BLUE NOTEには録音はしたもののリアルタイムでのリリースが追いつかず「お蔵入り」し、後年、色んな形で陽の目を見た作品が数多くある。
それは、リハーサルも含め吹き込み料をミュージシャン達にキチンと支払い、若手、或いは不遇の彼らの生活、活動を支えると言うA・ライオンの信念からで、認知度が上がればいずれメジャーに引き抜かれるというリスクがあってもそのスタンスを変えることはなかった。何時の時代でも、どんな世界でも中小企業の宿命だろう。
でも、その志の高さは、決して色褪せることなく、今なお、最高・最強のジャズ・レーベルとして愛されている。
ライオンが不本意ながら「お蔵入り」にした作品の中で、個人的に特に「勿体無い、惜しい!」と思うアルバムを。
OBLIQUE / BOBBY HUTOHERSON(1967.7.21 録音)
定盤'HAPPENINGS’(1966.2.8録音)の陰に隠れていますが、エモーショナルなボビ・ハチのバイブの魅力は'HAPPENINGS’を上回ります。恐らく'HAPPENINGS’がDB誌の年間BESTアルバムに選出されたため、あおりを喰ったのだろう、bだけが異なる同じ編制だけに。
ボビ・ハチは本作が「お蔵入り」になったことをとても残念がっていたそうです。自分ではこちらが「表名盤」。
ETCETERA / WAYNE SHORTER (1965.6.14 録音)
発掘したM・カスクーナが「信じられない!」と驚き、「ショーターで身銭を切るならこの一枚」とまで本国では称賛されているけれど、わが国では見向きもされていない。この時期、ショーターは頻繁にレコーディングしており、リリースのタイミングを逸したのだろう。ライオンは苦心の末、カルテットものでは時流に合わせ、エイト・ビート曲が入った'ADAM'S APPLE’(1966年2月録音)を優先したのかもしれない。
だが、ts奏者としての力量を自然な形でストレートに発揮できたのは本作が初めてでピカイチだろう。B面の2曲、特にG・エヴァンス作の'Barracudas’が素晴らしい出来。
なお、日本版(ザ・コレクター)は仄々した'Toy Tune’を'ADAM'S APPLE’の未発表・テイクに差し替えるという勇み足を犯しているので聴くなら断然この米国版を。カヴァは冴えないけど・・・・・・・
上記、二枚、いずれもハンコックの好アシストとJ・チェンバースのドラミングが聴きもの。
HIPNOSIS / JACKIE McLEAN(1967.2.3 録音)
O・コールマンと共演の一月前の録音。「殺気」のような怪しげなテンションがアルバム全体を覆っている。ハード・バップに限界、疑問を感じ、新しい己の道を模索し続けた男の後ろ姿に燃え盛る炎が映る。
ハード・バップ・ジャッキーだけがマクリーンじゃぁない。とことん付き合ってこそ本当のマクリーン・ファン。
なお、このカヴァではtpが写っているが、相棒はG・モンカー(tb)です。
この3枚が録音された65~67年、当時のジャズ・シーンは激流の真っ只中。その流れはこうしたハイレベルの作品でさえ飲み込まれてしまうほど早かった。
確かにボビ・ハチとマクリーン、特にマクリーンは全くと言っていいほど見た記憶がありませんね。
ひょっとして、未発表作(国内盤)の再プレスは難しく玉が絶対的に少ないのかも。
それにしても、BN人気は不滅ですね。