高江では、今年度、N1地区の2ケ所のヘリパッド工事が予定されている。この今年度の工事で特に危惧される問題について説明しよう。
下の地図を見ても分かるように、N1地区は、県道70号線のN1ゲートから旧林道を2kmほど南に行った峠付近にある(下の図の青線)。この峠を下り1kmほど南に行くと高江の開拓地の農道に着く。この辺りを「N1裏」と称している。N1裏から北へ650mの旧林道は、米軍への提供区域ではなく、国有林となっている(下図の赤線)。現在、住民の会は、N1ゲートとN1裏に監視テントを設け、24時間の監視態勢を続けている。
防衛局は、本年5月22日、県に赤土等流出防止条例にもとづく「事業行為通知書」を提出した。それによるとN1地区の工事のための工事車両は、北のN1ゲートから峠への尾根筋の旧林道を通過することとなっている。そのために、旧林道を幅員3mで不陸整正し、厚さ15cmの砕石をひいて整備する計画だ。(現在のところ、N1裏から工事車両が入る申請はされていない。)
この旧林道は、昔、高江の人々が山に入り、馬を使って木を搬出するために使った道だが、年月が経過してところどころで崩落しており、このままではとても工事車両の通行はできないと言われている。地元の方の話でも、馬も怖がるような急峻な道だという。
赤土等流出防止条例を所管する県の環境保全課は、本年6月12日、この旧林道を通り、N1地区のヘリパッド予定地に立入調査を行った。その際、数か所で法面が崩壊し、幅員3mが確保できないところがあるので、どうするのかを防衛局に問合せた。7月7日、防衛局から回答が寄せられ、それを受けて、環境保全課は7月11日、「事業行為通知書」を承認する「確認済通知書」を出してしまった。この経過と問題点については、住民の会が出した抗議文を参照されたい。
・「N1地区ヘリパッド工事に向けた沖縄県への抗議文」(2014.7.11 「チョイさんのブログ」)
その後、公文書公開請求で、県の質問に対する防衛局からの回答文書が開示された。また、県の立入調査の際の40枚ほどの現場写真も公開された。それらを見るとあまりにひどい内容に驚く。
例えば、旧林道の数か所の崩落箇所の一つとして、下図のような横断面図が示されている。左側は、ほとんど垂直に近い崖となっているが、その上に土のうを少し置いただけで工事用車両を通過させるというのだ。N1地区は2ケ所のヘリパッドを造成するので、砕石の量だけでも3,100㎥、4トンダンプで1200台にもなる。また、ヘリパッド造成のための大型重機もこの旧林道を通る。下の図のような崖の上を、大量の工事車両が頻繁に通過すれば、崖が大規模に崩落して赤土が流出する恐れがあるだけではなく、工事車両の転落等の不測事態も危惧される。作業員らの生命にもかかわる重大な問題だ。
(沖縄防衛局「北部着陸帯(N-1地区等)に係る確認事項等について(回答)」(2014.7.7)より)
(垂直に近く切り立った崖(県の開示写真))
実際には、この崖を避けるために反対側の斜面を大規模に造成してう回路とするものと思われるが、その場合、広い裸地が発生し大量の赤土の流出が危惧される。防衛局は、県には杜撰な図面を提出しているものの、現地では全く異なる対策を講じるつもりだろうが、それは赤土等流出防止条例を無視したもので許されない。 県も、その点を厳しく審査すべきであった。
このように、今年度に予定されているN1地区の工事は、ヘリパッド着陸帯だけではなく、工事用進入路の造成による環境破壊は著しい。ただちに中止すべきである。