【現代思想とジャーナリスト精神】

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【「しんぶん赤旗」、「日刊ゲンダイ」、「孫崎亨のつぶやき」に見る疑惑と深層への追及】

2017-03-12 19:23:11 | 政治・文化・社会評論
【「しんぶん赤旗」、「日刊ゲンダイ」、「孫崎亨のつぶやき」に見る疑惑と深層への追及】

                      櫻井智志



 森友問題とは、取引の異常な格安取引なのか?

「しんぶん赤旗社説」と「日刊ゲンダイ」、「孫崎亨のつぶやき」は、それぞれA、B、Cのように述べている。読者にはぜひご拝読のうえ、この問題の本質についてのご一考に資すればと考えて転載する。
この稿では蛇足となるので、私見は述べないが、転載の組み立てに私見が表れているかも知れない。

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[A]しんぶん赤旗

2017年3月12日(日)
主張

「森友」格安取引

首相も与党も解明責任果たせ



 大阪の学校法人「森友学園」(籠池泰典理事長)が4月に開校予定の小学校用地として財務省・近畿財務局から破格の価格で国有地の払い下げを受けていたことが発覚して1カ月―。「森友」側は申請取り下げや理事長「退任」を表明しましたが、弁解は一方的で、格安払い下げの経過も語らず、「森友」の虚偽の届け出なども明らかになり、疑惑は広がるばかりです。安倍晋三首相らは開き直り、自民党や公明党は違法性が明確でないと籠池氏や当時の理財局長の国会招致に消極的ですが、国民の財産をめぐる疑惑の解明は、これからますます重要となっています。

疑念深まる異例払い下げ

 「森友学園」が大阪・豊中市内の国有地を、小学校建設を理由に、最初は国有地では通例あり得ない賃貸契約で手に入れ、賃貸料を値切りに値切ったあげく、今度は売買契約に切り替えて、地下に廃棄物が埋まっていたからと10億円近い評価額から約8億円値引きさせた破格の安値で購入、しかもそれさえ10年間の分割払いを認めさせたという事実は、驚きを通り越して、文字通り国民の怒りの対象です。当事者の近畿財務局は、「森友」との詳しいやりとりは文書を残していないからと明らかにせず、安倍首相も、担当の理財局が国会で問題はないと答弁しているからとそれ以上解明しようとしません。

 本来あり得ない取引には政治家などの関与が当然予想されるのに、日本共産党の小池晃書記局長が国会で、自民党の鴻池祥肇(よしただ)参院議員事務所の面談記録を突き付け、賃貸料値引き交渉への働きかけや他の政治家の関与をただしても、首相は自党の議員の行為についてさえ調査しようとしません。内閣を統括する首相としても自民党総裁としても全く無責任です。

 小学校は一時期「安倍晋三記念小学校」と名付けられ、首相の妻の昭恵氏が講演などで訪問し、つい最近まで「名誉校長」を引き受けていました。それさえ詳しい経過を明らかにしない首相の態度は、不当なかばいだてといわれても弁解の余地はありません。

 「森友」が木造校舎の建設費を補助する国と大阪府、騒音対策などを助成する空港運営会社にそれぞれ別の工事金額を報告し、大阪府より約3倍の金額を申請した国(国土交通省)からはすでに5645万円の補助金を受け取っていたことも判明しました。府より2倍近い工事費で申請した運営会社からも1億5000万円近い助成金の支給が内定していました。虚偽の申請なら「補助金詐欺」「助成金詐欺」の疑いさえ濃厚です。「森友」が府に提出した資料で籠池氏の経歴を偽装し、愛知県の中学校への「推薦枠」や予定教員の名簿にも虚偽があったなど新たな疑惑も明らかになっています。解明は文字通り喫緊の課題です。

疑惑ある以上招致は当然

 安倍首相が不正は明白でないからと調査しようとしないことや、与党が違法は明らかでないと関係者の国会招致に同意しないのは論外です。不正や違法が明らかなら警察・検察が捜査すべきです。それを待たず、疑惑がある以上ただすのは国政を調査する国会の責務です。税金の使い方は会計検査院も調査しますが、検査院任せは通用しません。籠池氏や財務省関係者に証言を求めないのでは、疑惑解明に背を向けたことになります。

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事実にもとづいて追及する姿勢は合理性がある。
しかし、以下のような疑惑に対してはどのように考えていくのだろうか。

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[B]【日刊ゲンダイ】 2017年3月10日

【森友問題の原点 安倍・松井・籠池を結びつけた団体の正体】


 森友学園事件の背景には、安倍首相を中心とする異様な翼賛と癒着の構造がある。その源流をたどると、“おかしなオッサンの思いつき”で済ませられない深刻な問題だということが分かる。事件の下地は、何年も前から用意されていた。やはり、どう言い訳したところで、これは安倍首相自身の疑獄だ。


■「伝説の2・26会談」で意気投合

 森友学園の籠池理事長は、安倍首相を「偉人」と称え、問題の土地に新設予定の「瑞穂の國記念小學院」も、当初は「安倍晋三記念小学校」の名称になる予定だった。だから、名誉校長には昭恵夫人が就いていた。そして、財政面も教育内容も問題だらけの学園にスピード認可を与えた大阪府知事は、安倍首相との親密さで知られる日本維新の会の松井代表である。安倍首相、松井知事、籠池氏――。この3人を結びつけたのが、「日本教育再生機構大阪」だ。


「1回目の総理大臣を辞めた後、失意の安倍さんを大阪に招いたのが維新の遠藤敬・現国対委員長だったんですわ。当時、会長をやっとった『日本教育再生機構大阪』のシンポジウムに呼んだんです。2012年2月26日のシンポジウムで安倍さんと対談したのが松井知事で、シンポ後の居酒屋会談でも教育再生について熱心に話し合い、すっかり意気投合した。僕らの間では、今も“歴史を変えた伝説の2・26会談”いうて語り継がれてます。その後も会合を重ね、12年の自民党総裁選に負けたら、安倍さんが党を割って維新と合流する構想まで持ち上がっていた。維新の側は代表の座を空けて待っとったんですわ」(維新関係者)

 日本教育再生機構は、愛国心教育を徹底し、歴史修正主義的な育鵬社の教科書を使うことを主張する団体だ。理事長は八木秀次麗沢大教授。安倍政権を支える「日本会議」のメンバーで、安倍首相の教育政策のブレーンだ。諮問機関の「教育再生実行会議」でも委員を務めている。八木氏自身も籠池理事長と交流があり、森友学園が運営する塚本幼稚園で講演を行ったこともある。


 機構は各地に支部があり、安倍首相と松井知事を結びつけた大阪支部には籠池理事長も出入りしていた。教育勅語を園児に暗唱させる塚本幼稚園は教育再生機構にとって“モデル校”のような存在なのだ。


■日本会議と二人三脚

 教育再生機構の共催で今月19日に行われる「シンポジウムin芦屋」のチラシを見ると、パネリストの中に「籠池町浪(かごいけ ちなみ/瑞穂の國記念小學院開校準備室長)」の名前がある。さすがに今回の出演は取りやめになったというが、名字と肩書を見れば分かるように、籠池理事長の娘だ。塚本幼稚園の教頭も務めている。
 教育再生機構と日本会議、森友学園、維新の会、安倍政権は一本線でつながる。というより、ほとんど一体化していると言っていい。


「日本会議と二人三脚で進めてきた安倍首相の教育改革が目指す将来像が、森友学園が新設予定だった“安倍晋三記念小学校”だということです。維新もその方針に共鳴してきた。全国に先駆けて『国旗国歌条例』を制定した大阪には、安倍首相と共通する意思、思想も浸透している。もし問題が発覚しなければ、小学校は4月に開校し、やがては中学校もできたかもしれない。安倍首相が教育改革でやろうとしていることを、教育再生機構と森友学園はひと足先に大阪で具現化しようとし、それを応援した人たちがいる。土地取引や認可の過程で、たとえ直接的な働きかけをしていなくても、安倍首相の問題に違いありません」(政治学者・五十嵐仁氏)


 この政権だから、起きるべくして起きた事件なのだ。

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 一方孫崎亨氏は、アメリカの代表的新聞のひとつウォール・ストリート・ジャーナル紙が、この問題を熟知して、アメリカ国民がどう認識しているか、紙上でとりあげている。

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[C]【孫崎享のつぶやき】2017-03-11 09:14

【米国代表的新聞ウォール・ストリート・ジャーナルが安倍首相のナショナリズムを批判。「日本経済を低迷させる安倍首相のナショナリズム」これは深刻だ。WSJは「米国支配層が読む新聞」と称される新聞。】



バロンズ/コラム 【バロンズ】日本経済を低迷させる安倍首相のナショナリズム

日本経済を低迷させる安倍首相のナショナリズムBy WILLIAM PESEK 3 月 9 日

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 ポピュリストショックが世界を揺さぶる中で、日本は落ち着いている。興味深いことだ。エコノミストや評論家はさかんにこの理由を説明しようとしている。

 ある者は資本主義の厳しさを和らげる社会主義的な政策のおかげだと言い、ある者は反政府な動きに影響されない確立された政治システムのおかげだと言う。混乱よりも調和を好む文化も要因として挙げられている。

 だが日本は英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)の影響やドナルド・トランプ米大統領誕生のような衝撃は受けていないものの、ナショナリズムを巡る問題では好ましくないつまずき方をしている。それを証明しているのが、激しい抗議運動でもソーシャルメディア上の反発でもなく、実力以下に低迷している経済だ。

 インフレ率の0.1%上昇を喜んでいることが、日本政府の手詰まり状態を如実に物語っている。1月の消費者物価指数が13カ月ぶりに上昇に転じたのは輸入原油価格の上昇が要因、つまり悪いインフレだったということは看過され、安倍晋三首相の政策がようやく功を奏し始めたと言われている。こうした楽観的な見方は、1月の家計の消費支出が1.2%減少したことによって裏切られてしまった。失業率3%という逼迫(ひっぱく)した労働市場が賃金も支出も押し上げないことや、それでも日本にポピュリスト的な動きが起きないことに、エコノミストは首をかしげている。

 安倍首相のナショナリズムがこの理由の一端を説明している。2日のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のコラムで、経済担当チーフコメンテーターのグレッグ・イップは、ブレグジット、トランプ氏、前ベネズエラ大統領の故ウゴ・チャベス氏に象徴される中南米のポピュリズム、さらにはフランスやハンガリーなどに起こり得る大変動といった現象が繁栄と商業活動に悪影響を及ぼしていると論じた。もちろんこれは複雑な問題だ。イップは「あいにく」と前置きして「民主主義にとってマイナスなら経済成長にもマイナスかというと、必ずしもそうではない。それは中国を見ればよく分かる」と書いた。

 日本に目を向けてみよう。安倍氏は2012年12月に再び首相に就任した当時、1世紀さかのぼっても例がないようなビッグバンを約束した。だが就任から4年余りたつにもかかわらず、数少ない控えめな微調整と大規模な金融緩和以外、安倍氏が公言していた大胆な構造改革は全く行われていない。

 これはトランプ氏が支持者の注意をそらしているものとアベノミクスが似たようなものだからだ。こちらを見れば、日経平均株価が上昇しているではないか。あちらを見れば、ソニーも利益を上げている。向こうの方を見れば、20年に東京オリンピックを開催することになっている。アベノミクスが奏功しているようにもみえる。

 だが安倍首相はそうしたことによって、今進めていることから国民の注意をそらそうとしている。つまり米国が書いた平和主義に基づく日本国憲法の解釈を変更しようとしていること、戦争中の日本の侵攻を取り繕うこと、愛国的な教育を推し進めること、ジャーナリストや内部告発者が刑務所に入れられるかもしれない秘密保護法の厳格化、日本の軍事力の海外での行使、さらに安倍氏の歴史修正論者的な考え方を支持する学校が有利な方法で土地を取得することに関与したとの疑惑もある。

 06~07年の第1次安倍政権はスキャンダルと対外強硬的な愛国主義といった政策とは関係のない原因で終わりを迎えた。現在は、安倍首相夫妻と何らかの関わりがあるとみられる超国家主義を掲げる学校が有利な条件で土地を取得したことを巡る議論に直面している。このことは安倍首相の構想を頓挫させ、野党党首たちを再び勢いづかせる可能性がある。ナショナリズムが改革の妨げとなる好例だ。

 トランプ氏はメディアや有権者の関心をそらすためにツイッターを利用している。安倍首相は自身が長年温めてきた政策に取り組んでいることから国民の目をそらすために、日経平均の上昇、派手なイベントを利用している。安倍氏の最優先課題は、尊敬する祖父の岸信介元首相にまつわる1940年代の悪評を払拭することだ。岸氏は戦時中の東条英機内閣の閣僚だったことから、戦犯の疑いをかけられた。だが米国は岸氏を無罪とし、岸氏は1957年に首相となった。

 日本が軍事的な自主性を取り戻すことへの安倍首相のこだわりは、一族が築いてきたレガシーをさらに確固たるものにしたいという思いから出ている。オリンピック誘致に積極的だったのは偶然ではない。祖父が1964年の東京オリンピックを誘致したからだ。その20年前には戦争で焼け野原だった日本はあの時、誇りにあふれていた。同じように魅力的なイベントである2020年のオリンピックを誘致できたことを、安倍氏は一族にとってかけがえのない実績だと考えている。日本の納税者にとって200億ドル(約2兆2700億円)をはるかに上回る負担になることは気にしないでおこう。

 オリンピック招致は景気浮揚策というよりも資金を投じる先を変えるだけだ。賃金を押し上げもせず、技術革新を促進させるわけでもなく、競争力も向上させないという点で、日銀の金融緩和策と同じだ。ヘッジファンドの運用担当者が日経平均の上昇で利益を得て、現状に満足している企業幹部が円相場の下落で福利厚生制度の恩恵を受けているだけだ。家計は数十年もの間、ほとんど所得が増えていない。多くの日本女性は正当な評価を得られず今も差別的環境に置かれている。ミレニアル世代(1980年代から2000年代前半生まれ)は、アベノミクス5年目の今、相変わらず年功序列の労働環境で息の詰まる思いをしている。

 安倍首相は、日本を高く評価してもらおうと、米国のナショナリストの頂点に立つトランプ氏に会うために2回訪米した。だが首相は、高齢化し勢いを失った日本経済を立て直すために国内でより多くの時間を使うべきだ。日本の評価を高めるためには、4%成長を持続的に達成し、米国、ドイツ、中国の製品への需要が増えることが何よりだ。日経平均の上昇率をダウ工業株30種平均の上昇率と肩を並べられる程度に保つには、硬直した経済の改革以上のものはない。年初来の上昇率でみると、ダウ平均は日経平均の4倍を超えている。

 安倍首相が1940年のことよりも2040年のことを考えるためにより多くの時間を費やせば、アベノミクスは日本を再び偉大にするかもしれない。

====〈了〉=========