新鹿山荘控帳

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塩谷喜雄『「原発事故報告書」の真実とウソ』

2013-03-15 18:11:33 | 読書
何時の事だか忘れましたがTV、キャスターが発表された原発事故報告書のコピーを示しながらその内容を説明しておりました。
日本人なら原発事故報告書を読まなければならないだろうと、放送を見ながら考えたものです。
でもそのうちそんなことは忘れてしまったのです。

今秋の週刊文春の「私の読書日記・池澤夏樹」でこの原発事故報告書が紹介されていました。
「原発事故報告書」の真実とウソ  塩谷喜雄  文春文庫 750円

この書評の冒頭に、間発事故報告書が四つ提出されていることを知りました。「国会」と「政府」と「民間」と「東電」だそうです。
総頁2400頁、重さ10キロ近くなるそうです。何が書かれ何が書かれていないか見抜くことが重要で、本書の著者はその4冊を徹底検証していると、紹介されていました。

その1冊でも読むのが難しい我々は、ぜひその比較を読んでみたいと本日購入してみました。

書評にもありますが、著者は「はじめに」の2頁目その論旨を明らかにしています。
【本文のまま】
「本来なら、事故後速やかに、公的な調査・検証組織の手に委ねられるべき事故現場の管理・保存が、今もって当該責任企業の東京電力の手中のある。巨大システムの事故といっても、原発事故の事後検証は、航空機事故や鉄道事故の調査とは全く違う、大きなハンディをキャップを最初から背負っていることになる」とあります。
なるほどそういったことになるのだと、あきれてしまいました。

報告書を五点満点で採点すると、「国会」は3.5。「政府」は3。「民間」も3。「東電」は-1だそうです。
地震学会や原子力委員会や政治家や法律の色々な関係の中での各調査報告は、首相と官邸の批判に走り東電の責任逃れに手を貸したり、責任の所在に触れないように配慮した結果他人事のように一般論になったり、東電の責任者にはほとんど触れず政府が悪いの大合唱になったり、事件の第一容疑者が証拠を自分で管理したまま捜査をして見せたり(本書帯文から)とそれぞれがその立場での報告書になってしまっているのです。

元来日本の政治家や大企業の責任者は責任を取って謝罪することしないのだから、この未曾有の大事故の検証をきっちり検証して後世に残そうとする賢者やリーダーは出てこなかったのでしょうか。
色々専門的な内容が多く、素人の私が紹介するのには限界があります。750円ですからぜひ購入して読んでください。

最後に本書で紹介された怖い話を。
原子力委員会の技術小委員会の「事故リスクコストの試算」の事故発生頻度の試算では、日本の原発の過酷事故の頻度は500炉年に1回であるそうです。現在日本の原発50基で割ると、10年に1回放射性物質が大量にまき散らされる過酷事故が、日本で発生することだそうです。

国民の殆どが読む機会が無いような膨大な報告書をまとめて仕事をしたようなことにしてしまっている学者たち。
たぶん電力会社の責任者たちも政治家も読まないでしょう。国会図書館の棚に並んで積まれ、そしてまた十数年後事故が起きるのではと心配してしまいます。

コメント
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