今回は、いよいよキングポストレス機をご紹介いたします。
海外では「トップレス機」とも言いますね。
最初に登場したキングポストレス機は、フランスはラムエッティの「トップレス」でした。
彼はそれまでのハンググライダーの性能を上げようと、上部のワイヤーやキングポストをすべて取り去ることを思いつきます。
かつて、ハンググライダーはサイドワイヤーをストラットにし、性能を上げることには成功したものの、コントロールが重く取り扱いが大変になった歴史がありましたが、テブノが考えたのはストラットを使うのではなく、クロスバーに高強度のものを使い、飛行機と同じ「片持ち構造」にすることで、昔この種のハンググライダーでかかえた問題を解決しようとしたのです。
同時に彼はこの新開発のクロスバーを他社に販売することにより、新しいビジネスに挑戦することも考えます。
新開発のクロスバーはカーボンで製作し、テストが繰り返されるうちにキールも強度を上げなければならないことが分かり、コントロールも重くなることから、今までのノウハウを少し変える必要が出てきました。
加えて、マイナス方向への最終破壊荷重が加わると、クロスバーがねじれて瞬時に破壊してしまうことが分かったため、今までのハンググライダーにはなかった、大きなセンタージャンクションを追加することを思いつきます。
このようにして、トップレスは誕生しました。
しかし、誕生当時は結構冷ややかな目で見ていた人が多かったのも事実です。
「グライダーは重いし取り扱いも大変‥。こんなものが普及するものか‥。」
そんな声もささやかれでいました。
しかし、実際大会の中で性能を比べると、やはり明らかに違いが出ました。
そんな雰囲気の中で、各社さすがにキングポストレス機を無視できなくなり、ラムエッティを追うように次々と新しいキングポストレス機を発表するようになったのです。
ちなみに初期型のトップレスにはリブは装着されていませんでした。
まだ、この当時はリブも目新しい技術だったのです。
そのため、初期型のトップレスは、ニュートラルあたりのバープレッシャーがかなり強く、グライド時はかなり腕力が必要なものでした。
でも、高速までスピードを上げるとかなりピッチが不安定になったのです。
まだまだピッチの安定を確かなものにする技術が確立していなかったんですね。
ちなみに、このキングポストレス機はテブノ氏が考えた以上に大流行し、各社独自でクロスバーを製作するようになってしまったため、テブノ氏が考えたクロスバー販売のビジネスは失敗に終わってしまいました。