気温がぐっと下がった。お酒の美味しい季節になった。
わざわざ暑い季節に日本酒を選んで飲む気はしない。
人肌、ぬる燗、酒器を選び、料理と一緒に楽しむ食中酒としての日本酒が好きだ。冷たい吟醸酒を飲むことを好まない。吟醸香が料理を台無しにしてしまうことが多い、吟醸酒は食前酒、あるいは食後酒と思う。蕎麦屋で時々我慢しきれずお酒を飲む。福島の蕎麦屋で飲んだ燗酒がとても美味しかった。飲んだ酒の銘柄を訊ねる。二本松の赤人気です。その後何度か飲む、毎度美味しい。本物だ。そこで酒を求めて二本松へ繰り出す。小さな町だ、と高をくくって探したがたどり着けない。酒屋に飛び込んで聞いてもダメ。ここなら奥の松、大七です。人気酒造???
時間切れ、福島に戻って念のためスパーマーケットの棚を見る。ありました。
人気酒造、赤人気。ごく普通に並べられている。うれしいやら、ガッカリするやら。
嬉しいこと、日本酒の平均品質が上がって久しい今日、身近に美味しい日本酒、いまだ隠れた無名の正宗がまだまだ存在する事実。
閑話休題、酒のTPO。酒飲みの一人として日本酒に限らず酒を飲むTPOが乱れすぎている事がとても気になる。時(time)所(place)場合(occasion)に応じて酒を選び飲むという事が蔑ろにされすぎている、と思う。
日本酒は蹂躙され続けてきた悲しい歴史がある。40年ごろ前から寿司屋、日本料理店、S社の強引なプロモーションに洗脳され棚に置かれただるま、ウイスキーで刺身が食えるか。今はさすがここまでの破廉恥は少ない。次に地酒ブームに乗って失地回復と思いきや、ここ十数年、更なる敵はウイスキーからショウチュウへ。いつでもどこでも、ショーチユー、ショーチユーの大合唱、酒のTPO完全無視。
オールマイティーの酒なぞ存在しない。せめて繊細な日本料理、繊細な素材、丁寧に作られた料理を味わうときの礼儀として、荒っぽい蒸留酒はやめて丁寧に醸された醸造酒とともに味わいたい、と思うのだが・・・
今度人気酒造の蔵をゆっくり訪ねてみようと思う。