【現代思想とジャーナリスト精神】

価値判断の基軸は自らが判断し思考し実践することの主体であるか否かであると考えております。

望月衣塑子氏と著作『新聞記者』(角川新書)【孫崎享のつぶやき 2017-10-15 08:48】を再構成しました。(構成文責 櫻井智志)

2017-10-15 18:23:21 | 政治・文化・社会評論
望月衣塑子氏と著作『新聞記者』(角川新書)

【孫崎享のつぶやき 2017-10-15 08:48】を再構成しました。(構成文責 櫻井智志)

【本の紹介、望月衣塑子著『新聞記者』(角川新書) 望月衣塑子記者は菅官房長官への質問で注目された記者。「私は特別なことはしていない。権力者が隠したいと思うことを明るみに出す。そのために、情熱をもって取材相手にあたる」】



A:(孫崎亨氏)
望月衣塑子記者は菅官房長官への質問で注目された記者。「私は特別なことはしていない。権力者が隠したいと思うことを明るみに出す。そのために、情熱をもって取材相手にあたる」


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B:(著作)
 これから社会部に所属する新聞記者として何をすべきなのか。

 質問をし、答えてもらうことがもちろん目的だが、今の菅官房長官では難しいと感じている。では質問をすることは意味がないことなのかといえば、私はそうは思っていない。

 在任期間が歴代最長を数える菅官房長官は、政権を揺るがしかねない閣僚のスキャンダルや失言を批判されても、「ご指摘にはまったく当たらない」などと一蹴。表情をほとんど変えることなく、鉄壁ともいえるガードをみせてきた。

 しかし約3か月にわたるやりとりのなかで、「安定の菅」と称賛されてきたときとは異なる、見ている人々に大きな違和感を与える別な顔を少しは導きだせたと思っているからだ。

 私は、「空気を読まない」とよくいわれるが、そのとおりだと思うし、むしろ読もうともしない。だからこそ、菅さんは可能ならば隠しておきたかった別の表情をのぞかせるようになったのではないか。

 その表情を見ていると、「加計ありきではない、という言い訳はさすがに苦しいのではないか」という思いがふくらむ。見ている人もそうだと思うがいかがだろう。

 その積み重ねが大きな声となり、政権を揺り動かすパワーの源になるーそう信じながら、首相官邸へ日参している。

 私は特別なことはしていない。権力者が隠したいと思うことを明るみに出す。そのために、情熱をもって取材相手にあたる。記者として持ち続けてきたテーマは変わらない。これからも、おかしいと感じたことに対して質問を繰り返し、相手にしつこいといわれ、嫌悪感を思えられても食い下がって、ジグゾーパズルのように一つずつ質問を埋めていきたい。

 中学時代のときから憧憬の思いを抱き続けてきた職業に幸いにも就くことができた。新聞記者、望月衣塑子のスタンスは、取材対象が何になろうと決して変わることはない。

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A:(孫崎亨氏)+ B:著作;


 この本はかっこいい望月衣塑子だけを書いてはいない。昔、日歯事件関連で東京新聞が他紙を大きくリードして報道をつづけていた。しかし、報道の内容をめぐり、公明党が名誉毀損容疑の告訴状を出し、一変する。記事を書いても会社は載せない。そのうち、東京特捜部が事情聴衆を始める。そして彼女も事情聴取される。検察はニュースソースを探ろうとする。検察は「嘘をつくとは、人間として恥ずかしくないか」「そんなことで両親に恥ずかしいと思わないか」と激しく責め立てる。この中、彼女は取材源についての黙秘を続ける。

 へとへとになって司法記者クラブの東京新聞のブースに帰る。キャップに「情報の出所をとにかく探ろうとしています。ヒントまでなら、ある程度言っちゃってもいいですかね」それまでのねぎらう雰囲気が一変、キャップがいきなり激怒した。
「言ってもいいぞ。その瞬間に、お前、筆を折る覚悟を固めろよ」
 この件で彼女は整理部に回される。現場に出たいという思いが強い。他社からこないかという誘いが来る。彼女は読売新聞の誘いがあって「読売新聞に移ろう」とほぼ決めた直後に父に会う。父も記者であった。
 そして父。

「お父さん、読売だけは嫌なんだよ。」

======<終わり>=============