リオンという名の犬を飼っていた。
秋田犬ほどの体格だが外見で似ているのは毛色だけで丸顔、垂れ耳 だったから秋田犬よりか名前のとおりライオンに似ていた。
その背中に片手をのせて並んで歩くとリオンの肩の骨格の動きが 波打つように伝わって来て安らかな心地がしたものだ。
大きくて優しくて頼り甲斐のある犬だった。
命じると庭鶏やトカゲ、アルマジロを捕るのが上手かった。
トカゲは鶏卵をとるので「害獣」視されていた。
逃げるトカゲを追い越して先回りして頭をくわえる、と評判だった。
別れは悲惨だった。
頭を垂れよだれを流して歩くようになった。
リオンと呼んでも尻尾を振らず上目遣いにみるだけだった。
水が、怖がって、飲めなくなった。恐水病である。
人間を噛めば人も同じウイルス性脳病にかかり死に至る。
射殺には当然居合わせていない。