【現代思想とジャーナリスト精神】

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第17回平和のためのコンサートの新鮮な感動 〜2016年(核時代71年)6月18日 〜

2016-06-26 09:01:42 | 政治・文化・社会評論
第17回平和のためのコンサートの新鮮な感動
〜2016年(核時代71年)6月18日 〜

               櫻井 智志


 例年報告の大半を第一部の「講演」に大きく割いてきた。今回も鷹巣直美さんと石垣義昭さんの「憲法9条にノーベル平和賞を」実行委員会の講演は興味深いものがあり、なかでも提唱者の鷹巣直美さんのパワーポイントを使いながらの講演からは、斬新な内容を含み、なぜノーベル平和賞の受賞者を「日本国民」としたのか、そこに深い見識が感じられ、大いに示唆を受けた。また高校教師であった石垣義昭さんの講演のなかで堤未果さんやSEALDsで大活躍している奥田愛基さんと学校教育との洞察は、現在日本の学校教育の根本に迫る内容も一緒になされ、大いに参考となった。

 今回は、第二部のコンサートそのものについて今まであまり報告してこなかったので、そちらを主に報告したい。

①重唱 アンサンブル・ローゼ
ビアノ:末廣和史さん

 アンサンブル・ローゼは、七人の女性ボーカリストから構成される。
ソプラノが、池田孝子さん、高橋順子さん、渡辺裕子さんである。メゾ・ソプラノが、芝田貞子さん、高橋邦子さん。アルトが嶋田美佐子さんである。
 今回は「待ちぼうけ」「野の羊」「この道」「浜辺の歌」の四曲を歌った。日本のうたをしっとりと聴かせる。歌が途中で転調する歌があった。澄み切ったハーモニーは変わらず、このグループの歌唱力がもつ声楽としての水準の高さを感じさせる。毎回さまざまなバラエテイの楽曲をこなし、洋楽やクラシックの歌唱の時もあったが、実に多彩などんな楽曲も「うたのこころ」をしみじみと響かせて共感を感じさせてくれる。
 ピアノの末廣さんは今までにも加わっていて、重唱の効果をよく高めていて聴き心地がよい。

②チェロ独奏 佐藤智孝さん
ピアノ:児玉さや佳さん

 プログラムには、「メネエット ト長調」(ベートーヴェン作曲)、「ムーア人の踊り」(ファリャ作曲)が記載されている。私のメモでは三曲と記されている。もう一曲の題名はわからないが、深いチェロの響きと伴奏のピアノとのコラボレーハョンが見事である。チェロのしみじみとした味わいをピアノの演奏が重厚な立体感を醸し出している。

③バリトン独唱 奥村泰憲さん
ピアノ:外林由貴子さん

 歌劇「はだしのゲン」から”麦のように強くなれ”(保科 洋作曲)、「音頭の船頭歌」(広島県民謡)、歌劇「悪魔の壁」から"一人の美しい女性が”(スメタナ作曲)の三曲。曲想や種類が三曲とも異なるけれども、どの曲も音楽的に高いレベルとして演奏されていた。民謡、クラシックなど歌い手にとっては異質な楽曲であうるけれども、ひとつひとつの歌唱がピアノとよ
く共鳴しあっていて、バリトンとピアノのコンビネーションがよく合っている。


【感想】
 ノーモア・ヒロシマ・コンサートを含めて、平和のためのコンサートは、芝田進午先生の「反核文化としての音楽」を実に豊かに体現化してきた。17回の平和のためのコンサートのすべて、ノーモア・ヒロシマ・コンサート(広島と東京)の東京都新宿区朝日生命ホールのコンサートのほとんどを聴いてきた。私の故郷には群馬交響楽団が昔からあって、群馬県内の平地・山間部を問わず広く小中学校の講堂や体育館で公演を行ってきた。そのことが、子どもたちの感性に一定の影響を及ぼしてきた。

 この「平和のためのコンサート」も、広くおだやかで豊かな感覚と反核文化の普及に努めている。とくに派手なコンサートではないが、毎回持続して17年間も続いてきたことに、驚きと主催者への尊敬を覚える。
 芝田進午・貞子ご夫妻と二人の息子さんご夫婦などのご家族がその担い手である。さらに芝田進午先生が生涯の最後にとり組んだ新宿区の住宅街・早稲田大学などのある文教地区に移転と実験を強行した国立感染研(旧国立予研)に対する実験強行差し止め裁判闘争をともに闘った人々や芝田先生の法政大学・広島大学・民間の芝田ゼミなどの教え子たち、さらに芝田貞子先生もメンバーのアンサンブル・ローゼの関係者たちのコンサート開催の実務支援は重要な意義をもつ。
 このコンサートが平和と反核文化に国民に与える影響は大きい。過去にピートシーガーや美輪明宏さん、葦原邦子さんなども無料で賛助出演なされている。このコンサートの出演者は、確か無料出演と聴いたことがある。コンサート自体が、出演者・開催者・聴衆の三位一体となって、日本と世界の平和と平和文化に貢献している。
 そして、第1部の講演「憲法9条にノーベル平和賞を」の取り組みが、世間的な噂よりももっと深く「戦争を阻止し平和な社会」を形成する運動として深い意義をもっていることを、コンサート参加者に正確に知らせている。
 第1部、第2部あいまって、「平和」を感じ考えさせてくれる。このコンサートの意義は、コンサート会場に出かけた人々を通して、広く深く社会に伝わっていってほしい重要な文化的社会的実践である。