毎日がちょっとぼうけん

日本に戻り、晴耕雨読の日々を綴ります

「元愛国学生から電話あり②」 2012年9月22日(土)No.450

2012-09-22 11:37:32 | 中国事情
昨日のホンケンさんの口調は、穏やかだった。
あの質問状を書いてから2年の間に、彼はずいぶん変化していた。

あれを書いた当時は、背景に尖閣問題(中国漁船船長の逮捕拘留)があった。
彼はそれまで日本人教師以外の日本人に会ったこともなかった。
多くの中国人は、テレビ以外に日本人について知る術はほとんどない。
テレビといえば反日愛国ドラマで「貴様!」「馬鹿野郎!」の世界だ。

日本人教師もいろいろなようで、私は赴任早々、
「先生は以前の先生と違って、本当にお喋りですね~!」
と自分としては甚だ不満足なレッテルを貼られた。
日本語教師は「しゃべって何ぼ」の商売なのだ。
私は本来の性格に反して、努力して喋っているというのに(いやホント)。

多くの中国人学生は、それまで休み時間に先生に話しかけられる経験がなかった。
気楽なお喋りでも中日友好にほんの少しでも奏功すれば・・・との思いも、私としては当然あったのだが。

その後、2011年3月11日があった。
日本語学科の学生たちは「頑張れ!日本」の作文を書いた。
ホンケンさんの文章は、
「日本民族の心の底には、昔からずっと『どんな困難に遭遇しても、与えられた条件の中でベストを尽くす』という高い素質がある。
自分は身体をこわしていた時期に『1リットルの涙』というドラマを見た。そして励まされた。
歴史的に酷いことをされて日本人が嫌いであっても、それはそれとして、この日本人の素質は、誰しも認めるべきだ。さらに自然災害を前に、国境はない。頑張れ!日本人。」
といった内容だった。

被災者に対する同情と優しい気持ちは他の学生達も同じだった。
中国の庶民は、困っている人に対して本当に優しい。
そんなこんなで、彼の日本人に対する憎悪は薄らいでいったと思う。

ホンケンさんは今年卒業して、ある日系企業に通訳として就職した。
今は河南省鄭州に長期出張している。
近況の中で、自分の会社の工場部門の労働者達がストライキに入ったという話が出た。
「両国民の関係がこれ以上悪くなるのを、本当に心配している。」
「反日デモの参加者の心には、反日そのものより、中国社会への不満があると思う。一番の不満は、貧富も差もさることながら、言いたいことが言えないという言論の自由の無さだろう。」
「国慶節でまた、反日行動が盛り上がる可能性がある。外出は気をつけて。」
という。
非常に落ち着いた話しぶりに(ホンケンさん、大人になったなあ)と、嬉しさが湧いた。
こんな状況でも、やっぱ、教師グセが出てしまうのだった。












コメント
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