怪物の正体

怪しい音がする
恐ろしげな音、といってもいいかもしれない

グルルル……グルルゥ……。
と、天井裏から響くその音は、すぐに止まった。

我が家にネズミが出たことはないし、
そもそもネズミが走る音ではあるまい
まして、ゴキブリや鳥という感じでもない

天井裏は、直接見ることができないので、
その上のベランダを調べる。
特になにも変わったものはない

８時の出来事だった。


翌日、またしても天井裏から、
グルルル……グルルゥ……。

調べられるところをすべて見ても、異常なし
またしても、８時頃だった。
もし動物だとしたら、
感心するほど規則正しい生活をするヤツである（笑）


その翌日も、期待を裏切ることはなかった
天井裏から
グルルル……グルルゥ……
……――天井裏？。。。

耳をダンボにした
天井から響いてくるように聞こえるものの、
よく聞くと、音源はもう少し近そうだ。

視線を落とす。大きなタンスが目に入る。
タンスの上には、戸棚がある

戸棚の中


――すべてが繋がった

怪しい音が始まる前日、ケータイを変えた
そして、古い方のケータイを
タンスの戸棚の中に置いたのだった。
そのケータイを取り出し、調べれば、
案の定、アラームが８時にセットされている

バイブモードになっていたため、
毎日８時になると、ケータイが振動し、
それがタンス・壁を伝って
怪物みたいな音を醸し出していたのだ


『幽霊の正体見たり枯れ尾花』


家族中を不安にした事件の犯人は、古い携帯電話。
いや、正確に言えば、
戸棚にケータイを置いた、自分だ

正体がわかってすっきりしたものの、
何か、つまらない気分になってしまうのはなぜだろう