっしゃった”See you again”は果たされませんでした…でもたくさんの思い出が消えていくことはありませんから。
原稿を転記しておきますから、読んでください!
山王島脳のリフレッシュ教室20年!おめでとうございます。
「みんなの願いはひとつ。健康で、人様の手を煩わせることなく長生きしたい!ならば、心のよりどころになる健康長寿地蔵を建立しようと、地区の老人会に『長寿講』を提案したら町内外から寄付が集まり、2017年3月27日お魂入れが行われた。今後はベンチも置いて、皆さんにもっと愛されてほしいね」
7人の発起人の代表で、今は亡き岩井茂松初代会長さんから伺った言葉です。このように、発案する人賛同する人がいて、地区全体が一つになるような前向きな生き方こそが地域ぐるみの認知症予防そのものなのです。
脳のリフレッシュ教室の目的は「地域ぐるみの認知症予防活動。体も脳も元気な人が元気なままで生き抜く」「認知症予防は、前頭葉を使い続けて
自分らしくイキイキと生きること」の大切さを納得してもらうことです。
脳の健康という考え方が取り入れられたところが画期的。だからこそ脳のイキイキ度チェックは不可欠で、さいわい脳の働きが維持されているという素晴らしい結果が伴っています。鬼籍に入られたあの方この方の笑顔が胸に迫ってきます。声も、歌声も聞こえてきます…
じつは、日本の認知症対策にとってこの活動は画期的なことでした。当時は「ボケてしまった高齢者をどう介護するか」という視点しかなく、そして現在は、年間13兆円にも上る介護費用の増大が大きな問題になっています。
山王島から始まった小布施町の住民主導の「脳のリフレッシュ教室」は、これからの日本の認知症予防のモデルになりうるものなのです。体も脳も元気でいるためには、毎日楽しみを見つけて生きていかなければいけません。これからも皆さんで励ましあって、ずくを出して、前頭葉をイキイキさせ続けてください!
by 高槻絹子
私の好きな小布施町のカフェ
認知症に関して理論的に詳しく知りたい方は、以下のブログもお読みください。
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