【現代思想とジャーナリスト精神】

価値判断の基軸は自らが判断し思考し実践することの主体であるか否かであると考えております。

『報道特集2017/12/09~日本報道機関良心大賞~』

2017-12-09 19:24:46 | 政治・文化・社会評論


               櫻井 智志




皇太子雅子妃が誕生日を迎えられた。小和田家から皇室に嫁ぎ、我々にはわからないどれだけの労苦があったことだろう。最初の記者会見での雅子妃の発言は素晴らしかった。外交官の経験を生かして皇室外交に役に立てればとおっしゃった。「特権」と「人権」についてずっと考えさせられた。
A HAPPY BIRTH-DAY!!



アメリカヘイリー国連大使は、北朝鮮の事柄の時などは、理性的に見えた。しかし、イスラエル首都についてのトランプ決定問題では、上のいいなりのイエスマン、イエスレディに過ぎない事を画面から世界に伝わった。日本では、権力の言いなりにはならない官僚も出てきた。世界人権宣言実効化の分岐点だ。



北朝鮮が世界各国の経済制裁によって、漁業に出るしか生活の糧が得られない実態。出漁で命を失う男性たちと遺された未亡人村が増える。不法侵入してきた北朝鮮舟をすべて拿捕すべきという大学教授。北の民衆の生活苦。問題は多元的だ。何も言えないほど非人道的な現実。制裁は残酷な言語。金正恩委員長の政治的独裁を指摘することはたやすい。

けれど北朝鮮の民衆の不幸は、北朝鮮国民自身の事情に即したものではない。さらに、国の内外から援助されていない。日本人拉致の問題とは別に、多くの北朝鮮国民の窮状は、嗤ってすませることはできない。70年前の焼け跡闇市の日本国民と窮状は同じだ。





昔、小学校では身体検査に色覚検査は行われていた。しかし、今は必要があれば医療機関を勧めるにとどまっている。色覚検査は、実際の職業では極度の困難はない。今問題となっている対策としては、学校が家庭に医療機関で調べるようより推進すればよいのではないか。番組進行と同じとは。

たしか女性には色覚異常はなかったと思う。母親が子どもの見え方はわからないのは当然。色覚異常は疾病でも「異常」でもない。それはその子のもつ個性ととらえることが、子どもの心に灯火をともす。親が過大に異常視すまい。

山田記者がおっしゃったお話に感銘を受けた。あのような認識が、多くの学校・医療・行政関連者に広がっていけば、色覚多様性はこれからもっと人々の幸福とつらなっていくことと思う。有り難うございました。

ゾルゲ事件は東条英機が近衛内閣を打倒する謀略だった

2017-12-09 17:12:31 | 政治・文化・社会評論
   ゾルゲ事件は東条英機が近衛内閣を打倒する謀略だった

               櫻井 智志


 『日米開戦へのスパイ』を出版した孫崎亨氏に、週刊誌『アサヒ芸能』は、編集部の高山惠氏がインタビューして掲載した。高山氏は、こう述べる。「ゾルゲ事件が炙り出す日米開戦の裏側。その闇は現在につながります」孫崎氏は日米開戦で隠蔽された歴史を暴き出した。これが事実なら、日本の近代史が変わる衝撃の一冊です。

 私もこの本を購読した。本の正式タイトルは、『日米開戦へのスパイ[東条英機とゾルゲ事件]』である。孫崎氏は『日米開戦とゾルゲ』を書きたかった。書き始めると日露戦争からの政治の流れを執筆する必要を感じた。そうしてこの本は上梓された。
 ゾルゲや尾崎秀実はソ連共産党のスパイとして逮捕され、大日本帝国は死刑に処した。孫崎氏も彼らがスパイであったことは固定していない。しかし、ゾルゲも尾崎も政府が国民を驚愕させるような影響力はなかった。

 「ゾルゲはスパイだ」「ゾルゲに近い尾崎もスパイだ」「尾崎は近衛文麿内閣に親しかった」。この論理を巧妙に流布して東条英機は近衛文麿政権を打倒して自らが政権を握った。要諦は、ゾルゲ事件とは東条英機が近衛文麿を倒す策略であった。孫崎氏は述べる。江藤淳は『閉ざされた言語空間-占領軍の検閲と戦後日本』を書いた。「ゾルゲ事件」には「閉ざされた言語空間」がある。ゾルゲ事件を直接担当した井本臺吉、布施健は戦後は検事総長にまでなり、「ゾルゲ事件に疑問あり」の声は当然出てこない。


 40年前に外務省分析課にいた孫崎氏は、1972年に外務省が招いた当時世界の共産主義問題の専門的権威だったクラウス・メーネストに入省間もない孫崎氏が地方旅行に同行した。「実は、戦後米国は私のことを『真珠湾攻撃の父』と呼んだことがあるんです」衝撃を受けてそこから孫崎氏の追求が始まる。


 ゾルゲのイメージは出版界マスコミ界を通じて広がっていった。孫崎氏の著作は事実に基づいてひとつひとつ検証している。ゾルゲを担当した思想検事が検察中枢を押さえ、戦後の検察は断絶せず連続している。経緯は立ち読みでも書物にあたるのが適切。祥伝社から出版され、本体価格1700円。進歩派であっても、弾圧をおそれず真実を曲げずに言論を持続する。そのような貴重な抵抗の営みの成果である。2017年現在、いまの岩波書店や朝日新聞社は出版するまい。


 戦前に戸坂潤や三木清が投獄され、大政翼賛会に出版界も賛同していった時に、進歩的文化人も進歩的知識人も抵抗できないほど、特高-思想検察によって世間の空気は、日本軍国主義に批判や躊躇する者を根こそぎ抜き取っていった。戦争が始まる時、隠蔽や抑圧、謀略と弾圧が一方で燃えさかり、一方で軍国主義の熱狂に賛同する勢力も批判派から転向し自身の中ですり替えて合理化する元進歩派も、濁流の奔流に呑み込まれ,流されていく。