学問空間

「『増鏡』を読む会」、第9回は2月22日(土)、テーマは「上西門院とその周辺」です。

備忘録(閉鎖的学問空間)

2013-06-24 | その他
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2013年 6月23日(日)22時29分31秒

ツイッターで東大・先端科学技術研究センター教授の玉井克也氏が毎日新聞の下記記事を紹介していました。

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経済観測:東大法学部を創造的破壊せよ=経営共創基盤CEO・冨山和彦
毎日新聞 2013年06月21日 東京朝刊

 かつて東京大の文科1類から法学部という進路は、文系学生のエリートコースの代名詞であった。ところが昨年、3年次の専門課程に上がる進学振り分けで、何と法学部が定員割れを起こしたのである。ちょうど子供たちが受験世代なので実感として分かるのだが、入学試験においても東大文1にかつてのような輝きはない。
 卒業生としては申し訳ないが、この傾向について私自身は喜ばしいことだと思っている。そもそも東大法学部出身者がトップエリートであったのは、先進国に追いつくために優等生型の官僚が大量に必要だったから。しかし我が国の発展段階はとっくにそんなステージを終えている。
 加えて東大法学部を頂点とする日本の法学は、言語的障壁に守られ、国際競争にもさらされず、かなり閉鎖的な学問空間を形成している。その証拠に、今や社会科学の中心的な研究分野の一つで、ノーベル賞学者も輩出している法と経済の学際分野では、我が国は極めておくれをとっている。秋入学や入試への英語能力試験「TOEFL」採用といった東大の国際化の努力に対しても、法学部は必ずしも積極的ではないといううわさを聞く。
 はっきり言ってしまおう。明治以来の伝統的な東大法学部の存在意義はなくなっている。法科大学院があるのだから、法学部、特に法律学科はもう廃止した方がいい。そうやって空いた定員分を使って、新時代の日本のリーダーとなるべき人材、正解のない問題を設定し、考え、そして世界のフィールドで議論できる人材を育成する21世紀型エリート養成学部を創設するのだ。
 日本の教育の頂点に君臨していた東大法学部がそこまで徹底的な創造的破壊に取り組めば、我が国の人材育成は大きく変わるはずだ。


庶民的な毎日新聞に、寄稿とはいえ、こうしたエリート主義の主張が出るのはずいぶん珍しい感じがします。
ま、エリート主義もここまで露骨だと、逆に爽やかな感じもしますが。
筆者の冨山和彦氏はボストンコンサルティンググループ出身の経営コンサルタントですね。


私がこの記事に興味を持ったのは、「東大法学部を頂点とする」が正しいかどうかは別として、「日本の法学は、言語的障壁に守られ、国際競争にもさらされず、かなり閉鎖的な学問空間を形成している」という点です。
私もつい最近、歴史学が「言語的障壁に守られ、国際競争にもさらされず、かなり閉鎖的な学問空間を形成している」という趣旨のことを書いたので、ちょっとドキッとしました。

法学の場合、「閉鎖的な学問空間を形成」しているのは基本的に正しい指摘ですが、ただ「法学の分野に国際競争がないのは、国際的に共通している。法学の目的は立法と裁判に指針を与えることなので、主権国家体制が揺るがない以上、国家単位にならざるをえない」(玉井氏)という事情があります。


歴史学の場合はどうなんですかね。
「主権国家体制」とは特に関係ないような感じがします。
そもそも「閉鎖的な学問空間を形成」しているという私の認識が誤りなのですかね。
日本に関する歴史的研究は広く世界中に開かれているが、研究者になるには通常の日本語能力を超えて古文書・古記録をきちんと分析する能力まで必要なので、実際上、そこまで高度な日本語能力を持った人が少ないから結果的に「閉鎖的な学問空間を形成」しているように見えるだけ、なのでしょうか。
コメント
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