今回は、今までとちょっと毛色の違う機体をご紹介します。
ドイツはフライトデザイン社が発表した「エクスタシー」です。
この機体は、ハンググライダーの歴史が始まって、最初に量産された複合材を主な材料とした固定翼機でした。
もともとドイツは、グライダーは盛んな国で、この連載の初めのほうでも少し触れました、ホルテン兄弟などもこの国の技術者でした。
そんなグライダーが盛んな国から、今回のエクスタシーのようなセンセーショナルなグライダーが出現したことは、当然の成り行きだったのかもしれません。
エクスタシーは、初めて複合材を使った商業ベースの機体であると述べましたが、実は、その原型となる「ペガサス」という機体が存在していました。
この機体は、言ってみればマニアックな人間が、複合材でハンググライダーを作ったような機体でしたが、その開発者の一人フェリックスルウェールが、もっとこの種の機体をビジネス的に進めていきたいと思っていたところ、フライトデザイン社の社長マティアスに声をかけられ、
ともに協力して新しい固定翼のハンググライダーを作ることになったのです。
その結果出来上がったのが、今回の「エクスタシー」です。
エクスタシーは、初めての複合材を使った量産機でしたが、今から考えると、とてもまとまっており、安全性も優れたものであったと思います。
飛行特性もよく、しかもカーボン製のDボックスには、破損を発見しやすいように表面に薄いグラスファイバーを張るという念の入れようで、これによって損傷個所が白く細かなヒビが入るのですぐに見つけることが出来ました。
このエクスタシーは今までのハンググライダーよりも高性能だったため、瞬く間に普及。
フライトデザイン社はビジネスを成功させますが、しかし、設計者のフェリックスとの間に問題が起こり、フェリックスはフライトデザイン社を去ります。
その後、当時ヨーロッパUP社の代表を務めていたバーンド氏のプロデュースの元、エクスタシーを超えるべく開発した機体が「ATOS」だった訳です。
フェリックスはその後固定翼の開発に没頭し続け、現在のA.I.R社があるわけです。
余談ですが、フェリックスは面識がありますが、とても穏やかで優しい人です。
年も私とほとんど同じで、いろいろと彼のお世話になったことも、今となっては懐かしい思い出です。