私はArminと話しているうちに、ハングハーネスについて、全く同じ問題点に取り組んでいることが分かった。
それは、フレームハーネスが持つ、ランディング及びテイクオフ時の体のずり下がり問題についてである。
フレームのないハーネスでは、体が自由に動くため、ランディング時は背筋の力によって体を起こすことが出来る。
しかし、フレームハーネスの場合、体が自由に動かないため背筋の力では体は起こせない。
そのため、メインラインを重心位置よりも前に移動して体が起きるようにしている。
しかし、この動きは同時にコントロールバーに対して体の位置が下に下がってしまうことを意味している。
この結果、テイクオフ時は体がグライダーに吊り上げられるタイミングが遅れてしまい、アップライトを持つ腕が上に引き上げられてしまい、グライダーのホールドが出来なくなってしまう。
また、ランディング時はコントロールバーに対して体の位置が下に下がってしまうため、アップライトを持つ手の位置も下がってしまい、フレアーが効かなくなってしまうのである。
このことについては、EXEホームページ中、RXCとRXC‐RFの頁の中にあるVGF説明にて詳しく記載しているので、是非見ていただきたい。
上記の問題はフレームハーネスの宿命的なものであったが、常々私は未来型のハーネスを作るには解決しなければいけない問題と思っていた。
そして、Arminと出会う前に、既に10着ほどの試作ハーネスを作り新しいアイデアを検証していたが、一部を除き、これという結果を出せないままでいた。
しかし、Arminは、私と全く同じ問題にオーストリアの地で取り組んでいたのである。
そして、彼はその答としてM2ハーネスを製作したが、しかし、これもまだまだ完成されてはいなかった。
しかし、今目の前にあるハーネス、ACERはちょっと違う。
その機構をよくよく見ると、ただ単純にメインラインのスライドによって体が起きるというだけでなく、明らかに、ハーネスのフレームとピッチラインが一種の「リンク」を形成して、メインラインのスライドの力の一部を、体が強制的に起きる力に変換している、今までのハーネスと全く違うものだったのである。
Arminは私に言ってくれた。
従来のM2は確かに体が起き辛いものだった。その欠点を克服するために、フレームを2分割にしてメインラインを少し動くものを作ってみた。そうしたら、従来のハーネスよりも少ないスライド量で体が起きてしまうハーネスが、偶然出来上がってしまったんだ。
ACERハーネスをよくよく見ると、本来パイロットのピッチアングルを変えるピッチトリマーの持つピッチラインの摩擦力が、体を起こすとき効をなし、フレームにリンク効果をもたらしていることが分かった。
これはすごい効果だ!私はそのとき思った。
そして、このハーネスの持つ機構に、未来のハーネスを感じたのである。