翁長知事は、9月14日、辺野古埋立承認の取消しを表明した。知事は記者会見の前に下のような通知書を防衛局に渡し、9月28日に埋立承認の取消に向けた意見聴取を行うと通知した。正式な埋立承認の取消は、この意見聴取が終わってからとなる。防衛局は意見聴取に応じるかどうか明らかにしていないが、もし防衛局が意見聴取に応じない場合は、埋立承認の取消は早まる。
知事の埋立承認取消しの表明にもかかわらず、政府はあいかわらず強引な主張を続けている。埋立承認が正式に取り消されれば、行政不服審査請求、執行停止の申立てで「形式的」に知事の取消処分を無効にすることを示唆するだけでなく、その前にも埋立本体工事に入ろうとしている。
16日の琉球新報は1面で、「政府、本体工事月内着手も」として、防衛局が「汚濁防止膜や仮設桟橋(岸壁)の設置などに着手することを検討している。」と報じた。そこでは、「関係者によると、汚濁防止膜の固定するくい打ちや、仮設桟橋設置から着手する。」としている。しかし、汚濁防止膜のためのくい打ちや仮設桟橋設置から始まるというこの報道は信じがたい。
防衛局への公文書公開請求で入手した工事設計書によると、汚濁防止膜はくいで固定するのではなく、最大57トンのコンクリートブロック(CB)102ケをはじめ、合計236ケの巨大なCBで固定される。これらのCBの設置のためには、知事の岩礁破砕許可が必要である。
また、仮設岸壁はあくまでも「海上ボーリング調査のため」に設置が計画されていたものである。今頃から仮設岸壁工に着手しても、海上ボーリング調査はまもなく終わってしまう。今から仮設岸壁工を設置するというのであれば、それは海上ボーリング調査のためではなく、埋立本体工事のためであるから、知事に設計概要変更申請を提出し承認を得ることが必要である。
なお、琉球新報は13日にも、「来月にも本体工事」として、「防衛省は護岸の一部となるケーソンを投入する前に浅瀬に砂利を投入し、海底土台を敷きならす作業を行うことを検討している。」と報じた。これは、大浦湾の中央部分に設置が予定されているケーソンを置くための海上作業ヤードのことと思われるが、これも県への事前協議が行われておらず、すぐには着手できない。
さらに、防衛局は7月24日に実施設計の事前協議書を県に提出している。これは22種の護岸工のうち12種の護岸工の簡単な横断面図だけを提出したのだが、当然、県は全体の実施設計を提出しないと事前協議には入れないと通知した。防衛局は、海上ボーリング調査を終えた辺野古側の浅瀬部分の護岸工を中心に図面を提出し、協議が不調に終われば、これらの護岸工から工事に着手すると主張している。
しかし、防衛局は、埋立承認申請の際の「工事の施工順序」では、大浦湾の護岸工から着手するとして前知事の承認を得た。辺野古側の浅瀬部分の護岸工から着手するためには、施工順序の大幅な変更となるため、知事に設計概要の変更申請を行うことが必要となる。事前協議書を提出した辺野古側の護岸工から着手するというのは、防衛局の脅しにすぎない。
このように、防衛局は事前協議が不調に終わったとして本体工事に着手することはできない。また、知事の承認取消を国土交通大臣の執行停止で「形式的」に無効にしたとしても、それだけでは防衛局は埋立本体工事に入っていくことはできないのである。