レディ・ヒリンドン、このバラが好きになるとは。数年前にはこの庭に植えるなど考えられない事だった。それは郡山のバラ園にあった。レデーヒリンドン、そして金華山と書いてあった。 このバラの好ましくない印象として強く残った。ティーローズでは最も新しく、およそ100歳。だのにこのバラが解らない。説明してくれる資料がない。Hillingdon、ロンドン西部にある地名、Lady Hillingdonとはどんな女性? 最も好きなティーローズの一つになってしまった今、まー詮索は止め、それでいいとしておこう。
稲穂が重く垂れ、見事に色付いた猪苗代の広大な水田。早くもコンバインが動き出し、収穫が始まっている。やがて刈り取りの終わった田圃に白鳥が飛来する・・・季節の移ろい、早い早い。美味しいお米が食べたくなった。ひとめぼれの新米買って家路につく。
庭のカンボクの実が今年は豊作のようだ。昨年はまったくといっていいほど実が付かなかった。それはカンボクのみならず、クルミ、ミズナラ、ブナ・・・昨年の山の実りの不作によって命を落した野生動物の数、それはあまり想像したくない。
磐梯山を登ろう、と思っていたがなぜか急遽蔵王へ予定変更。2本のロープウエイを乗り継ぎ地蔵山から爽やかな秋風の吹く尾根のランブリング、熊野岳そしてお釜。なんと穏やかな、心地よい山旅だろうか。東北の山のよさを満喫する。熊野岳からお釜のザク道にごく自然にコマクサが点在する。その数の多さに驚く。これだけ入山者の多い蔵王、だが嬉しいことに興ざめな柵やロープもない。ザクを崩さぬよう、踏みつけないよう、注意深く歩かなければならない。花の時期にまた訪れてみたい。女王コマクサとゆっくり戯れる事ができるだろう。白花に出会う事があるかもしれない。(熊野岳付近よりお釜)
ミセス・ハーバート・スティヴンス、このお気に入りの白バラはカーティスクリークの庭に4年前にやってきた古株である。そしてこの美しさはJoseph Pernet-Ducher(Mme.Abel Chatenay 1895年 ,Soleil d'Or 1900年など歴史に残る名花を作出)のバラであるから、とずっと信じていた。念のため調べてみれば、あれれ、知らなかった・・・意外や1910年 アイルランドSam McGredy作出。Grey Pearlと同じであったのだ。
Mrs Herbert Stevens Sam McGredy 1910年
Mrs Herbert Stevens Climbing Joseph Pernet-Ducher 1922年
という事が解った。
Mrs Herbert Stevens Sam McGredy 1910年
Mrs Herbert Stevens Climbing Joseph Pernet-Ducher 1922年
という事が解った。
秋のグレーパール、フリルのついた花びら、このやわらかい雰囲気は今までに見たことのない、変化に飛んだ魅力的な表情を持つバラである。このバラの花色と同様、生い立ち、歴史を辿ると、なかなか複雑、且つ興味深いものがある。1945年、北アイルランドのSam McGredyは(Mrs. Charles Lamplough x seedling) x (Sir David Davis x Southport) を交雑し灰色のバラを生み出す。彼自身、このバラが好きになれず、なんとThe Mouseという名をつける。彼は興味のないマウスを商業生産せず、アメリカのGene Boernerに譲る。ベルナール(Pinocchioを育種)はマウスに大いなる可能性を感じ、ピノキオを交雑する事によって名花Lavender Pinocchioを生む。The Mouse成功の功労者はベルナールの他に、有名なオペラ歌手ヘレン・ジェプスン、今日のフラワーアレンジメントの繁栄の基礎を築き上げたコンスタンス・スプライ女史(イングリッシュローズに名を残す)を挙げなくてはならない。ヘレン・ジェプスンはGrey Pearlの名付け親(提案者)。コンスタンス・スプライは批評家の評判がよくなかったGrey Pearlのすばらしさを絶賛し続けた。これらの確かな審美眼を持った人々の存在があってこそThe Mouseは生き残ったのである。
アリスター・ステラ・グレーが裏庭に咲いている。Parsons' Pink China(Old blush)の血をひくAlister Stella Grayは他のNoisette同様寒さに弱い。裏磐梯の厳しい冬、枝を枯らし大きくなることができない。それでも何とか生き残り、毎年何度かこうして花を咲かせてくれる。そんなアリスター・ステラ・グレーが花の美しさを超えてたまらなくいとおしい。
秋の強い日差しの中でオメールが咲いている。透明な穢れない美しさ。Homere(仏語)とは叙事詩、イーリアス、オデュッセイアーで知られる古代ギリシアの伝説的な詩人ホメロスのことである。Homeros(Homere)とは・・・ああ、なんとこのバラの美しさに似つかわしくないことよ。
久しぶりに中瀬沼から眺める磐梯山、裏磐梯の誇れる代表的な美しい風景。雲に隠れる磐梯山、これもいい。日本の湖水地方、裏磐梯、Lake District。氷河、いや磐梯山の火山活動で生まれた200以上の湖沼群。美しく、やさし、穏やかな日本の誇れる湖水地方だ。今日はそんなエリアの一斉クリーンキャンペイン(ゴミ拾いを)に参加した。うれしいことに担当したエリアで空き缶一つとて拾うことができなかった。ウォーカー のマナーの向上、意識の高さを改めて実感する。
中国のバラは作出記録が残っていないため、ミステリアスな部分の解明、推理の過程でいろいろ物議を醸し出し、バラ好き達にとても興味深い話題を提供してくれる。このバラ、賽昭君もその一つ。China Roseとされていたが最近疑問視され、Found Teaではないかとうわさされ、アメリカではJ. E. Murphy's Pink Teaとして流通しているとか。香粉蓮=スヴェニール・デリゼ・バルドン、国色天香=グルス・アン・テプリッツ、紫燕飛舞=マギー、そしてあの粉粧楼でさえポリアンサの一種(枝代わり)とか。こうなると果たしてSlater's Crimson China、Parson's Pink China(Old Blush)、Humu's Tea-secnted China、Park's Tea-scented Chinaの4種以外に中国で作出されたバラはあるのだろうか、とさえ思ってしまう。
この数日、9月半ばを過ぎたというのに気温が高い。北上する台風のせいだろうか。異常である。この時期経験いたことのない暑さ。夕空はもうすっかり美しい秋の空なのに、この時期はずれの蒸し暑さに体が悲鳴を上げる。
玄関の羽目板にコクワガタが止まっている。夜間燈火に誘われてやってきたのであろう。床に下ろし、ゆっくり観察する。頭を上げ威嚇する姿はなかなか迫力がある。成虫で越冬するコクワガタ、裏磐梯の厳しい長い冬をいったいどこで越し、春を迎えるのであろうか。